「朝ドラを経て芝居心が変わった」――堀井新太、舞台への全力投球を誓う。
波乱万丈な運命をたどる一家・大道寺家の人々の挫折と再生を軽妙なタッチで描く舞台『家族の基礎〜大道寺家の人々〜』。大道寺家に憧れて子ども同然に育つ近所の子として、堀井新太が約2年ぶりの舞台に立つ。2014年放送の連続テレビ小説『マッサン』への出演をキッカケに知名度を上げ、さらに、役者としての使命感を強く持つようになったという。「今はとにかく芝居をやりたい」と目を輝かせて話す堀井に、本作への意気込みを聞いた。 

撮影/宮坂浩見 取材・文/渡邉千智(スタジオ・ハードデラックス) 
ヘアメイク/小林純子

コメディへの挑戦。楽しみと不安な気持ちを抱えて…。



――本作への出演が決まったときのお気持ちからお聞かせください。

率直に嬉しかったのと、同時に怖さを感じました…。今まで、コメディ作品ってそんなにやったことがなかったので。戦争の真っただ中を生きる役だったり、時代劇だったりに出演することが多かったので、僕がコメディにチャレンジできるのかという不安がありました。

――脚本・演出はコメディの旗手とも言われる倉持 裕さんです。

倉持さんが作るコメディは、大げさに笑いをとらないというか。「人がそういう行動を起こしたら、そりゃみんな笑っちゃうよね」という、人が生きていく過程で起こる何気ないことを笑いにしているんです。これをお芝居で表現できたらこれから先、本当にいろんなジャンルのお芝居で幅が効くんじゃないかなと思っています。

――いろんなところで活かせるぞ、と?

はい。難しいんですけどね。今、稽古中なんですが、本当に勉強になります。(※取材を行ったのは8月中旬)



――堀井さんが演じるのは、染田明司(そめた・めいじ)という青年。大道寺家に憧れ、子ども同然に育つ近所の子の役ですが、堀井さんは明司のキャラクターをどう捉えていますか?

勝手に大道寺家に上がり込んで、家族も同然のような振る舞いをする…普通ならそんなことはしないと思いますけど(笑)、彼がそんなことをするのは、大道寺家に憧れているからなんですよね。無邪気で純粋なヤツです。

――明司を演じる上で難しいと思ったところは?

みなさんがしゃべっていて、明司にスポットが当たっていないときの立ち居振る舞いですね。「明司はなぜ今黙っているんだろう」「何に夢中になっているんだろう」という台本に書かれていないところを作り上げていく必要があるんです。

――なるほど…。

たとえば、僕自身の思考だったら飛ばないけれど、明司は、急にこの会話からこの会話に飛ぶ、ということがあって。それには必ず理由があるんです。台本をヒントに、何通りもあるなかからその答えを選んで、明司を紡いでいく作業に苦労しています。

――明司は、林 遣都さん演じる大道寺家の長男・益人の幼なじみですね。

今回、僕が重要視しているのが、その益人と、夏帆さん演じる大道寺家の長女・紅子との3人のバランスです。

――バランス?

益人と紅子は兄妹ながらすごく極端で、対比が多く描かれています。明司はそのふたりの間に入っていく感じなのですが、ふたりが対立するなかで、益人と紅子、どちらからもツッコまれる存在であることが、明司を舞台上で輝かせることにつながるんじゃないかと思って。



――林 遣都さん、夏帆さんへの印象は?

ふたりとも僕がデビューする前から活躍されている方なので、まず一緒の舞台に立ってお芝居ができるなんて…という衝撃はありました。ふたりとも力のある役者さんだなというのをビシビシと感じていますし、遣都くんは初舞台にも関わらず、すごく堂々としていてさすがだなと思いましたね。

――林さんのことは「遣都くん」と呼んでいるんですね。

この前、カンパニーで焼肉に行ったときに、遣都くんから「タメ語にしない?」と言われて(笑)。

――そこからタメ語に?

その場では「いやいやいや!」って(笑)。僕よりキャリアが倍以上あるのでとんでもないことだ、と。でも遣都くんは「益人と明司は幼なじみだから」って。僕とタメ語で接することが、益人を演じる上でプラスになると思って提案してくれたみたいです。ただ、まだお互いちょっとぎこちないです(笑)。

――そうなんですね(笑)。カンパニーでは、誰が率先してご飯に誘ってくれるんですか?

最初は、松重 豊さん(大道寺尚親役)ですね。焼肉に行ったんですけど、松重さんがごちそうしてくださいました!

――稽古では体力を消耗しますから、お肉を食べてスタミナをつけないとですね…!

そうですね! やっぱり体力勝負のときには肉が食べたくなります。脂っこいのは苦手だけど、タン塩と赤身系のお肉は大好き。実は昨日もプライベートで焼肉に行ってきました!



弟キャラではなく破天荒な兄? 堀井家のおはなし。



――波乱万丈な家族の物語に出演されるということで、堀井さんのご家族についてのお話もお伺いしたいのですが…

両親と、僕と弟の4人家族です。どんな家族かと言うと……普通です(笑)。母親が大黒柱的な感じですね。すごくしゃべる母なので、うるさいなって思うときもあるんですけど(笑)。

――(笑)。

オヤジはどちらかと言うと寡黙なタイプ…というか、気になったときにしか話しかけてこないですね。

――堀井さんはどちら似なんでしょう?

ハーフ&ハーフじゃないかな(笑)。

――いいところを受け継いでいると(笑)。弟さんとは似ていますか?

僕の1個下なんですけど、弟のほうが真面目で堅実ですね。真反対までとはいかないけど、趣味も全然違うので似ていないと思います。




――堀井さんは今、ひとり暮らしですよね。普段あまり会うこともないんですかね?

そうなんです。弟は大学生で実家にいるから、年に数回会うくらいで。連絡は取り合いますけど。

――堀井さんが実家に帰ったときに会うと。

はい。あ、家では、僕が漫画を買う係なんです。僕は漫画を読むのが好きなので、僕が買ってもう読まなくなった漫画を実家に持って行って、それを弟が読む。いらなくなったものをあげてるだけですけどね(笑)。

――兄弟喧嘩はしない?

お互い、もう大人ですからね。小さい頃はよくしていましたよ。もちろん、兄貴である僕のほうが絶対的に強かったです(笑)。

――“弟キャラ”のイメージが強かったんですが、実際はお兄ちゃんなんですね。

はい。実際は、破天荒な兄貴なんですよ(笑)。

――破天荒…? ご自身の性格を一言であらわすとしたら「破天荒」ですか?

うーん…。「少し抜けてるとか」ですかね(笑)。

――えっ!?

弟みたいに掃除も料理もできないし(笑)。あと、基本的にはポジティブなんですけど、実はネガティブなところもあって、家ではずっと落ち込んでいることも…。同世代の俳優をテレビで見て、「あいつ、出てるな……」みたいな(笑)。

――同世代の俳優の動向はやっぱり気になりますよね…。

そうですね。でも、ライバルの存在は刺激になるし、とてもいいことだと思っています。