リオデジャネイロオリンピックが閉幕し、日本はいよいよ4年後の「東京」を目指すことになる

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リオデジャネイロオリンピックが閉幕し、日本はいよいよ4年後の「東京」を目指すことになる。しかし、日本人、特に東京都民にとって気がかりなのは、膨張に歯止めがかからないオリンピック予算だろう。

当初は約7340億円とされていた総予算は、今や2兆円とも3兆円ともいわれている。なんでそうなってしまうのか?

これに関して都庁やゼネコン、スポーツ行政を管轄する文部科学省らが口をそろえて訴えるのが、人件費や建築資材の高騰である。しかし、1割や2割なら理解もできるが、人件費や物価が数倍になったなんていう事実はどこにもない。なんでこんな大ウソを、公的な機関が堂々と言えてしまうのか?

証言してくれたのは、東京都庁の幹部職員T氏だ。彼によると、当初予算の見積額からして、かなり杜撰(ずさん)なものだったという。

「東京オリンピックの招致が決まった頃は、猪瀬(直樹)さんが知事で、競技エリアの規模も予算もコンパクトなオリンピックを目指していたので、部下である私たちもそれを目指してはいました。しかし、50年前の東京オリンピックの運営を知る職員が今いるはずもなく、われわれのノウハウでは正確な見積もりなんて不可能だというのが実態なんです」

では、なんとなく出した見積額だった?

「残念ながら否定はできません。東京都は普段から公共事業を手がけておりますので、建築物によってだいたいの額はわかります。そんなアバウトな額を積み上げた合計額を、少し下方修正したのが当初の見積額です」(T氏)

なぜ下方修正したのか?

「猪瀬さんの意向もありましたし、少しでも低額なほうが都議会で採決されやすいという事情もあるからです。あまりに高額になってしまうと、都民からの反発が起こるのではと、都議の方々が気になさるんです」(T氏)

これについては、保守系の某都議会議員も非を認める。

「国も地方自治体も同じなのですが、役所が出す概算の予算案を議会が否決するなんてことは基本的にないんです。公共事業系の予算案の中身が正しいのか間違っているのか、建築や設計の専門家でもない議員にわかるはずもない。ですから東京オリンピックの予算について、都議会がまったくチェック機能を果たせていないことは事実です。

それだけでなく、当初の見積額よりも、最終的に総予算が膨張するであろうこともまた、都議の大半が経験上知っていたと思います」

どういうことなのか?

「そういうものだと理解しているからというしかない。当初の予算よりも安くなるという前例を見たことがありませんから」(都議)

新たに就任した小池百合子都知事は予算の削減を謳っているが、取材を進めると、削減どころかさらに膨張する可能性すら見えてきた。霞が関だけではない、都庁OBの天下りが生み出すズブズブの利権構造や聞こえのいい『安全』とか『アスリートファースト』というキーワードを利用して大儲けしたい「悪い奴ら」で占められる東京五輪事業。その実態については、発売中の週刊プレイボーイ37号で掘り下げたので、ぜひご覧いただきたい。

(取材・文/菅沼 慶 写真/JMPA)

■『週刊プレイボーイ』37号「東京オリンピック予算をまだまだ膨張させたい悪〜い奴ら」より