■ヤバイぞ、アジア最終予選〜杉山茂樹×浅田真樹(前編)

 いよいよ始まるロシアW杯アジア最終予選。グループBの日本のライバルはオーストラリア、サウジアラビア、UAE、イラク、タイ。上位2カ国は出場権を獲得。3位同士はアジアプレーオフを戦い、勝者が大陸間プレーオフに回る。

 初戦をUAE(9月1日)、第2戦をタイ(9月6日)と戦う日本。とはいえ、現時点で予選落ちを本気で危惧している人は少数派だろう。5大会連続出場中の日本。それ以前の記憶など忘却の彼方へ消え去ろうとしている。だが今回は違う。危機感を募らせるサッカーライター、杉山茂樹氏と浅田真樹氏が予選を展望する。

杉山:南アフリカ、ブラジルと、ここ最近のW杯予選は「何だかんだと言って突破確率、80%はあるんじゃない?」と見ていたのですが、今回はちょっと様子が違います。五分五分とは言いませんが、60%あるかどうか。理由のひとつは、対戦国の実力が上がっていること。UAE、タイという「苦戦はしても何とかなるだろう」と思っていた相手も、そうではなくなってきた。

浅田:僕も、最初の2戦が最終予選のヤマ場になるような気がします。ここで2連勝すればいつものように行けるかもしれないけど、そうでないと最後までもつれるドロ沼の予選になる可能性がある。特にUAEとタイは、序盤で当たるには相当、嫌な相手です。

杉山:そもそもUAEは、このグループの1位ではないけど、かなり有力なチームだと思う。だから日本はUAEより順位が下だと予選落ちの可能性が高くなるわけです。直接対決の2試合が重要で、もしホームで引き分けたらアウェーでは敗れることも考えられるし、ホームでラッキーな1−0の勝利をあげても、アウェーで危うい感じが出てきます。

浅田:アジアカップで負けてる相手だというのがポイントですね。例えば97年のフランスW杯予選ではUAEと2戦とも引き分けていますが、守りを固める割り切った戦いができるチームというイメージはいまだに強いと思います。でも、選手は当時より明らかにうまくなっている。ある程度タレントも揃っています。昔の中東風の単なる引いて守ってカウンターみたいなチームよりかなり手強いのですが、一方であいかわらず割り切った戦いもできるのが強みです。

杉山:守って強い感じ。アジアカップの試合がそうだったけど、まぐれで1点を取ったというわけではなかったですから。10番のオマル・アブドルラフマンなんて相当うまいでしょう。一瞬「本田圭佑より上じゃない?」と思わせるプレーを見せられると、日本の選手は焦っちゃうんです。テクニック系のチームがそれ以上のテクニックを見ちゃうと、結構「あっ」となって困るところがある。同じ負けでも、まぐれで点を取られて負けるのよりショックを受けます。日本の選手たちはそれをまだ覚えているだろうから、初戦の相手としては嫌だと思う。

浅田:アジアカップでのUAEは、日本以外との対戦では圧倒的にゲームを支配していたんです。相手が違えばポゼッションをして日本と同じようなサッカーができるチームなのに、リスペクトしているのか、日本戦ではあえて割り切った試合をしていました。要するに、いい意味でのちゃんと守れるメンタリティーを残したままうまくなっている。

 今回も、基本的には守りを固めてくると思うんですけど、もし逆に、UAEがポゼッションでガップリ組んできて、日本がやられるようだったら、むしろ相当ヤバい。そういう意味では、相手の出方によって日本のこのグループ内での立ち位置みたいなものも見えてくるんじゃないかなという気がします。やろうと思えばそういうサッカーもできるチームですから。

杉山:そう。だからこの試合は、勝敗とは別にボール支配率もちょっと見ておいたほうがいいね。UAEの支配率が思いのほか高いと、たとえ勝ってもアウェーでやられる感じが出てくる。

 2戦目のタイについていうと、潜在能力は日本のほうが上だと思うんだけど、タイも実は技術が光るチームです。ちょうどヨーロッパ人から見た日本人みたいなサッカーをやります。ちょっとヘナチョコなところはあるんだけど、ボールさばきとか、ちょこざいなプレーがうまいから、ホームで地元のファンが喜んじゃったりすると、日本の選手は泡を食う。そういうパターンに入ってくると結構危ないと思う。

浅田:やっぱりタイも、若い選手を見ていると明らかに昔より技術的にうまくなっていますね。1月にU−23代表が対戦したときも、結果的には日本が4−0で勝ちましたが、そこまで力の差はないという感じはしました。

 これがある程度予選が進んで、タイが何敗かしていて、少しやる気もなくなってきたという頃に戦うならまだいいのですが、まだ十分に可能性のある元気な状態のタイというのは、日本のアウェーの初戦の相手としては、このグループの中では最悪に近いのかなという気がします。

杉山:このグループの中では、どちらかというと弱いほうの部類のタイですが、ガシャガシャと活気のある元気そうなサッカーをするじゃないですか。それに幻惑されると、そもそも日本は勝つつもりで臨むだろうから、動揺するでしょうね。シンガポール戦のように、日本は点が取れないとパニックになるようなところがあるから、「あれー?」みたいな感じになってしまう。

浅田:0−0で後半の半ばまでいったら、結構浮き足立ってくるでしょうね。これでもし相手がオーストラリアやサウジアラビアだったら、「最悪、引き分けてもいいや」という意識でやれると思うけど、タイではそういうわけにはいかないですから。
(つづく)

text by Sportiva