三つ巴の戦いか!? 左上:『ファインディング・ドリー』、右上『君の名は。』、下『シン・ゴジラ』 (C) 2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved. (C)2016「君の名は。」製作委員会 (C) 2016 TOHO CO.,LTD.

写真拡大

【興収レポート】8月の映画興収1位は『ペット』

7月29日から公開の『シン・ゴジラ』が大ヒット中だ。8月28日時点の興収は53億円で、夏映画では『ファインディング・ドリー』に次ぐ2位の興行成績。9月に入ってからも好調を維持できれば『ドリー』を上回る可能性も十分だ。

『ファインディング・ドリー』興収60億円突破!バリアフリー上映も決定

大ヒットの大きな要因が脚本と総監督を務める庵野秀明。ゴジラファンの40代から60代の男性に加え、『エヴァンゲリオン』ファンの20代30代の男女を取り込み、客層が広がった。これまでのゴジラは1作目を除き、登場人物はゴジラの存在を知っていた。今作は誰もゴジラを知らない設定だ。「観客にもゴジラを初めて見る驚きを感じてほしい」という庵野監督の強いこだわりから、宣伝でも情報を隠す戦略を取った。これが観客の飢餓感をあおり、公開後にSNSで作品の評判が広がった。

宣伝では改めてゴジラの認知度を上げることに注力。「ゴジラ対エヴァンゲリオン」ビジュアルを使用したクリアファイルを特典とする劇場前売券を発売したり、公式LINEスタンプを作成した。さらにセブンイレブンやパルコ、スターフライヤーなど大手企業のほか、地方企業とも数多くタイアップを実施した。 

8月公開作の1位は『ペット』。15年に大ヒットした『ミニオンズ』のイルミネーションが製作したCGアニメーション。ペットの日常の裏側を描く題材や日本人もかわいいと思えるキャラクターになっていることから「大化けしそうな作品」と期待する声が多かったが、その期待に応えた。ファミリー客から20代30代女性まで幅広く集客している。日本語吹き替えを担当したバナナマンの2人と佐藤栞が宣伝に協力、メディア露出につなげた。

2位は『ジャングル・ブック』。“ファミリー層に安心のブランド”ディズニー作品で、全世界で9億5000万ドルを超える大ヒットの実績がある。動物はすべてCGで子役や監督も有名ではないため、日本語吹き替え版の出演者が宣伝にフル稼働。松本幸四郎、西田敏行、宮沢りえ、伊勢谷友介が監督と子役が来日した際に催された歌舞伎座でのジャパンプレミアに参加したり、公開直前の特別上映会に出席してPRに務めた。

3位は『君の名は。』。8月26日からの公開だったが、初日3日間だけで興収12.8億円をあげる大ヒットスタートを切っている。配給元の東宝は「最終興収60億円を見込める」と発表している。すれ違う男女の物語を、精緻な風景描写と繊細な言葉によってつむぎ出し、国内外から注目を集める新海誠監督は“ポスト細田守”と目されている。前作『言の葉の庭』(13年)はロングラン上映されたが、総興収でいえば“限定的ヒット”。今作が初の全国規模での大ヒットとなった。(文:相良智弘/フリーライター)

[8月公開作ランキング]
1位『ペット』31.5億円
2位『ジャングル・ブック』17.8億円
3位『君の名は。』12.8億円
※『シン・ゴジラ』53億円
(8月29日時点。ムビコレ調べ)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。