人生の最期までをより良いものとするために事前準備をすることは“終活”といわれ、継続して注目を集めている。一方、亡くなるとその後、遺産相続でトラブルになるケースが後を絶たないが、配偶者や子どもなどの相続人に遺産を相続させる以外にも、最近では、遺言に基づいて特定の個人や団体に譲り渡すことができる遺贈が注目を集めている。東京都港区の六本木ヒルズの一室が大分県に遺贈されたことが、大きなニュースになったことをご存じの方も多いことだろう。国境なき医師団日本は全国の15歳〜69歳の男女を対象に、「終活と遺贈に関する意識調査2016」をインターネットリサーチし、1000名の有効サンプルの集計結果を公開した。

終活と遺贈に関する意識調査2016

■9割が「エンディングノートの準備は大事」「遺言書の作成は大事」と回答

終活に関する意識として、「エンディングノートを作成すること」に対する気持ちを聞いたところ、「準備をしておくことは大事だと感じるし、自分も準備が必要だと思う(または、準備を済ませた)」が28.6%、「準備をしておくことは大事だと感じるが、自分には(まだ)必要がないと思う」が60.9%となり、合計した89.5%が“準備は大事”だと感じていることがわかった。

年代別にみると、いずれの世代も8割半から9割程度が大事だと感じており、幅広い世代にエンディングノートの大切さが浸透している様子がうかがえた。また、50代と60代では自分ごととしてとらえている人が少なくないようで、「自分も準備が必要だと思う(または、準備を済ませた)」は50代では39.2%、60代では45.2%であった。

終活と遺贈に関する意識調査2016

次に、「遺言書を作成すること」に対する気持ちについても聞いたところ、“準備は大事”だと感じている人が87.3%となり、エンディングノートと同様に大事だと感じている人が9割近くであることがわかった。

終活と遺贈に関する意識調査2016

また、2014年の調査でも同じ質問をしているが、「エンディングノートを作成すること」に対する気持ちの変化をみると、50代では「自分も準備が必要だと思う(または、準備を済ませた)」が2014年調査では34.3%であったのに対し、今年の調査では39.2%と4.9ポイント上昇。“準備は大事”だと思う人の割合も、84.9%から92.8%と7.9ポイント上昇していた。エンディングノートを自分ごととしてとらえる人が、50代では増えているようだ。

終活と遺贈に関する意識調査2016

■独身50代・60代がエンディングノートに書いておきたいことのトップは「延命治療」

多くの人が、エンディングノートを準備しておくことが大事だと感じていることがわかったが、エンディングノートには、どのようなことを書いておきたいと思っているのであろうか。エンディングノートの準備は大事だと回答した895名に、エンディングノートを作成するなら、どんなことを書いておきたいかを聞いたところ、「大切な人へのメッセージ」が最も多く67.3%、「資産(現金や株式、生命保険の一覧や分け方など)」が53.6%、「延命治療(希望するか、など)」が45.1%、「葬儀(遺影にして欲しい写真や葬儀で無駄だと思うこと[省略して欲しいこと]など)」が40.9%で続いた。

大切な人に思いを伝えたいと考えている人や、残された家族が遺産のことで困らないようにしようと考えている人が多いようだ。また、延命治療や葬儀の希望など、自身の最期の希望を記しておきたいと考えている人も少なくなかった。延命治療の希望をエンディングノートに記しておきたいと思っている人の割合は、50代、60代の独身者(未婚、または配偶者と離別・死別した人)で特に高くなり、50代の独身者では57.4%、60代の独身者では58.5%で、エンディングノートに書いておきたいことの最多回答となった。

終活と遺贈に関する意識調査2016

終活と遺贈に関する意識調査2016

終活と遺贈に関する意識調査2016

■30代・40代の独身者では8割前後が、老後に“おひとりさま”に「なってしまうと思う」と回答

最近では、高齢者の“おひとりさま”(ずっと独身、あるいは家族との死別・離別で一人暮らしをしている人)が増えているといわれているが、自分が将来、“おひとりさま”になると感じている人はどのくらいいるのだろうか。全回答者(1000名)に、自分が老後に身寄りのない状態(おひとりさま)になってしまうと、どの程度感じるか聞いたところ、「きっとなってしまうと思う」が24.8%、「どちらかといえばなってしまうと思う」が35.5%となり、合計60.3%が、老後におひとりさまに「なってしまうと思う」と回答した。

