■ヤバイぞ、アジア最終予選〜杉山茂樹×浅田真樹(後編)

浅田:第3戦以降の話をすると、10月のイラク戦(ホーム)、オーストラリア戦(アウェー)は、日本は比較的戦いやすい2試合だと思うんです。ただその戦いやすいというのも、最初の2戦で勝ち点6を取っていたらという話で、もし2分けだったりすると、まったく事情が違ってきますよね。

杉山:アウェーでオーストラリアに勝たなきゃいけなくなるかもしれないからね。何となくみんな、このグループはオーストラリアと日本が少し抜けていると思っているところがあるけど、ふたを開けてみたらUAEのほうが強かったという話になってしまう可能性だってある。

浅田:オーストラリアも、もはや絶対的な強さはないですからね。むしろオーストラリアが抜けていて、残り1枠を争うというのだったらわかりやすいけど、オーストラリアも巻き込んで団子状態なんてことになると、1試合取りこぼしただけで順位が2つ落ちるというような相当ややこしい予選になります。

杉山:さらに先の話をしてしまうと、アジア5位だと北中米とのプレーオフになります。アメリカ、メキシコには勝てそうもないし、ホンジュラス、コスタリカも相当強い。アジアの国よりは強いから、プレーオフに行ったら危ないと思ったほうがいい。

 ということはこの予選で3位に落ちた瞬間、W杯出場に黄信号が灯ることになります。仮に1位、2位がオーストラリアと日本だとしても、3位との差は接近している。もしかしたらUAE戦は2位と3位を争う試合かもしれない。その意味でも初戦が見ものになります。

浅田:前回のアジアカップを思い出すと、日本はやはり強かったと思うんです。結果はUAEに敗れてベスト8で終わったけど、内容的に日本とまともにやれるのはオーストラリアぐらいで、韓国もちょっと落ちるなという感じでした。

 ただその後、日本とオーストラリアが、その角度はともかく下降線に入っているのは確かだと思うんです。イラクは水平ぐらいで現状維持。残るUAE、タイ、サウジアラビアは上を向いている。下降線と上昇線がどのタイミングで交わるのか、逆転するのかはわかりませんが、アジアカップのときより差が縮まっているのは間違いない。

杉山:オーストラリアも若手が出てきて、底は脱したような感じもする。だからもうひとつのポイントは、日本がどれだけ下降しているか。問題は日本が強い相手とほとんど試合をやってないことで、特にハリルホジッチはアジアカップにも出ていないから、予選の全体図がどこまで頭に入っているかだよね。

浅田:今回の最終予選は来年の9月まで、丸1年かけて行なわれるでしょう。これはたぶん過去最長になるのですが、1年後というのは、どんなチームだって全然違うチームになるじゃないですか。日本が下降線で、他は上昇していると考えた場合、1年後にはさらに差が縮まっていたり、逆転している可能性さえある。

杉山:もっと言うと、下降線の話は去年のアジアカップから始まったのではなくて、へたをしたら南アフリカW杯の後あたりから始まっているわけです。本田圭佑、香川真司、岡崎慎司、長谷部誠といった同じようなメンバーでずっとやってきて、1メートルあったものが、すでにアジアカップの時点ではもう7〜8cm沈んでいたんです。それが今さらに7〜8cm沈み、1年後にはもっと沈んでいるのが確実だという話です。このままいくと、逆転されるギリギリのところがロシアW杯予選の最後のあたりで、もしかしたら今回はぎりぎりセーフかもしれないけど、その次のカタールは本当にヤバい。

浅田:UAEなんかは明らかにロンドン世代やその下の若い選手がチームの中心になっています。日本も下降線を止めるには若い選手が出てくるしかないわけですが、とりあえず今回の招集メンバーを見ると、リオ五輪代表から選ばれたのは大島僚太、浅野拓磨、追加招集の遠藤航の3人だけでした。

杉山:本田や香川を超える選手が出てこないといけないんだけど、現実には明らかに超えている選手はいない。清武弘嗣や武藤嘉紀が大化けしたり、よほどの若手が台頭してこないと、僕はこの下降は止まらないと思う。

 結局、そういう問題意識を、監督というより日本サッカー協会が持っているかというのが最大の問題で、それをハリルホジッチに伝えているのかどうか。五輪代表の選手をフル代表に上げるのも、本来だったらもっと早くやらなければダメなのに、弱い相手との練習試合にまで従来のメンバーでやっちゃったりしてきたじゃないですか。今に至るまで発掘に発掘を重ねてきて、でも誰もいませんでしたというのとはちょっと違うんですよ。大島を今選ぶなら、もっと早くから使えよという話なんです。

浅田:今回、もし来年9月のサウジアラビアとのアウェー戦までもつれるようなことになったら、環境的にもかなり厳しい戦いになる。「世界最速出場権獲得」とか言ってる場合じゃなくなりますね。

杉山:97年以来の、ヒリヒリした面白いW杯最終予選になるんじゃないですか。

text by Sportiva