大手チェーン店の魚はなぜマズい?焼かない“焼き魚”の謎

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 今年8月、大手焼き鳥チェーンの「鳥貴族」南柏店で、チューハイに焼酎ではなく手の消毒などに使うアルコール製剤を間違えて入れて、151杯提供していたことが明らかにされた。また同月、「ピザハット」深川店で、なんと店長ら4人が店を襲い、副店長を殴って売上金を盗んだ疑いで逮捕された。

 レアな事件かもしれないが、ここ何年か、外食チェーンでいろいろな問題ーー食品偽装問題からブラックバイト問題までーーが起きているように見える。いったいなぜなのか? 食品安全教育研究所代表・河岸宏和氏に話を聞いた。

◆安い給料で真空パックを茹でてくれる人が求められる

 河岸氏は、「利益優先で人材を育成しないビジネスモデルが限界を迎えている」と指摘する。

「例えば焼き鮭ひとつとっても、今は職人が焼いているチェーン店なんてほとんどありません。火が通った状態でパックされたものを湯煎するだけ。企業にとっては『食の感動』よりも『いくら儲けるか』が重要なのです。
 つまり、鮭を上手に焼ける人よりも、安い給料で真空パックを茹でてくれる人こそが求められる。それが今の外食産業の本質なんです」

「合理化」という名目のもと、単純化されていく仕事。でも、一生真空パックを茹でることで満足する人などいるはずもない。

「成長を感じられない職場に人は残りません。大根の桂剥きを教えてもらい、苦労してできるようになった。この実感の積み重ねが『職人=プロ』をつくり上げていくのです。真空パックを茹でる作業をいくら繰り返したところで、手応えも成長もなければ、続けるモチベーションも湧かず、適当な仕事になるのは仕方がないことです」

◆技術がないから、刺し身から水が出て…

 現場がやる気のない素人だらけだったら、形だけ職人の真似事をしてみたところでうまくいくはずもない。

「ある居酒屋チェーンが豆腐を自家製にしたまでは良かったのですが、提供前に小分けにしているため、水分が出てまるでおいしくない。はたまた高級魚のフェアを売りにしても、調理技術がないものだから、刺し身から水が出て食べられた代物じゃない。

 本部の試食では、すくいたて・切りたてなのでしょうが、現場にプロがいない限り、行き届いた品質管理は難しいのです」

 魅力を失った業界では、ふらふらと店を渡り歩く「半人前」の料理人はいても、しっかりとした技術を持つ“本物のプロ”は絶滅危惧種になっているという。

「技術とは、時間とコストをかけて受け継いでいくもの。今後、人材を使い潰す利益至上主義のチェーン店は衰退の一途でしょう。反対に、地域密着で地道に営業している個人店のほうが信頼できる。ただ、個人店は二極化が激しく、ハズレを引くととんでもない店があるので、利用者の目利きが試されるでしょうね」

 「まっとうな店を見分ける客」が増えない限り、個人店でもチェーン店でも、まっとうな店は増えないのかもしれない。

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