年代別にみると、10代や20代でも半数以上が老後におひとりさまになってしまうと感じているようで、10代で60.9%、20代で62.7%が回答。50代(56.6%)や60代(53.6%)よりも高い割合となった。また、独身者(未婚、または配偶者と離別・死別した人)についてみると、老後におひとりさまになってしまうと感じている人は69.7%と全体に比べて高くなり、30代の独身者では78.6%、40代の独身者では83.3%となった。老後におひとりさまになってしまうと感じている人は、特に30代と40代の独身者に多いようだ。

終活と遺贈に関する意識調査2016

■“おひとりさま”の終活で大事だと思うことは、1位「身の回りの整理」2位「後見人の指定」

6割の人が老後に“おひとりさま”になってしまうと感じていることがわったが、おひとりさまになった場合の終活はどのように考えられているのだろうか。全回答者(1000名)に、老後におひとりさまになった場合、どのような終活をすることが大事だと思うか聞いたところ、最も多かったのは「身の回りの整理」で44.4%、「後見人の指定(認知症になった場合の備え)」が37.7%で続いた。

おひとりさまの終活では、身の回りの整理と後見人の指定が大事だと思われていることがわった。また、終活とは、人生の終わりに向けて前向きに生きる活動ともいわれているが、「終の住処を探す」(34.4%)や「貯蓄をする」(28.1%)、「人との交流を増やす」(16.8%)といった楽しく生きるための活動も挙げられた。

終活と遺贈に関する意識調査2016

■パートナーにエンディングノート作成を望むのは男性よりも女性のほうが高い傾向

パートナーがいる人は、パートナーの終活やパートナーと一緒に終活をすることに対して、どのように考えているのだろうか。パートナー(夫・妻)がいる人(425名)に、パートナーの終活に対する気持ちを聞いたところ、「(将来的に)パートナーにはエンディングノートを作成してほしい」では同意率(「そう思う(計)」)が65.2%、「(将来的に)パートナーには遺言書を作成してほしい」では同意率が57.8%になった。

男女別に同意率をみると、パートナーにエンディングノートの作成を望んでいるのは、男性56.3%に対し女性では73.3%、パートナーに遺言書の作成を望んでいるのは、男性50.9%に対し女性では64.3%となった。エンディングノートや遺言書の作成をパートナーに望んでいるのは、男性より女性に多いことがわかった。

終活と遺贈に関する意識調査2016

また、パートナーの最期の希望に関して聞いたところ、「(将来的に)パートナーの葬儀やお墓の希望を聞いておきたい」の同意率は70.8%となり、パートナーの最期の希望を叶えてあげたいと思っている既婚者が多い様子がうかがえる。男女別に同意率をみると、男性では66.2%、女性では75.1%となった。パートナーの最期の希望を叶えてあげたいと思っている人も、男性より女性に多いようだ。

終活と遺贈に関する意識調査2016

人には大なり小なり秘密があるといわれ、最近では、デジタル終活として、家族に知られたくない秘密を保管・時限付き消去するようなサービスが登場しているが、終活における夫婦間の秘密についての考えを聞いたところ、「(将来的に)重要なことでパートナーに対し秘密にしていることはないようにしたい」では同意率が75.3%、「(将来的に)重要なことでパートナーから秘密にされていることはないようにしたい」では同意率が75.8%になった。

自身の秘密やパートナーの秘密によって、残された家族を困らせたり、驚かせたりしたくないと思っている人が多いのではないだろうか。男女別に同意率をみると、どちらも女性のほうが高く、“パートナーに秘密にしていることはないようにしたい”は男性の72.5%に対し、女性では77.8%、“パートナーから秘密にされていることはないようにしたい”は男性の70.1%に対し、女性では81.0%となった。女性のほうがパートナーの秘密によって困ることは避けたいと思っているのかもしれない。

