認知症予防に脳トレを実践している方は多いだろう。さらに有酸素運動をプラスすると脳機能全体の健康に役立つようだ。米テキサス大学の研究から。

 調査は脳機能を向上させるトレーニングの探索を目的に行われた。対象は56〜75歳の男女36人。事前に認知機能検査やうつ病検査、身体検査を受け、健康で認知機能障害を持たないことが確認された。

 参加者は認知機能トレーニング(脳トレ)群と有酸素運動群に分かれ、それぞれ1週間あたり3時間、12週間にわたり、割り当てられたトレーニングを実践。試験開始前、試験中、そして試験後に、ウエクスラー成人知能検査など複数の認知機能検査と、脳血流から脳の活動領域を特定するMRI検査を受けている。

 トレーニング内容だが、脳トレはグループワークと対面セッション、ホームワークからなる本格的なもの。戦略的注意力、統合的な理由付け、そして思い込みを排し革新的な解決法をさぐる問題解決能力など脳の高次機能を強化するプログラムが採用された。

 一方、有酸素運動は最大心拍数(個人にとって一番早い心拍数のこと)の50〜75%をターゲットに、週3回、1回あたり60分間(5分ウオーミングアップ、50分運動、5分クールダウン)、エルゴメーターやトレッドミルで運動を行った。個人差はあるが、脂肪燃焼が期待できる軽いジョギング程度の強度である。

 さて、脳トレ群の脳機能はプログラムが進むにつれて順当に向上。それ自体は予想の範囲だったが、興味深いのは有酸素運動群より脳血流量が約8%、増加した点だ。

 研究者は「脳血流量は加齢とともに低下するため、この結果は数十年分の若返りにも相当する」としている。

 一方、有酸素運動群は脳トレ群より記憶力を司る海馬領域の血流量が増加。長期・短期記憶力のパフォーマンスが増大した。認知症予防に運動が欠かせないことを、改めて裏付けたといえそうだ。

 どうやら脳トレと有酸素運動はそれぞれ脳の別の領域に効くらしい。座ってじっくり脳トレ、もいいが身体を動かすことを忘れずに。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)