林彰洋(撮影/岸本勉・PICSPORT)

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8月30日、日本代表は非公開練習を行った。戦術練習ができるのは、この日と翌日の2日だけ。練習場は青いビニールシートで覆われ、ランニングメニューが終わると報道陣は外に出された。これでこの日の練習内容はすべて秘密となるはず――だったが、違った。

目隠しがされた練習場の隣の、なんの覆いもしていない場所に、林彰洋がエンヴェル・ルグシッチ新GKコーチたちとともにやってきた。ルグシッチコーチはつきっきりで林を指導する。

他の選手はおそらく11人対11人の紅白戦形式でUAE戦に備えているのだろう。その隣で林だけが、報道陣が見ていいものかどうか迷いながら時折横を通っていく中、1人黙々とコーチの言う指示を聞き続けていた。

この「特別扱い」は何を意味するのか。

練習後、林に「特訓」について聞いてみると、「いつもです」とお茶を濁した。GKコーチがつきっきりだったことを指摘すると、「新たなことを言われているというより、昔から言われていることを今も継続してやっているという感じです」と言う。これまで日本代表に来て指摘されたことを、今回も練習したということだろう。

その後、話をしていても林には明らかに元気がなかった。2015年11月、アウェイのカンボジア戦で出場できそうだと思っていたときの勢いはない。この日、全体の練習に参加できなかったことで、林は絶望感を持ってしまったかもしれない。

林が日本代表に召集されるようになって今年で9年。だがまだキャップを手にしたことはない。今回の試合では招集された選手のうち、1人だけベンチ外になる。林は自分がその立場だと感じてしまったのかもしれない。

だが、林は「自分で自分のよさをわかっている」という。そして「これまで見てもらえなかった自分のプレーを見てもらったという実感は持っている」と語った。1人だけ多くの目にさらされる事態になっても、報道陣の前に立ち止まり丁寧に質問に答える。この日一番辛かったのは林だったことだろう。9年間、この折れていない心は間違いなく日本代表に必要なはずだ。話し終えると林は最後に笑顔を作った。

【日本蹴球合同会社/森雅史】