ニューヨークの夜は、日本の昼

写真拡大

本連載では、医師×MBA×経営者のトリプルホルダーで、ビジネスパーソン両方の視点と経験を併せ持つ著者が、発売まもなく増刷を重ねる大好評の新刊『一流の睡眠』から、現実的かつ具体的な「睡眠問題解決法」を教えます。

第11回は、時差ボケとの「正しい戦い方」を明かします。

 海外出張が多いビジネスパーソンを困らせるのが「時差ボケ」です。せっかく、海外のクライアント向けに入念に資料を準備しても、当の本人が時差ボケでベストパフォーマンスが出せないのは、非常にもったいないことです。

 ビジネスは「瞬間」が勝負。あなたの時差ボケが解消するまで、先方は待ってくれません。海外でのパフォーマンスが求められる以上、必ず時差ボケと戦わなければならないのです。

 たとえば、9月1日の昼12時に日本から米国のニューヨークまで出張するケースを考えましょう。時差は14時間、フライトは約13時間ほどです。

 13時間のフライト後、ニューヨークに着くのは現地時間9月1日の午前11時。これを日本時間に直すと9月2日の午前1時です。日本にいれば、ぐっすりと眠っている時間帯です。しかし、ニューヨークでは摩天楼に日差しが照りつけるお昼前。体と頭は眠いのに、現地では仕事時間のど真ん中です。

アメリカ方面は「早寝早起き」
ヨーロッパ方面は「遅寝遅起き」

 時差ボケは、医学的には「時差障害」と呼びます。
 国際的な診断基準は次の3項目です。
 
 -----
(1)ジェット機に乗って、少なくとも3時間以上の時差がある場所へ旅行した時に、不眠や過眠を自覚する
 
(2)旅行後1〜2日以内に、昼間の心身の機能が落ちたり、全身がだるくなったり、胃腸障害などの身体症状が出る
 
(3)その睡眠障害は、他の睡眠障害や内科・精神科的な病気、薬物の使用などでは上手く説明できない
 -----

 また、一般的には、時差ボケは次のように説明されます。

 -----
●症状として、日中の眠気、疲れ、だるさ、不眠、頭が重い感じなどがある
●3時間以上の時差がある国や地域に旅行する時に起こりやすい
●西よりも東へ飛行した場合に症状が強くなる
 -----

 日本から東方面、たとえばニューヨークに移動したばかりの人の生体リズムは、日本での生活の延長線上にありますから、日中は日本で起こっているように深部体温が低下し、暗いところではメラトニンが分泌され、睡眠へと体が動きます。心拍数や血圧も低下して、脳・身体機能も眠る準備に入っていきます。

 一方で、ニューヨーク時間の夜に睡眠をとる時は、日本では昼にあたりますから、生体リズムの影響で深部体温は上昇し、メラトニンも分泌されず、体は活動状態に入ります。これが時差ボケの時に人の体の中で起こっているメカニズムです。

 対策としては、旅行前の睡眠が不足していると、時差症状による睡眠障害がより強く出現する場合が多いので、まずは海外に旅行する前に、十分に睡眠を確保しておくことが大切です。

 また、アメリカなど東方面へ向かう場合は、数日前から少しずつ早く床につき早起きをするようにして、体を現地の時間にゆっくりと慣らしていきます。逆に、ヨーロッパなど西へ向かう場合は、遅く寝て遅く起きるようにして準備するのです。

短期出張なら「日本時間」を死守せよ

 滞在期間が2〜3日の短期出張の場合は、現地時間に無理にあわせずに、日本時間の夜間にあたる時間帯にまとまった睡眠をとるようにして、日本のリズムを保った方が楽な場合が多いと言われています。

 日中に現地に到着して、どうしても眠いときには、2〜3時間ほど仮眠をとるのも効果的でしょう。その際にあまり長く眠ると、夜の睡眠に悪影響が出ます(なお、仮眠の科学的な効用と具体的な実践方法については、拙著『一流の睡眠』で詳しくご紹介しています)。

 起きるべき時間になったら、眠くてもがんばって目を覚ましましょう。仮眠から起きたら外に出て、太陽の光を浴びると、現地時間対する体内時計の調整が進みます。