中国の台頭により、戦後の米国中心の国際秩序が大きく揺らいでいる。五百旗頭アジア調査会会長は「米中間では戦略的対話が毎年開かれ、あらゆる問題を協議している」と指摘。日米間でも開催すべきだと提唱した。写真は会見する五百旗頭氏。

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中国の最近の台頭により、戦後の米国中心の国際秩序が大きく揺らいでいる。五百旗頭(いおきべ)真アジア調査会会長・熊本県立大学理事長(前防衛大学校長)、宮本雄二元駐中国大使、川島真東京大学教授が、「中国とどうつきあうか―日米中のこれから」をテーマに、日本記者クラブでこのほど会見した。五百旗頭氏は「歴史的に、大国が勃興してきたときに、戦乱を避けるのはこれまで難しかった」としながらも、「米中間では戦略対話が毎年開かれ、あらゆる問題を協議している」と指摘。日米間でも開催すべきだと提唱した。

五百旗頭氏の発言要旨は次の通り。

中国は文化大革命を収めたトウ小平が、改革開放路線を打ち出した。1980年ごろから経済発展が軌道に乗り、以来30年間にわたって毎年平均10.5%の成長を続けた。日本もかつて17年間にわたり高度成長を果たしたが、中国はその2倍近くの長い期間、しかも人口、面積が大きいので大きなインパクトを及ぼすことになった。

リーマンショック(2008年)の後、米国、欧州、日本経済が大きく落ち込んだ際に、中国は5兆人民元(約60兆円)をつぎ込んで世界的な危機を救った。

1979年にはユーラシア大陸の西でも、イラン「ホメイニ革命」が起きた。以来イスラム急進勢力が台頭。イラン、イラク、シリアと中東が激動地域となった。ユーラシア大陸の東と西で、大きな地殻変動が起きたことになる。

ハティントンは著書『文明の衝突』の中で、「中華文明とイスラム文明が西洋文明に挑戦する」と書いたが、世界は今、その通りになっている。イスラム社会の混乱は不条理や憤りが根底にある。西洋文明はイスラム文明と中国による挑戦を受けている。

中東からアフリカにかけて、イスラム急進派による混乱が続くかもしれないが、来世の情念が支配する世界なので、やがて消えることになるだろう。

世界最大の人口を擁する中国の台頭はイスラム世界とは全く違った現生リアリズムであり、世の中の高揚を求めてやまない。日本にとって隣の大国が経済的に大成功するのは慶賀の至りだ。経済的に発展し、日本製品の爆買いは大歓迎だが、外交安全保障が難しい。

米オバマ大統領は平和を望み、中国の南シナ海や東シナ海での中国の海洋進出にも力の行使をしない。中国が尖閣諸島などに手出しをしてきたときに、相応の「拒否力」を持っていなければならない

歴史的に、大国が勃興してきたときに、戦乱を避けるのは難しかった。英国から米国への移行は同じアングロサクソンの仲間だったので、スムーズだったが、勃興してきたドイツ、日本は戦争になった。

巨大国家・中国への日本の対応は難しいが、(1)海上保安庁による“拒否力”を高め、自助努力を怠らないこと、(2)日米同盟の維持、(3)国際的な連携、(4)中国との戦略対話・文明対話を進め、状況を見ながら話し合いを行うこと―など4点に留意すべきだ。

米中間では大規模な戦略対話が毎年開かれ、あらゆる事象を話し合っている。このような対話が日中間でできないものか。中国自身も迷いがある。日本は話し相手となり、困難な状況でも一緒に考えることが重要だ。(八牧浩行)
<続く>