国内市場で少しずつ存在感を高めるPHEVだが、ドイツから注目の2台が上陸。今回は燃費、走り、実用性、コストパフォーマンスを比較検証してみた。

アウディ『A3 Sportback e-tron』VSフォルクスワーゲン『ゴルフGTE』はたしてその違いは?注目のヨーロピアンPHEV対決

 環境にやさしい次世代のパワーユニットといえば、EV(電気)、HV(ハイブリッド)、FCV(燃料電池)、PHEV(プラグインハイブリッド)などがある。ではこの先、どのユニットが生き残っていくのだろうか。

 今回は最近、有力視されているPHEVの中から、ドイツから上陸したばかりの2車に試乗した。

◎エンジンは同じだが、走りの性格は全くの別物

 PHEVというのは、モーターとエンジンを動力源にして走行するクルマを指す。HVとの違いは家庭用電源などからバッテリーに充電できることや、走行中にエンジンから充電でき、モーター走行が可能なことなどが挙げられる。

 試乗したのは、VW『ゴルフGTE』とアウディ『A3スポーツバック eトロン』。そもそもアウディは、VWの子会社であるため、両社が使用しているメカニカルコンポーネンツは同じ。しかし、乗り比べてみると両車の性格的なすみ分けを確認することができた。「GT」を名乗る『ゴルフ』は、スポーティーな走行を実現するため、『A3』は質の高い走りを追求するために、モーターの動力を利用しているのだ。

 試乗時、満充電状態の『GTE』は、モーターだけで走行可能な距離は50kmを示していた。カタログ値では53.1kmなので妥当な数値だろう。エアコンを作動させると数値は48kmに減少した。『A3』も状況はほぼ同じだったが、こちらは満充電の走行可能距離はカタログ値で52.8km、『ゴルフ』よりやや短い。JC08モードの燃費も『ゴルフ』が23.8km/L、『A3』は23.3km/Lだ。

 2車の走りを比べてみると、どちらもEVモードで40km以上走行できることがわかった。モニター画面に走行可能な距離をグラフィック表示で確認できるのは便利。モーターによる走りは軽快で速い。0→100km/hの加速は両車ともに7秒台を記録した。これは2Lのガソリンターボのスポーツモデル並みの数値。モーター駆動用のバッテリーが消耗し、航続距離が5kmを割ると自動的にエンジンが始動。走りながら充電することもできる。ある程度充電してからEVモードで走れば、ガソリンの消費を抑えることも可能だ。今回、東京からアクアラインを利用して木更津まで往復したが給油量は3Lだった。『GTE』の車両価格は『GTI』の3割増、『A3』は1.8Lの同じく3割増なので、まだ割高感はある。だが、充電できるHVは現実的に見て今後有力な選択肢になる予感がする。

◎感性をダイレクトに刺激するスポーツ性能
フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

高速走行も130km/hまでEVでOK。エンジンを始動させると、Dレンジ2000回転で走行。エンジン音は静かだ。「GT」モードを選択するとアクセルオフで50%、ブレーキを踏むと100%近いチャージとなり電気をためる。コーナーハンドリングは素直な切り込みで、ロールも抑えられている。スポーティーな運転が楽しめる。

Specification
■全長×全幅×全高:4265×1800×1480mm
■ホイールベース:2635mm
■車両重量:1580kg
■排気量:1394cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
■最高出力:150PS/6000rpm
■最大トルク:250Nm/3500rpm
■変速機:6速AT
■燃費:23.8km/L
■車両本体価格:469万円

フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

エクステリアは同社のeモビリティーシリーズを視覚的にイメージさせるブルーのアクセントを多用。ランプ類は電力消費量の少ないLEDを採用している。

フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

外部からのバッテリー充電は200Vの家庭用電源を使用した場合、満充電に要するのは約3時間。専用の充電ケーブルはコンパクトで使いやすい。

フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

シフトレバーの左側にある「E」と「GTE」の選択スイッチ。ボタン操作だけでエンジンとモーターの動きをワンタッチでコントロールできる。

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アウディ『A3 Sportback e-tron』

アウディ『A3 Sportback e-tron』

高速走行中はエンジンも回っているが、回転計がないため回転数は不明。このような細かい部分の造りが『ゴルフ』との違い。『A3』はサスペンションのモード選択が可能。車体の造りやインテリアのクオリティーは『ゴルフ』より上質感があるといっていいだろう。

Specification
■全長×全幅×全高:4330×1785×1465mm
■ホイールベース:2635mm
■車両重量:1600kg
■排気量:1394cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
■最高出力:150PS/6000rpm
■最大トルク:250Nm/3500rpm
■変速機:6速AT
■燃費:23.3km/L
■車両本体価格:564万円

