連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第22週「常子、星野に夢を語る」第130話 9月1日(水)放送より。 
脚本:西田征史 演出:松園武大


いよいよ9月。最終回まであと1ヶ月。
今までないものとしていた女としての幸せを求めはじめた常子(高畑充希)と、彼女の事業を阻む者たちとが平行して描かれる130回。

重要キャラ「星野」の名まえが「銀河鉄道999」と関係あるに違いないと確信したので、それについてこの原稿の最後に書きたい。
だがその前に、130回のあらましを振り返ってみないとならない。

粗悪品をつくっていると「あなたの暮し」に誌面で指摘されたアカバネ電気の社長・赤羽根(古田新太)が動き出した。
そうとは知らない常子(高畑充希)は、星野(坂口健太郎)と子供たちとひととき食事を楽しむ。どうやら週一で会うようになったらしい。
129回で「もっと話をしたい」と言った星野は、その言葉どおり、常子と会話し、理解を深めようとする。
タイピストだった常子しか知らない星野は、じつはいまの常子の変化に驚いていたのだ。

お互いのことをわかりあって幸せなふたり。という雰囲気ではあるが、ここに、ふたつ、気になるフラグが存在する。

問題点その1 星野と常子の立ち位置の違い


星野は植物学者の夢をあきらめ、子どもたちのために生活を優先する生き方に変わった。
一方、常子はかかと妹のために生活を優先する生き方から、女性のための雑誌をつくる夢に生きるほうへ変わった。ふたりの人生は15年の時の間に入れ替わっている。
この差異が交錯したところが幸せポイントで、ここで止まればハッピーエンドになるのだろうが、そのままジャンクションのように交わってまた離れていってしまう危険性も波乱でいる。

問題点その2 花山(唐沢寿明)の存在。


星野の前で、花山がいかにすばらしいか語る常子。「会ってみたい」と言う星野だが、嫉妬や猜疑心には繋がらないのだろうか。
賢明な男だったら、愛する女の夢のために、自分と花山、どっちが役に立つか考えたとき、常子が家庭に入るようなことを選択するだろうか。
前述のとおり、15年前の星野は、自分の夢を支える存在として常子が必要だったのだが、いまは逆。はたして常子の夢を僕が支える、と言えるだろうか。

 いろんな人たちの人生が交錯する場所


さて、ある雨の日。赤羽根の部下・村山健太郎(野間口徹)と酒井秀樹(矢野聖人)にアポなしで常子の会社に突撃、会社が潰れたら子どもを養えないと涙ながらに訴える作戦に出る。
が、残念ながら、花山に撃沈される。

野間口と矢野、雑魚キャラを演じるのがほんとーに巧いふたり(俳優が雑魚という意味ではない)と雨の中、すれ違った謎の男(石丸幹二/オープニングで役名は国実恒一とあった)が何者なのか。含みある登場の仕方がやっぱり「妖怪人間ベム」みたい。なんだか柄本明が出てきそうな雰囲気だ。

薄暗がりなので、花山の仕事仲間・長澤(飯田基祐)がまた出て来たかと思った。石丸も飯田も昨今、おじさま俳優としてひっぱりだこだ。長澤さん(飯田)は目下「部長吉良奈津子」(フジテレビ木10時)に出演中と思ったらそれも石丸幹二だった。

目下、いろいろな考え方の人達がそれぞれの道からちょうど交差点に集まってきたところという感じ。
常子と星野の交錯を中心に、たくさんの人たちの思いがどんなふうに重なり、ぶつかりあっていくのか・・・。

と、ここまで書いて、は! と気づいた。交差点、交差点・・・そうだ、松本零士の「銀河鉄道999」に「トレーダー分岐点」というエピソードがあった。
トレーダー分岐点は、いわゆるたくさんの列車が、たくさんの旅人が交錯する場所である。
機械のカラダを手に入れるために、メーテルという美女と共に宇宙を旅している鉄郎少年は、このトレーダー分岐点にやって来る。そこで、生きるためにせいいっぱいで恋人ができなかった女性と出会う。

前々から、星野と鉄郎(向井理)の名まえを足すと999の星野鉄郎になることには何か意味があるのかなあ、とずーっと疑問に思っていたのだが、西田征史は「トレーダー分岐点」の女性と常子を重ねているのではないか。そして、「とと姉ちゃん」はいろんな人たちが常子という分岐点を通り過ぎていくお話なのではないか。

常子のモチーフになっている女性が、たとえ、ものすごくサバサバした人だったり、仕事が大好きだったりしても、この時代、結婚しない女というのは、いま以上に生き辛かっただろう。結婚に限らず、とかく当然と思われていることをしないことには面倒がつきまとう。
西田征史はとびきり優しい人で、ひとと違った生き方をする常子の厄介さをあえて描かないようにしているのかもしれない。彼女の苦悩をいろいろ想像することも、わかっていても目をつぶることも、ひたすら一瞬の恋を楽しむことも、皆さんどうぞご自由にということなのかも。

「銀河鉄道999」の「トレーダー分岐点」では、鉄郎を無理矢理実家につれていく女性のことを「ただ必死に働いて生きるのに精いっぱいで恋人もできず、年をとってしまっただけ・・・・・・」とメーテルが言うと、鉄郎はその女の手を「ゴツゴツでガサガサだったけど どこか、ぼくの母さんの手と感じが似ていたよ・・・・・・あったかい手だった・・・・・・」と言うのだ。貧しい世界で必死で生きている人間への深い眼差しのあるエピソードだ。

131回も楽しみです。
(木俣冬)