■連載/阿部純子のトレンド探検隊

◆今年20周年を迎える24時間365日生放送の「ショップチャンネル」

 1996年に日本で初めて生放送を取り入れた「ショップチャンネル」が今年で20周年を迎える。24時間365日生放送を行っており、ファッション、ジュエリー、コスメ、家庭用品、家電、健康グッズなど毎週番組で紹介している商品数は約700アイテム。1商品を30分から1時間の番組で紹介する。視聴可能世帯数は2016年3月末現在で、全国2914万世帯。ケーブルテレビ、CS放送、BS放送、地上デジタル放送、IPTV(ブロードバンドテレビ)など幅広いメディアで視聴ができる。

 ショップチャンネルは、商品選定、番組制作、注文、発送、到着後の問い合わせまで一貫して自社でオペレーション。また、番組には台本がなくキャストとゲストがアドリブで進行していく。これらの特性を活かし、スタジオ、サブコントロールルームといった制作現場と、注文や問い合わせを受けるコールセンターを連動させて、視聴者が知りたい商品の説明や、注文や在庫状況など、視聴者と番組が一体となってリアルタイムで進行するライブ感が大きな特徴となっている。

 同社の2015年度の売上実績は1395億円で19期連続増収。単純計算で1日あたり3.8億円以上、1分あたり25万円の売上になっている。購入者の9割が女性で、メインの年齢は40〜60代。ちなみに1日の売上数量で一番多かったのは2013年10月4日に記録した「カシミアマフラー」で約6万3000本を売り上げた。1商品の1日の販売金額では直近の2016年4月21日に記録した「ダイソン掃除機」で約7.9億円。1日当たりの総売上の1位は、2015年11月1日「アニバーサリー」と呼ばれる特番が組まれた創業日に約14億円を記録した。

◆24時間稼働を続ける生放送中のスタジオに潜入

 24時間生放送の現場はどのようになっているのだろうか。生放送中のスタジオを見学できる機会を得た。スタジオはスタジオビル内の2室を含め計3スタジオを擁している。シャンプーとリンスの番組を生放送しているBスタを、制作に携わっているプロデューサーの真島 悟さんの案内で見学させていただいた。

24時間365日生放送のテレビショッピング「ショップチャンネル」の驚きの舞台裏に密着

 1時間の番組で(30分もある)ひとつの商品を紹介するが、ファッション系だと1時間5商品、ジュエリーだと10商品と、カテゴリーによって商品数が違ってくる。スタジオの外にある前室の一角では、キャストとゲストが次の番組の打ち合わせをしている。周りには所狭しと商品が置かれていた。

「24時間分の商品を並べて時間ごとに入れ替えていく。番組で話す内容は台本がないので、キャストとゲストが事前に勉強してきたことをオンエア1時間前に打ち合わせを行い、そちらの内容で番組を進行する。すべてアドリブで話しているので打ち合わせは非常に重要なミーティングとなる」(真島さん)

 基本的には1日にひとつのスタジオで回していく。生放送中の番組セットの隣や反対側では、別の番組の準備をしていた。時間が来ると徐々にカメラを放送するセットに移動。カメラはサブコントロールルームからの遠隔操作で行っており、カメラの後ろには誰もいない。4つのチームが5時間、1つのチームが4時間を担当して24時間スタジオを回し続けている。1つのチームは9〜10人で構成され、1日50人弱で番組を制作している。

24時間365日生放送のテレビショッピング「ショップチャンネル」の驚きの舞台裏に密着

「ショップチャンネルは少人数で行っていて、スタジオの中は5人、サブルームも5人ほど。スタジオ内では、チーフコーディネーターがキャストとゲストのケア、フロアディレクターがカメラ周りのケアやカンペを書く。ADは1〜2人で次のショーの準備をしたり、スタイリストは裏でモデルのケアをするので、カメラ周りは大体二人しかいない。カメラは5台あり、実際にテレビに映るのはスイッチャーが選ぶ1台の映像だが、放送中は5台すべてが稼働している」(真島さん)