アウディ『A3 Sportback e-tron』

全長は『ゴルフ』より65mm長いが、幅は15mm短く、高さも15mm低くく、コンパクトで扱いやすい。今回試乗したのは「Sラインスポーツパッケージ」。

アウディ『A3 Sportback e-tron』

コントロールユニットは『ゴルフ』より大きい。オプションパーツにより200Vのほか100Vの充電も可能。100Vの場合約9時間で満充電になる。

アウディ『A3 Sportback e-tron』

「EV」モードのボタンがセンターパネル上部にある。EV、ハイブリッドオート、ハイブリッドホールド、ハイブリッドチャージが選択できる。

《エンジンは同じだが、インテリアやシートなどに違いが》

◎フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

■エンジンルーム

フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

エンジンは直列4気筒DOHC、1.4Lターボを横置きにしその横にモーターを搭載。前輪駆動でミッションはPHEV専用の6速AT、走行モードは「D」と「B」を用意。「B」は積極的に回生する。

■運転席と各種装備

フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

シートのチェック柄やハンドル、シフトレバーのステッチに同社のエコカーを象徴するブルーのアクセントをあしらっている。パワーメーターが専用装備だが、エンジン回転計も付いている。

■シートスペース

フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

『ゴルフ GTI』と似たタータンチェックのスポーツシートは背中や脇腹あたりのホールド性が抜群。スポーツモデルらしい雰囲気を演出している。シートは手動式で着座位置を高くしても頭上スペースは余裕。

■ラゲージスペース

フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

床下にはバッテリーが入っているので床上スペースのみ。左右幅は1010〜1160mm。奥行き740mm、開口部は地面から660mm。開口部の形状はアウディより広い。背もたれは4対6で前倒しできる。

◎アウディ『A3 Sportback e-tron』

■エンジンルーム

アウディ『A3 Sportback e-tron』

直列4気筒エンジンのスペックは『ゴルフ』と同じ。エンジン、モーターのレイアウトも同じ。違いはエンジンのシリンダー上の樹脂製カバーのデザインぐらい。バッテリーはリチウムイオン。

■運転席と各種装備

アウディ『A3 Sportback e-tron』

『ゴルフ』がセンターパネルまで運転席との一体感を重視しているデザインに対し、『A3』は助手席との一体感を重視している。ダッシュ上のモニターは自動収納できるタイプ。

■シートスペース

アウディ『A3 Sportback e-tron』

『ゴルフ』とは微妙に違う形状の前席。しかもシート調節は電動で、上級感を漂わせている。オプションのパノラマサンルーフは大きくて明るいが、シェードはメッシュ地なので真夏はつらいかも。

■ラゲージスペース

アウディ『A3 Sportback e-tron』

全長が『ゴルフ』より65mm長いせいか、ラゲージスペースの奥行きは700mm、左右幅は980mm。トノカバーまでの高さは460mmあるが、狭さを感じさせる開口部の形状が気になった。

「走りなら『ゴルフ』、上質感なら『A3』を選ぶのが正解」

◎フォルクスワーゲン『ゴルフGTE』

[運転性能]GTEモードなど各モードが使いやすく、PHEVの充電の楽しさを手軽に扱うことができる。19点

[居住性]前席、後席ともに大人4名が乗れる空間を確保。乗り心地もモードによってしなやかさからハードまで変化。18点

[装備の充実度]安全装備はかなり充実。カタログに記載されているだけでも12項目以上。アンビエントライトまで標準で装備。18点

[デザイン]ノーマルの『ゴルフ』との違いは、フロントグリルのブルーラインとフロントスポイラーのC型LEDランプ。19点

[爽快感]EVモードのスタートの加速やアクセルオンでのタイムラグのない走りは爽快。レスポンスのよいGTEモードは◎。19点

[評価点数]93点

◎アウディ『A3 Sportback e-tron』

[運転性能]ボディーのしっかりした造りや重厚感は、プレミアムコンパクトカーの名にふさわしい。19点

[居住性]基本的に室内の広さは『ゴルフ』と同じレベル。リアシートも同じ。ロードノイズの侵入は抑えられている。19点

[装備の充実度]パークアシストや100V充電ケーブルなど装備は充実。充電プラグを被うアウディマークのカバーがチープ。19点

[デザイン]外観でノーマル車と『e-tron』を見分けるポイントは少ない。これはPHEVであることを目立たせない方針か?18点

[爽快感]爽快感より上質感を重視したクルマ造りを感じる。快適さより上級感を重視する人におすすめ。18点

[評価点数]93点

文/自動車生活探検家 石川真禧照