終活と遺贈に関する意識調査2016

■パートナーと一緒に行いたい終活は、1位「生前整理」2位「遺言書作成」

終活ブームといわれる昨今、夫婦そろって終活を行なっている人や、夫婦で一緒に終活を行なおうと考えている人もいるのではないだろうか。そこで、パートナー(夫・妻)がいる人(425名)に、将来的にパートナーと一緒に行いたい終活を聞いたところ、「生前整理(身の回りの整理)」65.6%が最も多かった。懐かしい写真などを一緒に見て、夫婦の思い出に浸れるのも夫婦そろっての終活のよいところではないだろうか。

男女別にみると、「生前整理(身の回りの整理)」(男性56.4%、女性74.2%)や「訃報を伝えてほしい人のリストアップ」(男性17.2%、女性34.8%)、「葬儀プランの作成」(男性17.2%、女性32.6%)など多くの項目で女性のほうが高くなり、男性より女性のほうが、夫婦そろっての終活に積極的な様子がうかがえる。

また、「遺言書作成」(男性27.9%、女性34.4%)や「エンディングノート作成」(男性21.1%、女性39.8%)でも女性のほうが高くなった。パートナーに遺言書やエンディングノートの作成を望んでいたのも男性より女性であったが、そこには一緒に作成したいとの思いが含まれていたのかもしれない。

 

終活と遺贈に関する意識調査2016

■将来大きな資産を保有していたら、3人に2人が「遺贈の意向あり」で、2年前より6.4ポイント上昇

全回答者(1000名)に、将来大きな資産を保有していた場合、社会の役に立てるために遺贈したいと思うか聞いたところ、「遺贈をしたい」が13.6%、「遺贈してもよい」が53.4%となり、それらを合計した「遺贈に前向き」な人の割合は67.0%と3人に2人の割合となった。年代別にみると、「遺贈に前向き」な人の割合が最も高かったのは10代で76.5%であった。

また、2014年の調査の結果と比較をすると、遺贈に前向きな人の割合は、全体では2014年の60.6%から67.0%と6.4ポイント上昇。遺贈に対する関心度は、年々高まっているのといえそうだ。年代別にみても、2016年調査ではいずれの年代でも上昇していたが、特に40代では2014年の60.7%から72.6%と11.9ポイント上昇している。

終活と遺贈に関する意識調査2016

■遺贈先を選ぶ際に重視したいことは「非営利」「資金の使い道に透明性」「活動内容に共感」

では、遺贈に前向きな人は、何に役立てて欲しいと思っているのだろうか。遺贈に前向きな人(670名)に、遺贈をするとしたら、どのような分野の役に立てるために遺贈をしたいと思うかを聞いたところ、「人道支援(飢餓、病気、貧困に苦しんでいる人びとへの医療・食糧支援など)に」が最も多く50.6%、「災害復旧支援に」が30.7%、「教育・子育て・少子化対策に」が24.5%、「医療技術の発展に」が23.1%で続いた。

遺贈するなら、人道支援活動に協力したいという人が多いようだ。男女別にみると、「人道支援に」(男性44.9%、女性56.3%)や「災害復旧支援に」(男性25.7%、女性35.7%)、「動物愛護に」(男性13.2%、女性25.6%)では、男性より女性のほうが高くなりました。

終活と遺贈に関する意識調査2016

また、遺贈に前向きな人(670名)に、遺贈先の団体を選ぶ際にどのような条件を重視するか聞いたところ、「営利目的でない(NPO法人など)」が最も多く52.2%、「資金の使い道が明確(透明性がある)」が39.0%、「活動内容に共感できる」が35.1%、「公益性が公に認められている」が30.6%で続いた。非営利団体や社会のためになるような活動をしている団体であること、また、自分の遺産がどのように使われるのかがわかることや活動内容に共感できることを重視するという人が多いようだ。

男女別にみると、「遺贈・寄付の方法がわかりやすい・わかりやすく解説している」(男性13.8%、女性30.7%)では男性に比べて女性のほうが高い。女性にとっては、遺贈の方法がわかりやすいということも遺贈先を決める上では重要なようである。