24時間365日生放送のテレビショッピング「ショップチャンネル」の驚きの舞台裏に密着

 3つあるサブコントロールルームもスタジオ同様、5人ほどの小人数で行っているため、1人で複数の役割を担っている。リモートコントロールをするカメラマンは、5台あるカメラを1人で操作し、トークを聞きながら必要な絵を順番に動かしていく。

 CGは商品によってグラフィックを入れたりする作業を行う。ジュエリーやファッションで複数の商品を扱うときは、商品が変わるたびにそれに合わせてグラフィックを変えていく。ビフォーアフターや産地、メーカーの写真など「スチール」と呼ばれる商品の補助素材をスタジオのトークに合わせて出し入れする。演者の音声をコントロールする音声はタイムキーパーの役目も行う。

 テクニカルディレクターはスイッチャーの役割。トークを聞きながら5つのカメラの中から、一番適した絵を選ぶ。場合によっては5つのカメラではなく写真やVTRを選ぶ場合もある。生放送なので一度スイッチに失敗すると放送事故につながるため、スイッチャーは常に神経を張り巡らせている必要があるという。

24時間365日生放送のテレビショッピング「ショップチャンネル」の驚きの舞台裏に密着

 さらにショップチャンネルならではのポジションが「セールスプロデューサー」。案内役の真島さんも以前はセールスプロデューサーを担当していた。

「番組を見ながらお客様の気分になって、これが知りたい、どういう説明が足りてない、そういったことを客観的に察してインカムでスタジオに指示をする役割。セールスプロデューサーは十数人いるが、ほぼ全員、前職が接客業で対面販売をしていた経験を持っている。私も13年セールスプロデューサーをしていたが、以前は販売の仕事をしていた。お客様と接してお客様がどういった情報を必要としているのか、それを感じることが必要となる。

 セールスプロデューサーの端末から、現在のコール数の状況、在庫数などを細かく確認できる。トークが長引くと間延びして視聴者がチャンネルを変えてしまうので、そのあたりのさじ加減をセールスプロデューサーが感じながら、そろそろモニターを閉めようとか、モニターの髪のキラキラ感を見てコール数が上がっているなら、もう少し話を引っ張ろうといった指示を出している。

24時間365日生放送のテレビショッピング「ショップチャンネル」の驚きの舞台裏に密着

 放送中でもコールセンターから、お客様からの問い合わせが入るようになっている。質感がわからない、香りはどうなのかなど、番組中で情報が洩れている場合はお客様から指摘が来るので、すぐにスタジオにつなげてキャストに指示を出す。多い場合だとコールセンターから3〜5回かかってくることも。“生電話”と呼んでいる、コールセンターにかかってきたお客様の電話を直接番組に出すこともある。お客様も参加しながら番組が進行していくのが大きな特徴といえる。同じ商品を何度か取り上げることがあるが、毎回出演者も違うし、放送時間も昼と夜中ではお客様の反応が全然違うので、同じショーは二度とない。そういったところはやっていて楽しさを感じる」(真島さん)

 実際に番組を見ているとわかるが、キャストはオーダー数が○○○を超えたとか、電話が込み合っているのでインターネットサイトを利用すると便利といった提案や誘導も行なっている。セールスプロデューサー、コールセンターがスタジオと密に連携しているため、リアルタイムの情報が即座に視聴者に届けられる。その反面、生放送ゆえに怖いのがいわゆる“放送事故”だ。

24時間365日生放送のテレビショッピング「ショップチャンネル」の驚きの舞台裏に密着

「キャストと違い、ゲストはしゃべりのプロではないので、場合によっては他社の商品名を出して否定的なことを言ってしまうこともある。セールスと同時にコンプライアンスも重視しなくてはいけないので、これは放送事故につながる事案となる。こうしたケースは1年に1〜2度あるかないかの頻度だが、セールスプロデューサーの方でミュートという音を消すという作業をする。電波は衛星から戻ってくるまでに2秒間のタイムラグあるが、それとは別に5秒間タイムラグを取っており、5秒前の音を消すことは可能なので、音を消すかどうかは5秒で判断しミュートの作業をする」(真島さん)

