香川、本田、岡崎が直面した“アジアの壁” 危機迫る日本代表、停滞感打破のカギとは

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 清武弘嗣(セビージャ)のFKをファーサイドでフリーになった本田圭佑(ミラン)が豪快に頭で合わせた時、日本はワールドカップ6大会連続へ大きな一歩を踏み出したと思われた。が、カタール人主審の不可解判定も災いし、日本は2015年アジアカップ(オーストラリア)準々決勝で苦杯を喫したUAE(アラブ首長国連邦)に直接FKとPKで2点を奪われるまさかの展開を余儀なくされた。

「向こうがリードをしてからは守備の徹底ぶりが統一されているなと思いました。前線の選手もサボることなく守備をしっかりしていた。そういうところは本当に準備していたんだなと感じました」と守護神・西川周作(浦和レッズ)も相手の手堅い守りに舌を巻いたが、本田、岡崎慎司(レスター)、香川真司(ドルトムント)の3枚看板も、改めて「アジアの壁」に直面することになった。

 特に見る者を失望させたのが、低調なパフォーマンスの目立った香川。8月27日に行われた今シーズンのブンデスリーガ開幕戦・マインツ戦直後に帰国し、今回は4日の準備期間があったにもかかわらず、ボールに触る回数が少なく、攻めの起点になり切れていなかった。本田のヘッドを相手GKが弾いたこぼれ球に反応した前半26分の決定機もモノにできない。代表トップ下に陣取る香川の一挙手一投足をUAEが徹底分析し、しっかりと対処してきたことも大きかったが、この日の彼は「代表では輝きを失いがちな背番号10」に戻ってしまった。

「両サイドバックも高い位置を取って、キヨも圭佑君も中に入って来てたんで、僕自身はもう少しうまくポジションを修正し、動きの変化を加えていかなきゃいけなかったのかなと。そこはホントに課題。決定的なチャンスを含めてなかなか作れていなかったんで、チームで連動してやっていく必要があると思います」と本人も反省しきりだった。

 トップ下の香川同様、1トップの岡崎も精彩を欠いた。代表通算50ゴール達成のかかる大一番でありながら、相手の激しいマークに遭って得意のヘディングでも勝てず、シュートはわずか2本にとどまった。69分の本田のクロスに合わせた場面はクロスバーを直撃する不運もあったが、彼本来の得点への貪欲さが嗅覚が影を潜めたのは事実である。

「自分はクラブで点を取る役をやらしてもらってるわけじゃない分、勝負することが感覚的に足りない。今日も落ち着いたら外せるところを外せなかったり、前で張れなかったり。頭ではアイディア浮かんでるけど、感覚的には追いついていない」と岡崎はレスターと代表での役割の違いがブレーキの一因になったことを打ち明ける。

 そのうえで「日本は結局、アジアでは引いて守られる。今は背がデカいFWがいるわけじゃないし、簡単にクロス上げても難しい。コンビネーションを突き詰めていくとか、どこかでミドルを入れるとか工夫が必要だし、精度を上げていくしかない。これで自分たちが揺らぐんだったら予選突破できない。やり切らなきゃいけない」と語気を強めていた。

 彼ら2人と比べると、先制点を奪った本田はW杯予選7試合連続ゴールと記録を伸ばした。が、この1点目の後はやはりUAEの粘り強い守りに苦しんだ。彼は前後半合計で6本のシュートを打ったが、後半76分の遠目からのミドルに象徴されるとおり、無理な態勢から強引にフィニッシュを狙いに行くような形が多く、試合をひっくり返すほどのパワーは出せなかった。常日頃から強気の姿勢を前面に押し出す本田にしては珍しく、試合後には「今日は力不足。UAEをほめたい」とコメントしており、相手のレベルアップを認めるしかなかった。

 このように「三大得点源」が封じられると、日本は攻め手が見つからなくなってしまう。それが現実なのだ。彼ら3人は3度目の最終予選に挑んでおり、どんな特徴の選手なのかアジアどころか世界中に知れ渡っている。岡崎が2枚のDFに挟み撃ちにされたように、これからも徹底したマークに遭うのは間違いない。それを本人たちも認識したうえで壁を超える努力をする必要があるが、それ以外の点取屋が出現しない限り、UAE戦と同じ過ちを犯すことも十分あり得るのだ。

 左サイドで先発した清武、途中出場の浅野らにはそれぞれ決定機があった。浅野のゴールはラインを割っていながら誤審で不認定となる不運もあったが、清武の得点機は普通に決めるべき場面だった。「あれを決めないとこういう結果になっちゃうと思う」と本人も肩を落としたが、これを糧に得点力を向上させなければ意味がない。後半からピッチに立った宇佐美貴史(アウグスブルク)、原口元気(ヘルタ・ベルリン)にしてもそう。若手攻撃陣が迫力をもたらして、初めてこの停滞感を打破できるのだ。

 UAEの方は司令塔のオマル・アブドゥルラフマンが24歳、2トップのアリ・マブフートとアハメド・ハリルが25歳とまさに脂の乗った時期に来ている。彼らが日本と互角の戦いを演じられたたのも、20代のタレントが急成長しているから。この相手に初戦黒星を喫した事実を全員が脳裏に刻み込み、もっと危機感を持って今後の戦いに挑むべきだ。

文=元川悦子