終活と遺贈に関する意識調査2016

■もし親が遺贈を希望したら、7割が「賛同する」と回答

自身が遺贈するケースについてみてきたが、親やパートナーが遺贈を希望した場合は、どのように感じるのだろうか。全回答者(1000名)に、もし、自身の親が遺贈することを希望したら、賛同するか、しないか聞いたところ、「賛同する」が27.9%、「どちらかといえば賛同する」が42.6%となり、それらを合計した「賛同する(計)」は70.5%になった。

調査から、親の遺贈意向を尊重したいと考えている人が多いことが判明した。年代別に「賛同する(計)」をみると、10代では75.9%となり、他の年代に比べて高い傾向がみられた。自身が遺贈するケースでも10代が最も前向きな様子がうかがえたが、親の遺贈に対しても10代が最も前向きなようだ。

終活と遺贈に関する意識調査2016

また、全回答者(1000名)に、もしパートナーが遺贈することを希望したら賛同するか、しないか聞いたところ、「賛同する」が25.1%、「どちらかといえば賛同する」が44.2%となり、「賛同する(計)」は69.3%となった。パートナーに遺贈意向があった場合、その思いを叶えてあげたいという人が多数のようだ。

終活と遺贈に関する意識調査2016

■家族会議の話題に上りやすい傾向?50代・60代の4割強が「遺贈をテーマに家族で話をしてみたい」

遺贈の普及に関する意識を調べるべく、全回答者(1000名)に、遺贈が社会現象化すれば、より良い社会になると思うか聞いたところ、「非常にそう思う」は12.3%、「ややそう思う」が47.9%となり、合計した同意率(「そう思う(計)」)は60.2%となった。また、将来日本で遺贈は社会現象化すると思うかを聞いたところ、「非常にそう思う」は4.8%、「ややそう思う」は22.8%で、同意率は27.6%となった。

遺産を寄付するという考えが広まれば、より良い社会になると考える人が多数派であるものの、残念ながら日本で遺贈が社会現象化すると思っている人は現時点では少数派であることがわかった。

終活と遺贈に関する意識調査2016

また、50代・60代の回答を、2014年調査、2015年調査の結果と比較すると、「遺贈が社会現象化すれば、より良い社会になる」との考えに対する同意率は、2014年が46.6%、2015年が53.0%、2016年が56.9%と、年々上昇している。これからも遺贈が広がれば、より良い社会になると考える人は増え続けていくのではないだろうか。

一方、「将来日本で遺贈は社会現象化する」との考えに対する同意率は、2014年が16.3%、2015年が26.0%、2016年が24.1%という結果に。2014年から2015年にかけては上昇していたものの、2015年から2016年にかけてはほぼ横ばいとなった。

終活と遺贈に関する意識調査2016

次に、遺贈について考えることに関する意識を調べるため、全回答者(1000名)に、遺贈について考えることは、これからの生き方を考えることにつながると思うか聞いたところ、「非常にそう思う」が8.2%、「ややそう思う」が43.5%となり、同意率は51.7%となった。

また、遺贈をテーマに家族で話をしてみたいと思うかを聞いたところ、「非常にそう思う」が6.0%、「ややそう思う」が30.6%で、同意率は36.6%となった。家族と遺贈についての話をしてみたいと思っている人は少なくないようだ。

終活と遺贈に関する意識調査2016

また、50代・60代の回答を、2014年調査、2015年調査の結果と比較すると、遺贈をテーマに家族で話をしてみたいという人の割合は、2014年が25.9%、2015年が27.1%、2016年が41.5%と、昨年から今年にかけて大きく上昇しており、遺贈に対する関心度が上昇している様子がうかがえる。

終活と遺贈に関する意識調査2016

【調査概要】
調査対象:ネットエイジアリサーチのモバイルモニター会員を母集団とする、15歳〜69歳の男女
調査期間:2016年6月3日〜6月8日
調査方法:インターネット調査(モバイルリサーチ)
調査地域:全国
有効回答数:1000サンプル(有効回答から性別・年代の構成比がほぼ均一になるように抽出)
調査協力会社:ネットエイジア

文/編集部