導入から半年が経過しても思うような成果を出せていない「マイナス金利」。私たち庶民にとってはむしろデメリットの方が大きいように感じてしまいます。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』ではマイナス金利が生んだ数々のデメリットを解説。さらに一部富裕層の不動産投資により、日本にまた思わぬ「バブル」が訪れる可能性についても指摘しています。

ひどい!こんなにあるマイナス金利の弊害

今日は導入から半年「マイナス金利」を検証したい。日銀や政府は経済理論からどうやったら景気がよくなるのかということを考えているが、それと同時に「景気は気から」。企業や大衆の心理をよくみないと間違いが生じるように思う。どうもここのところ日銀は理論だけで動いていて、間違いが多いように感じられる。

マイナス金利をおさらい

この「マイナス金利」を改めておさらいすると、これまで一般の銀行は余ったおカネを日銀に預け、若干ではあるが金利がついていた。しかしながら「マイナス金利」導入後は、日銀におカネを預けることによって金利はマイナスとなり、逆に預けた銀行側が日銀におカネを払わなくてはならないという異常事態となっている。

日銀はこの政策によって、銀行は日銀に預けずそれを企業等に貸出したり、個人ももっとおカネを借りて大きな買い物をするようになり消費が活発化するようになると読んでいた。しかしながら、はっきり言うとその通りにはなっていない。確かに銀行の貸出し金利は下がったが、消費は向上していない。

個人消費も低水準が続く

先日発表になったGDPは2四半期連続の減少、個人消費も低水準が続いている。1世帯(2人以上)当たりの消費支出も5ヵ月連続で減少しており、日銀の思惑通りに進んでいない。ここ数日円安が進みだしたが、これはアメリカの利上げ観測を受けドルが買われているだけであり、日銀が思い描いたような円安にはなっていない。

マイナス金利を発表した頃(1月29日に発表)は1ドル118円台だったが、現在は102円前後と16円も円高になっている。日本トップの輸出企業では、1円の円高で営業利益が「400億円」も減少するといわれている。16円の円高の場合は「6,400億円」もの損失が出たことになる。このことからもこの円安論理はうまくいっていないといえる。

超長期の社債発行ブーム

企業も損失を出すばかりではいけない為、新たな動きとして借り換えを行ない始めた。償還までの期間が10年以上にわたる超長期の社債の発行が相次いでいる。これまでは、長期の事業資金を要する電力や鉄道といった企業が社債を発行していたが、マイナス金利導入後は不動産や製薬など幅広い業種にわたる会社の社債の発行が拡大している。今年上半期(1〜6月)の社債発行額は前年同期比で7%の増加となっている。

例えば、JR東海では20年物の普通社債100億円を新たに発行したことで、利払い金額が以前のものと比較すると15億円も減少している。これまで社債は事業資金として活用するための債務であった。しかしながら、今回の動きは金利の低い社債を発行し、これまで借りていた高い金利の債務を低い金利の債務に借り換えしているだけで、新たな設備投資に充当しているのではない。この現象からも日銀の想定とは違うといえる。

賃貸物件急増による影響も

さらに最近、投機を目的とした賃貸物件への不動産投資も増加している。低金利でお金を借り、賃貸物件に投資。東京五輪開催の影響による物件価格の上昇を待ち、売り抜けようという動きが徐々に増加してきている。8月30日の日経新聞には「貸家に投資マネーが流出している」という記事も出ており、このことからも本当の意味での企業投資の増加につながっていない。

これは、相続税の非課税枠の減税を利用した投機マネーで賃貸物件に富裕層が投資しはじめたことによるものだ。おカネがうごくというのはいいことなのかもしれないが、投機できる人だけが儲かり、格差が拡大する。さらに、バブルのような動きが出てくる可能性もある。さらに、投資が増加することにより空室率の増加という問題も発生する。実際に、賃貸物件の増加により家賃が下落傾向にあるという側面も出始めている。

保険料への波及

その他にも弊害があり、国債の利回り低下により企業の退職金や年金の運用もさらに厳しくなってくる。かんぽ生命では14%も保険料が引き上げされた商品があったり、日本生命の一時払いの終身保険を50歳の男性が500万円の保険金を受け取れる契約では、以前に比べ31万円も保険料が高くなった。

8月29日の東京新聞には「瀬戸際の黒田緩和」という記事が出ており、「日銀は追い込まれているのではないか、9月に金融緩和の総括をすると言っているが本当に総括をするのか」と書かれている。さらに本日付(8月30日)の日経新聞では「黒田総裁がひとり総括」と報じられ、「日銀内部の中でも本当にこれでよいのか副作用が大きいのではないか。」という問題が出てきているが、黒田総裁はさらに緩和を続けマイナス金利をさらに引き下げる可能性も示唆している。

日銀は9月に金融政策決定会合を実施する予定で、これから先をどう見通しているのかということに注目される。日銀内ではもう限界だという意見もある中、黒田総裁はさらに深掘りしようとしているようなので、この二つの意見が今後どのような動きをみせるかということにも注目が集まる。今後、更なるマイナス金利を進めた場合、銀行収益への影響が懸念される。そういう意味からも本当の総括をきちんとしたほうがよいと思われる。

心理学の重要性

今後、マイナス金利の導入は経済理論から考えるのではなく、国民や企業がどういう心理状況に陥るのかというところも含めた政策をやって欲しい。日銀は心理学を少し学んだ方がよいのではないかということも言いたい。

国の政策と共に進めなくてはならない状況下で、黒田総裁は本当に厳しい舵取りを迫られているともいえる。

(TBSラジオ「日本全国8時です」8月30日音源の要約です)

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『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』

ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。

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出典元:まぐまぐニュース!