画像提供/竈プロジェクト

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9月1日は防災の日。この防災の日を含む1週間(8月30日から9月5日まで)が「防災週間」と定められており、台風や高潮、津波、地震などさまざまな災害へ備えるべく、会社や学校、また地域のコミュニティで防災訓練を行うという方も多いかと思います。そんな中、茨城県の筑波大学では、2011年3月に起きた東日本大震災の後に人々の「防災」への意識を高めることを目的の一つとして「竈(かまど)プロジェクト」という取り組みを開始したといいます。一体どういうプロジェクトなのか? 「竈」でなぜ防災の意識が高まるのか? その理由を探りにつくば市へ向かいました。

「竈プロジェクト」とは?

「『竈プロジェクト』は、筑波大学の多領域にわたる専門分野と芸術とが協働し、被災地の多様なニーズに応えることを目的とした『創造的復興プロジェクト』の一つとして、2012年にはじまりました。このプロジェクトには、竈づくりとつくった竈で実際にごはんを炊く体験を通して“防災”、“食”、“人の集い”について考えて、行動するきっかけを一人でも多くの人につくれたら、という考えがあります。

特に『防災』という点においては、震災時の停電や節電の際に感じた“電気に頼らず生活するのはむずかしい”という思いから、電気に頼らず煮炊きができて、しかも特別な道具や材料がなくてもつくれる『竈』があれば、災害時の備えとして役に立つのでは、また竈をつくることを通して、『防災』への意識を少しでも高めることができるのでは、と考えています。

現在は、震災と竜巻の2つの災害に見舞われたつくば市北条の『土田邸』という古民家をプロジェクトの活動の拠点としながら、定期的に日本の各地へ赴き、その場で竈をつくるワークショップを開いています。これまでに、茨城県水戸市や宮城県の山元町、鹿児島県の種子島へ行きました」(竈プロジェクト 加来さん)

【画像1】活動の拠点となっているつくば市北条にある土田邸(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像1】活動の拠点となっているつくば市北条にある土田邸(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

実際に竈づくりに挑戦!

電気が無くても料理ができる、しかも特別な材料無しでつくれるという点で「竈」が災害時に役立つということが分かりましたが、実際にどのようにつくるのか? プロジェクトメンバーの皆さんに教わりながら、一緒に竈づくりにチャレンジしてみることにしました。今回つくることになったのは「土竈(つちかまど)」という一番簡単につくれるタイプの竈。まずはシャベルで地面を掘ってトロ船に土を入れていきます。

【画像2】最初にトロ船に砂を入れていく(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】最初にトロ船に砂を入れていく(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

半分ほど土を入れたところで、全体が湿るように水を入れていきます。この際に細い藁を混ぜ入れることで、土同士がしっかりと結びつき、強度が高まるとのことです。

【画像3】土に藁と水を入れていく(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像3】土に藁と水を入れていく(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

湿らせた土をよく混ぜて、粘度がしっかりでてきたところで、別に用意しておいた段ボールの中に、土を詰めていきます。途中で煉瓦を入れることによって、竈が出来上がったときに薪を入れる「焚き口」のスペースが確保されます。

【画像4】煉瓦を置いたところが薪を入れる「焚き口」に(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像4】煉瓦を置いたところが薪を入れる「焚き口」に(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

その後さらに土を詰めていき、段ボールの3分の1程度埋まったところで、完成した後、羽釜を入れる部分をつくるためにバケツを置きました。後は、段ボールいっぱいになるまで土を入れていきます。

【画像5】段ボールいっぱいに土を入れていく(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像5】段ボールいっぱいに土を入れていく(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

土がいっぱいになれば、後は乾くのを待つだけ。時期や天候にもよりますが早ければ1日〜2日で乾くそうです。

【画像6】乾いたら段ボールをはがしていきます(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像6】乾いたら段ボールをはがしていきます(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

乾いたら、段ボールをはがして「竈」の土台のできあがり。この後、焚き口のスペース確保のために置いておいた煉瓦を抜いて、煙突となる筒を設置すれば「土竈」の完成!土を入れたり、混ぜたりする作業は体力を使いますが、行程自体はとてもシンプルで分かりやすいものでした。

【画像7】乾いて完成した土竈(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像7】乾いて完成した土竈(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

竈でごはんを炊いてみた

それでは実際に竈を使ってごはんを炊いてみようということで、今回は、土竈が乾ききらなかったため、特別に移動式の竈「RICYCLE(竈BIKE)」を使わせていただきました。「移動ができる竈」という画期的な発想のこの自転車、実際の災害時にもとても役に立ちそうです。

【画像8】RICYCLE(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像8】RICYCLE(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

早速、このRICYCLEに羽釜をセットし、薪と藁を用意して火を起こし、ご飯を炊き始めます。

【画像9】RICYCLEへ羽釜をセット(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像9】RICYCLEへ羽釜をセット(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像10】炊き上がるのを待ちます(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像10】炊き上がるのを待ちます(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

RICYCLEで炊くお米は「北条米」という昭和初期の皇室献上米でもあった地域の特産品とのこと。これが竈プロジェクトの目的の一つである「食」の部分。その地域ならではの食材を活用することで、その地域の貴重な資源にも光を当てていこう、という目的もあるということです。

【画像11】美味しく炊き上がった北条米(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像11】美味しく炊き上がった北条米(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

また「人の集い」という点で、地域の広場で竈を使って料理をすることによって、近隣の人々が自然と集まって交流が生まれる、ということもこの竈プロジェクトならではの特徴といいます。老若男女皆が関心を持つ「食」というものを介することで地域の人と人とのコミュニケーションを活性化させて、いざというときの「助け合いのコミュニティ」の形成にもつなげられたら、と考えているようです。

【画像12】北条米のおにぎりと美味しい料理によって初対面でも自然と盛り上がる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像12】北条米のおにぎりと美味しい料理によって初対面でも自然と盛り上がる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

竈じゃなくてもいい。いざというときの「手段」を持っていることが大切

プロジェクトメンバーの方々に話を聞くと「私たちは、必ずしも『竈』ではなくてもいいと思っています。どのような形でもいいから、いざという時のための『手段』を持っていることが本当に大切なことだと思っています。『竈』を活用するというのはその手段の一つかな、と思います」とのこと。

災害に対して、起きてしまってからどうしようか考えるのではなく、電気が使えなくなったら、水が出なくなったら、自分だったらこうしようという「手段」を事前に持ち、いざというときの対処方法を考えておくことが、被害を最小限に抑えることにつながるのではないか、というプロジェクトメンバーの話を聞きながら、私自身、以前仙台で東日本大震災を経験したとき、いざ災害が起きると何から対応していけばいいのかすぐ判断するのが難しかったことを思い出しました。年に一度の防災週間、この機会に災害時のために事前に準備ができること、起きた際に自分が取れる手段について、改めて考えてみませんか?

●取材協力
竈プロジェクト