あなたは大丈夫? 女性に多い「冷房病」

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執筆:井上 愛子(保健師、看護師)


暑く厳しい日本の夏、冷房のおかげで快適に過ごせるようになった一方で、冷房による「冷え」が健康上の問題になっています。

夏になると至る所で冷房が使用され、薄着で冷房の効いた場所に長時間いると寒く感じたりすることもよくありますね。冷房が効きすぎた部屋にいて体調を崩したというあなたは、「冷房病」かもしれません。

冷房病とはいったいどういうものなのか、詳しく見ていきましょう。

冷房病とはなに?なりやすい人は…

冷房で身体を冷やすことで起こるさまざまな症状を総称して「冷房病」と言います。

誰もが冷房病で不調を起こす可能性がありますが、とくに女性の方が冷房病になりやすいといえます。その理由は男性よりも筋肉量が少なく、脂肪量が多いために体温を上昇させる機能が弱く、冷えやすいからです。

ただ、実は男性も冷房病で不調を引き起こしていることがあります。また、中高年になると皮膚感覚が鈍感になったり、老化によって血流が悪くなることで、知らず知らずのうちに冷房病になっていることもあります。

冷房病はなぜおきる?

冷房病は冷えが原因で起こる病気とお伝えしましたが、そもそも身体が冷えると一体何が起きるのでしょうか。

私たちの身体は、「自律神経」が体温調整を行っています。
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。暑さに対しては、副交感神経がはたらき、血管を拡張させて身体の熱を逃そうとします。

一方、寒さに対しては交感神経がはたらき、血管を収縮させて身体の熱を逃さないようにします。そのため、暑い環境から一転し、冷房で急に体を冷やす、ということを繰り返していると、身体は体温調整をどうしていいのかわからなくなり、自律神経が乱れて体力を消耗してしまいます。

また、冷房病の人は、身体がなかなか温まりにくく汗をかきにくいため、疲労物質も体内にたまりがちになり、疲れやすくなります。

自律神経のバランスは、外気温と室温の差が5度以上の場合に、徐々に乱れ始めます。予防対策をとらずに冷房の効いた場所にいることで自律神経の働きが慢性的に低下してしまうことが考えられます。

冷房病を予防するためには、冷房の温度調節、冷房の効いた部屋での工夫、冷えにくい身体作りなどが大切です。

冷房病で起こる症状とは?

自律神経は、体温調節のほかに、ホルモン分泌や免疫、胃腸の働きの調整も担っているため、風邪をひきやすくなった、月経不順、下痢など、さまざまな症状となって現れてくるのです。

これら以外にも次のような症状が現れます。

・鼻水
・のどの痛み
・頭痛
・全身の倦怠感
・腰痛
・食欲不振
・肩こり
・むくみ


など

冷房病にならないように自衛しよう!

最近では、公共の場所でもかなり冷房が効いているところが増えてきました。そのため、冷房病を予防するためには、きちんと対策をすることが必要になります。

次のことを参考にしてみてください。

・厚手の靴下、靴下の重ね履き、レッグウォーマー、ひざ掛けで足元を温める
・カーディガンを羽織る、スカーフなどで首元を温める
・暑いからといって冷たい飲み物や食べ物をとりすぎない
・適度な運動、ストレッチを行い、血流をよくする
・1日3食、バランスの良い食事をとる
・冷房の温度設定は「外気温マイナス3〜4℃」をひとつの目安とし、「寒い」と感じない温度を基本に調整。冷房の推奨温度は25〜28℃
・マスクの装着
・シャワーだけではなく入浴して身体を温める
・ストレスで自律神経が乱れないよう、ストレス発散をする


普段のちょっとした工夫で、冷房病は防ぐことができます。毎日の生活を見直して、元気に夏を乗り切りましょう。


<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン