【疑問】なぜスポーツマフラーは音が大きいのか

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排気効率のいいマフラーほど消音効果が小さい

自動車用のマフラーというのは、日本語でいえば消音器。つまり、排気ガスの温度と圧力を下げ、エンジン内の爆発音=排気音を小さくするためのパーツ。このマフラーには、大きく分けて、多段膨張型(隔壁型)とストレート型の2種類があり、純正マフラーは前者が主流。スポーツマフラーは後者が多い。

多段膨張型(隔壁型)は、メインサイレンサー、いわゆるタイコ内に、仕切り板を設け、いくつかの空気室を設け、排気ガスをそれらの小部屋を数度にわたり出入りさせることで、膨張や圧力波の干渉を繰り返させることで、排気ガスの圧力を弱め、消音させるシステム。

低コストで消音効果が高く、耐久性も割と良好なので、純正マフラー向き。しかし、排気ガスの流路が、迷路のように複雑なので、排気効率が悪く、抜けが悪いのがデメリット。排気ガスの抜けが悪いと、エンジンの空気の吸う力が弱くなるので、エンジンパワーを出すのには不利。

一方、ストレート型は、タイコのなかにたくさんの穴の開いた真っ直ぐなパイプを通し、そのパンチングパイプの周囲に、グラスウールや、ステンレスウールなどの吸音素材を充填させ、音=震動エネルギーを、熱エネルギーなどに変換する仕組みになっている。

真っ直ぐなのでパワーアップには適しているが、長期間使っているとグラスウールなどの吸音材が少しずつちぎれてなくなっていき、経年劣化で音が大きくなっていったり、新品のうちでも低い音を消音するのは得意ではない。そのため、アフターパーツのマフラーでも、タイコ内のパイプを、メインパイプより細く絞って、消音を優先しているものもある。

いずれにせよ、音や圧力もエネルギーなので、これを小さくしようとすれば、エンジンが発するエネルギー=パワーはスポイルされる。つまりパワーを第一に考えると、消音のために抵抗のない、いわゆる「直管マフラー」がベストとなるので悩ましい。

排気効率が良いだけでは低回転時のピックアップが悪くなる

また、エンジンから出る排気ガスの量は、回転数に比例し、アイドリングが1000回転だとしたら、5000回転のときはその5倍、8000回転ならその8倍の排気ガスがマフラーのなかを通過することになる(同一の単位時間内の流量)。

そのため、高効率の抜けのいいマフラーだと、高回転では気持ちよくエンジンがまわるが低回転ではスカスカになりピックアップが悪く、逆に純正マフラーだと、低回転のレスポンスはいいが高回転になるとふんづまり気味で、伸びの悪い出力特性に……。

ときどき軽自動車やワゴンなど、比較的ローパワーなクルマに消音効果の低いマフラーをつけて、“ボーボー”と大きな音を出しつつ加速が鈍いクルマを見かけるが、それは排気ガスの流量に対しマフラーの抜けがよすぎる例といってもいい。

というわけで、マフラーの設計はどこの回転域に重きを置くかでも変わってきて、じつはなかなか奥が深い。

ただし、可変バルブタイミング機構付きのエンジンだと、任意にバルタイを変化させられるので、高効率の抜けのいいマフラーをつけても、低回転域のトルクが細くなるようなことがない。そういう意味で、可変バルタイの登場はマフラーのセッティング面では革命的といってもいいだろう。

とはいえ、最近はますます音量規制も厳しくなってきているし、ユーザー自身も、スポーツマフラーといえど、静かなマフラーを望む人が増えている。そこで、マフラーメーカー各社も、太いストレート系のパイプで排気効率を追求しながら、タイコ自体を大きくしたり、サイレンサーの構造自体を新たに工夫を凝らして消音効果を高め、さらにはチタンなどを使うことで、軽量化も狙える高機能マフラーを次々に開発している。

音質はスポーティー、音量は控えめ、パワー&レスポンスは良好というのが、今後のアフターパーツのスポーツマフラーの主流になるはずだ。

(文:藤田竜太)