US(全米)オープンテニス1回戦で、第6シードの錦織圭(ATPランキング7位、8月29日付け、以下同)は、ベンジャミン・ベッカー(97位・ドイツ)を、6−1、6−1、3−6、6−3で破り、2年ぶりに2回戦に進出した。

 第1、第2セットは、錦織が強力なグラウンドストロークで常に主導権を握り、ゲームを支配。しかし、それ以降、徐々に調子を上げてきたベッカーが第3セットを奪い、さらに第4セットも第3ゲームを先にブレークして、2セットオールに追いつきそうな流れになった。

 ところが第4ゲームでベッカーが、ダブルフォールトを3回も犯し、錦織がブレークバックに成功。「彼がほぼくれたゲームだった。あのまま行っていたら、5セット目もあっただろう」と錦織が振り返ったように、このゲームを境にして、錦織が息を吹き返して、4セットでベッカーを振り切った。

「もちろん楽な試合ではなかったですし、1セット、2セットのように、彼のミスが続いて、もっと僕がどんどん攻めていければよかったですけど、そうはならなかったので、難しい試合ではありました。でも、内容はよかったし、いい1回戦だったと思います」

 実は、初戦を突破した錦織は、今夏の"USオープンシリーズ"で1位になったため、通常の賞金に加えてボーナスがもらえる。

 USオープンシリーズとは2004年から設けられたもので、夏の北米ハードコートシーズンのワシントンD.C.、カナダ、アトランタ、シンシナティ、ウインストンセーラムまでのATP大会での成績がポイント対象となり、シリーズ上位3名を決めるものだ。

 錦織は、マスターズ1000・トロント大会(7月25〜31日)で準優勝、マスターズ1000・シンシナティ大会(8月14〜21日)で3回戦進出という成績によって、1位になった。ちなみに、2位はグレゴル・ディミトロフ(24位、ブルガリア)、3位がミロシュ・ラオニッチ(6位、カナダ)だ。

 そして、シリーズ1〜3位の選手が全米オープンではボーナスチャレンジ対象者となる。それぞれの順位によって、ボーナスの金額が異なるが、たとえば、1位の錦織は2回戦に進出したことで、約250万円が通常の賞金にプラスされる。今後、錦織が勝ち進むと、3回戦で約400万円、4回戦で約700万円、準々決勝で約1250万円、準決勝で約2500万円、準優勝で約5000万円、もし優勝すると、優勝賞金の約3億5000万円に加えて、約1億円のボーナスを手にできることになる。

 ちなみに、2013年にシリーズ1位になったラファエル・ナダルは、USオープンで優勝して、最高額のボーナス100万ドルを受け取った。

 いい準備はできているという錦織は、ボーナスのことはもちろん、今大会も先のことを考えずに、目の前の試合を戦うことだけに集中しているようだ。これは錦織流のポジティブ思考というか、戦い方といえる。

「(結果については)あまり期待はしていないですね。1試合ずついい試合をしようと思っている。勝った負けた後に、結果は考えればいいこと。あんまりあそこまで行きたいとか、結果を出したいとか、あまり今はないですね」

 ただし、今のような考え方に至ったのは、錦織が2014年全米で準優勝した後、周囲の期待があまりに大きくなって、グランドスラム初制覇が取り沙汰された昨年の全米で、まさかの1回戦負けを喫したことが、きっかけになった。

「たしかに去年のこの大会はプレッシャーがありましたね。(2014年に)決勝まで行って、多少負担はあったと思う。そういう意味では、昨年1回戦負けしてよかったですね。あまりディフェンドもないですし、昨年と比べれば、そういうプレッシャーがないのは事実かもしれません」

 2回戦で錦織は、カレン・カチャノフ(95位、ロシア)と初めて対戦する。カチャノフは、ATPツアー下部のチャレンジャー大会を主戦場としている選手だが、今回予選を勝ち抜き、本戦に上がって初戦を突破してきた。

 大会序盤の対戦では、第6シードの錦織が、ランキング下位の選手からの挑戦を受ける立場にある。今年の全米で身につけている錦織流のポジティブ思考が、序盤戦にどう活かされていくのか見守りたい。

神 仁司●文・写真 text by Ko Hitoshi