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配偶者から「離婚したい」と言われた時、どんな対応をすればよいのでしょうか? 応じる意志がない場合には、関係修復への道を探ることになりますが、夫婦関係を修復し、離婚を回避する方法はあるのでしょうか。

数多くの離婚問題を扱ってきた寺林智栄弁護士は「修復するのは、基本的には難しい」と指摘します。なぜ難しいのでしょうか。その理由を聞きました。(取材・文/ライター・吉田彩乃)

 ●基本的に、関係修復は難しい

ーー配偶者の浮気が発覚しても、離婚する夫婦ばかりではありませんし、中には「ごく普通の生活を送っていた」はずなのに、離婚したいと言われてしまうこともあるようです。相手が「離婚」を口に出してきたような段階でも、修復することは可能なのでしょうか?

私は難しいと思っています。「突然、離婚したいと言われてしまった。何とか思い直してもらうことはできないか」と、駆け込んでくる方はいます。そんな方に対しては「関係修復は難しいですよ」と、最初にはっきりお伝えしています。

特に、相手が弁護士をたてて離婚の意思を伝えてきたり、家を出て行って別居状態になっていたりする場合には、ほぼ復縁の望みはかなり薄いですね。そこまでいくと、相手は相当覚悟を決めていますから。

ーー法的に夫婦関係を修復することはできないのでしょうか?

家庭裁判所で、夫婦関係を調整するための調停(話し合いの場)を設けることができます。この調停には、「円満調停」と「離婚調停」という2つがあり、夫婦どちらかの意思で申し立てることができます。「円満調停」は文字通り、円満な夫婦関係を回復するために話し合うことが目的で、離婚をしたくない側が申し立てることが多いです。

ーー円満調停では、具体的にどんなことをするのでしょうか?

調停を申し立てるようなところまでいく夫婦は、別居している場合がほとんどです。話し合う内容は、例えば「また同居できないか」「同居するとしたら、どのような条件がいいのか」ということですね。調停を起こされた側は、基本的には、次の調停の期日までに、同居の可否や条件を回答する流れになります。

回答が「離婚したい」「同居は考えられない」という内容であれば、調停の不成立や取り下げで終わりますし、今すぐ離婚する気もないけど同居もしたくない場合は、別居中のルールを決めて終わる場合もあります。

ーー円満調停によって、関係修復は期待できるのでしょうか?

ケースバイケースではありますが、可能性は限りなく低いと思います。円満調停をして、夫婦関係を修復できたという話は、私の周囲では聞いたことがありません。

離婚したいと主張している側や、家を出て行ってしまった側は、それなりに別れる意思を固めているものです。そういう人に対して円満調停という法的手段を使ってしまうと、相手も「やり直すなんて絶対嫌なのに、まだ食い下がるのか。こっちも本気で動かないと」と、離婚の意思をより強くさせてしまう可能性があります。

円満調停を申し立てたら、相手が離婚調停を申し立ててきたケースは珍しくありません。

 ●一定期間別居することでうまくいくケースも

ーー相手が「離婚したい」と口に出してきた時点で、すでに夫婦関係は破綻しているということでしょうか?

そもそも相手から「離婚したい」と言われているのに、なぜ「離婚したくない」と思うのか。その理由は様々ありますが、1つには、専業主婦が経済面への不安から拒否するように、離婚後の生活を心配しているケース。もう1つには、相手がなぜ離婚を望んでいるのか、家を出て行ってしまったのか、分かっていない場合も多いと思います。

離婚を申し立てられた側に対して、こちらから「なぜ今別居されているんですか?」「ご夫婦の間で何かあったんですか?」と聞いても「よくわからないんです...」という答えが返ってくる。ところが、離婚調停の申し立て書や内容証明書を見ると、申し立てられた側による暴力や暴言があったという記述や証拠がズラズラ出てくることも少なくありません。

メールでかなりキツい言い方をしたり、脅しのようなことを言っているのに、本人には、離婚原因になるようなひどいことをしている自覚がないケースは多いと思います。言葉の暴力の加害者は、男女ともにいます。

特に女性は、力では男性にかないませんから、言葉の暴力がエスカレートする傾向があるように思います。配偶者からひどい言葉を浴びせられてきた方は、長い間苦しんで我慢して、精神的に限界を超えた状態で離婚を決意していることが多いので、関係修復はほぼ無理ではないでしょうか。

ーー弁護士の力や法律のサポートをもってしても、一度こじれてしまった夫婦関係を修復することは難しいのですね。

基本的には難しいと思います。ただ、夫婦によっては、一定期間別居してお互いの距離を見直すことで関係修復できる場合があると思います。お互いの距離が近すぎると、嫌な部分が目について色々言いたくなるけれど、少し離れて暮らしてみて、「たまに食事に行こう」「気が向いたときに帰っておいで」という関係であれば、仲良しでいられる。そういう夫婦は実際にいらっしゃいました。

とはいえ、別居してうまくいくケースはごく少数です。夫婦として人生をともに歩んでいくかどうかは、2人の意思の合致があって初めて成り立つものです。片方が嫌だと言い始めてしまったら、関係修復は基本的に難しいと思います。

相手の「離婚したい」という意思が強いことがわかったら、もう気持ちを切り替えるべきではないかと思います。そこで、依頼者の方にはいつも、こんな風に伝えます。

「離婚したくないと粘っても、数年別居が続けば離婚する流れになりますよ。もう割り切って、慰謝料や養育費、親権などについてきちんと取り決めて、あなたにとって損がない条件で離婚することを考えたほうがいいのではないですか」と。

一度は一生添い遂げることを誓った配偶者と離婚することは、辛い決断ですし、納得できない気持ちもあるでしょう。しかし、決着を引き延ばすことによって得るものはあるのでしょうか。

離婚を切り出されたら、これからの人生での「マシな結論は何か」を考えるしかありません。そして、そのためには、感情的な気持ちのまま行動するのではなく、一呼吸おいて冷静になることが必要ではないかと思います。とはいえそれも当事者にとっては難しいと思うので、弁護士に相談してみることをお勧めします。



【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。東京弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)を経て、2014年10月開業。刑事事件、離婚事件、不当請求事件などを得意としています。
事務所名:ともえ法律事務所
事務所URL:http://www.tomoelaw323.com/