◆1日平均7万件超の電話をさばく「コールセンター」

 1日平均約7万1000コールをさばくコールセンターは東京250名と大阪110名で運営されており、在宅で注文を取るホームエージェントも50名ほど在籍している。1600回線同時に着信でき、IVRという自動音声で注文を取るシステムは1056回線ある。1日の過去最大コール数は2013年の11月1日に記録した「アニバーサリーデー」の22万コール。

 その日一番のおすすめの商品が登場する、毎日0時スタートの「ショップスタースクエア」が放送中の0〜1時はコールが集中する時間。また、23〜24時もキャンセルとキャンセルの商品を狙う人がかけるコールで集中する時間帯だという。

24時間365日生放送のテレビショッピング「ショップチャンネル」の驚きの舞台裏に密着

 コースセンター内はNTTの基地局と同等レベルのサーバールームがあり、受注オペレーターのデスクが並ぶ中央に円形になった「コマンドセンター」がある。文字通り、すべての端末のやり取りを把握して指示を与える司令塔で、売上の状況やコール数はもちろん、個々のオペレーターが1コールにどの程度の時間を費やしているかも把握できる。案内に問題がある場合や、クレーム処理が発生した場合などは、スーパーバイザーと呼ばれるエキスパートが対応する。商品が多岐にわたるので問い合わせも多く、オペレーターはモニターに表示される商品情報を見ながら説明を行なうが、幅広い商品知識を把握することも必要になってくる。

24時間365日生放送のテレビショッピング「ショップチャンネル」の驚きの舞台裏に密着

 人気商品だと受信するまでに5分待ち、10分待ちもあるので、待ち時間を個人ごとに知らせるアナウンスを流している。待っている途中で2と#を押すと自動音声の受付に切り替わり、回線が混んでいると判断したら、在庫だけ先に抑えて注文を完了させる上手な使い方をする常連客もいるそうだ。「ネックレスの留め金部分を見たい」といった、複数の同様な問い合わせが来た場合は、通話の回転を速めるために、スタジオでキャストに説明させるように指示することもあり、番組とコールセンターが一体となって運営している。

24時間365日生放送のテレビショッピング「ショップチャンネル」の驚きの舞台裏に密着

【AJの読み】ネットショッピングが苦手な中高年女性に人気のテレビショッピング

 タレントがたくさん登場し大げさに煽る他のテレビショッピングとは異なり、ショップチャンネルは商品そのものにフォーカスした番組作りを行なっている。ひと昔前のテレビショッピングは中高年女性がつい衝動買いをしてしまうようなイメージだったが、ショップチャンネルのユーザーは商品のスペックを見極め、必要がないと判断したらキャンセルも厭わない賢い使い方をしているようだ。手軽な通販デバイスとして、ネットショッピングが苦手な中高年女性がショップチャンネルを活用している。

「カタログ通販は10年間で約12%減少している中、国内のテレビ通販は10年間で約1.7倍の伸長率で、現在は約5200億円の市場。弊社とQVCさんで約45%を占めている。基本的に右肩上がりだが、この数年は若干成長が鈍化している。視聴可能世帯数が飽和状態の中で、伸張しているeコマースにどのような差別化ができるかというのが今後の課題」(執行役員 メディア&マーケティング本部長 大勝 裕子さん)

 自分の買い物のスタイルで考えると、テレビショッピングは言葉が悪いが、見たい番組がない時の暇つぶしとして見るというスタンスだ。今では食品も含めてネットでの購入が6割を占めるが、テレビショッピングだと大きさやデザイン、形がよりわかりやすく、性能を詳しく説明してくれるため、テレビショッピングで見た商品をチェックすることも多い。ただ、電話をかけてオペレーターと話すという行為が面倒で、ついネットで買ってしまう。大勝さんが指摘していたように、こうしたネットショップユーザーをどのように引き込むかが今後の課題だろう。

文/阿部純子

■連載/阿部純子のトレンド探検隊