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「お客のマナーが悪く困ってます」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、メンズエステ店の経営者から悩みの投稿が寄せられた。

この店では、紙パンツを履いた客にオイルマッサージを施している。風俗店ではなく、局部など際どい部分には触れていない。にもかかわらず、男性客が女性セラピストに無理やり触ったり、性行為を持ちかけたりと、迷惑行為が続いているようだ。

裁判も検討しているようで、この経営者は「お客に無断で施術中を録音して、裁判の際に証拠として出してもいいでしょうか」と尋ねている。客に断りもなく、録音することはプライバシー的に問題ないのだろうか。大橋賢也弁護士に聞いた。

●無断録音を認めた最高裁判決がある

ーー裁判で損害賠償を請求できるのでしょうか?

このマッサージ店は風俗店ではないとのことなので、無理やりセラピストを触ると、部位によっては強制わいせつ罪が成立します。また、性行為の強要は強姦罪が成立します。

つまり、客の行為が違法行為として不法行為が成立する場合は、損害賠償請求の対象になります。

ーー客に無断で録音することはプライバシー侵害にならない?

無断録音については、参考になる最高裁判例があります。この裁判では、詐欺事件の証拠として提出された録音テープが、相手方に無断で録音されたことから、証拠能力の有無が争点になっていました。最高裁は以下のように述べています。

「詐欺の被害を受けたと考えた者が、相手方の説明内容に不審を抱き、後日の証拠とするため、相手方との会話を録音することは、たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであっても、違法ではなく、その録音テープの証拠能力は否定されない」(最決平12.7.12)

本件も、強制わいせつ罪や強姦罪という犯罪行為が行われた際、後日の証拠とするために録音するわけですから、プライバシー権の侵害にはならず、録音テープの証拠能力も認められます。

また、民事事件では、東京高裁が秘密録音の証拠能力について、次のような判決を出しています。

「その証拠が、著しく反社会的な手段を用いて、人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたものであるときは、それ自体違法の評価を受け、その証拠能力を否定されてもやむを得ない」(東高昭52.7.15)。

したがって、録音の方法が著しく反社会的でなければ、録音テープの証拠能力は認められることになります。今回のケースでは、よほどのことがない限り、問題ないと考えられます。

ーーもし録音が外部に流出してしまったら?

プライバシー権の侵害になり得ます。ですから、録音媒体の管理には十分注意しなくてはなりません。録音はしたけれども、特に問題がなかったというような場合は、すぐに消去する方が良いでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
大橋 賢也(おおはし・けんや)弁護士
中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。
一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン。
事務所名:川崎エスト法律事務所
事務所URL:http://kawasakiest.com/