■連載/石黒謙吾のLOVEビール
〜語ってもウザくならない、スマートでコクのあるビールの話〜

 ビールが好き、もっと知りたい&楽しみたい。でも、マニア向けのものは結構、とは言っても当たり前の話は知ってる。そんな、粋でイケてるビールファンに贈る、なんでもありの読み物です。語ってもウザくならない、スマートでコクのあるビールの話をお楽しみください。

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「ビールはちびちび飲むもの!」

「日本酒やブランデーにちびちび飲酒を任せておけない」

 などと言っていると「アリエナイ!」とスマホやパソコンの画面にツッコんでるあなたの姿が目に浮かぶ。

 以前に書いた<ビールは常温でもおいしい> に続いて、ビールへの既成概念を少しずつ壊していきたいと思う。

 ビールは日本ではおそらく、戦後の高度経済成長下において、ビールメーカーの広告戦略などにより、万人に「グビグビ飲んでのどごしを楽しむ」と刷り込まれていったのだろう。「味はまあおいといて」と、苦味がちょっとあればいいぐらい的な「のどごしファースト」なビール民度の低い状況に陥っていた。

 そもそも、メジャー系はピルスナーばかりで、度数も5〜6%程度。ライトボディのビールばかりなのだから、そうなるものいたしかたなしだったとも言える。

 しかし、ビールの歴史としては、本場ヨーロッパでは、ゆっくり味わって飲むビールが主流だったわけですよ。ドイツなどの陶器製ジョッキにフタがついているところなどはその象徴だ。

 度数が高いこともあるが、いわゆる「コク」があって、フルボディに近づけば近づくほど、自然に、がぶがぶと飲めなくなるものだ。さらに、甘味、酸味、苦味など、味わいの特徴が強く出ていても同様に、ゆっくり飲むことになる。これは、食事と合わせても、ビールオンリーでいっても同じだと、体感として思う。

 僕は日々色々なビールを飲んではあるが、普通にビールファン以外の人と飲むときは、ごく普通にごく普通の瓶ビールをごくごく飲む。若い頃は夕方から朝方まで一晩がかりで大瓶1ケース(20本!)飲んだことも……。もはやそんなには飲めないものの、初速ではおそらく大人の平均より倍近いペースでなくなっていく。

 そんなガブみの典型な僕だけど、対照的にゆっくり舌で転がして(ブランデーかよ!)味わうビールも好きだ。特に、やはり我がテリトリーである毎度おなじみ、ベルギービールから、最近飲んだ秀逸なちびちび向け3銘柄をご紹介する。

1 アーレント

■グーデン アーレント(125周年記念ボトル)
(デ・ライク醸造所 度数9% 750mil)

 これは味もルックスも素晴らしかった。ご覧のように750mlの大瓶。ボトルデザインの高貴さたるや。醸造所創設125周年を記念して<125>と入っているのがかっこいい。しかもこれは、紙の印刷ラベルじゃなく、瓶に直接焼き付けプリントされている。鷹の紋章がまた高級感を醸し出す。

 限定品なので売り切れてしまったが、これが通常バージョンは常時流通している。

●アーレント・トリプル

この銘柄、アーレントはグラスのロゴがまたいいんです。紋章っぽく、ドイツカラー。

[インプレッション]

 最初の飲み口でとろりと感じ、甘味がまずドン! そして、ゴールデンエールに近い、かなり強めのアルコール感が。次に舌の横にまったり残る苦味が追いかけてくる。このディレイがたまらない。

 色は明るいゴールドでかなりの白濁。フルーティさもなかなかで、マスカットのようなザクロのようなフレーバーが。一口目はストロングに感じるが、だんだん旨味がしみてくる。これはぜひ、ぬるめを推奨する。徐々にやわらかさが顔を出してくる、ハイレベルな愉しみ方ができる。貴族のビールという印象だ。
★女性タレント見立ては、武井咲。

2 ストラッフェ2016

■ストラッフェ ヘンドリック・ワイルド2016
(ドゥ ハルヴ マーン醸造所 度数9% 330mil)

 これがまた、ちびちびビールの王様のよう。トリプルだと、そもそもそうなるものなのだが。ちなみに、ビール用語でよく出てくるこの<トリプル>とは以前にも書いたが、すごく簡単に言うと、<砂糖を3倍入れてる>ということで、度数は上がって、ボディは重くなる。

●ウィキペディア<トリペル>

[インプレッション]

 強いアルコール感が鼻に抜けてくるが、アプリコットのような甘くフルーティアロマを感じ、このギャップが面白い。<華やかな濃さ>という印象。ホッピーな苦味はねっとりと下に絡まるよう。また、甘味もしっかりあり、抽象的だけど<豪華な甘味>と感じた。すごい泡立ちと泡持ちで、まさにゆっくり飲むためにあるビールだ。スコッチウイスキーのストレートをなめる感じで、ゆっくりちびちび飲みたい。
★女性タレント見立ては、香里奈

3 I LIKE

■アイ ライク イット ビター ダブルIPA
ブラッセルズ・ビア・プロジェクト 度数8.1% 330mil)●IBU70 ●EBC22

●廃棄されるパンを使った“エコ”なベルギービール
●文化の街・金沢で「ベルギービールウィークエンド」開催中
●苦味「IBU」と色「EBC」が表示された極上のベルギービールはコレだ!

 と、連載で3度も登場している<ブラッセルズ・ビア・プロジェクト>からまたまた新作のステキなちびちびビールが。

 苦味打ち出しのIPAなのだからさもありなん。飲む前に表示を見たら ●IBU70、と! 苦党の僕としてこれは期待大と飲んでみた。

[インプレッション]

 一口含んで「こりゃ苦い!」と笑った。ちょっとした苦い薬ぐらいの、強烈かつ品のある苦味がまず。腹にまで届いてくる苦味がたまらない。そして香味がある。わらっぽいアロマも。味わいの方向としてはセゾンの方角というか、濃厚にして苦味強めたセゾンのようでもある。かなりの濁りがある、ブラウンゴールド。クリーミーな泡で、泡立ち・泡持ちともかなりいい。でも、飲み口の発泡感はない。これはもう、ちびちびでしょう! フォーマルなIPAという印象で、悪役の名優のようだ。空心菜炒めにはよく合った。ガーリック味にはナイスマッチングだ。
★女性タレント見立ては、戸田恵梨香

★今日のビール川柳★
ちびちびは ウイスキーじゃないよ ビールだよ

文・写真/石黒謙吾(いしぐろ・けんご)

著述家・編集者・分類王。日本ビアジャーナリスト協会・副会長、日本ベルギービールプロフェッショナル協会・理事。映画化されたベストセラー『盲導犬クイールの一生』はじめ、『2択思考』『図解でユカイ』『ダジャレヌーヴォー』『エア新書』『分類脳で地アタマが良くなる』『ベルギービール大全』など幅広いジャンルで著書多数。プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』、『負け美女』(犬山紙子)、『読む餃子』(パラダイス山元)など200冊以上。twitter: @ishiguro_kengo、facebook:石黒謙吾、blog:イシブログケンゴ

■連載/石黒謙吾のLOVEビール
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