順天堂大学医学部附属浦安病院先任准教授 辻村晃氏

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美容医療に関するトラブルといえば女性からの相談が多いと思いがちだ。

しかし、国民生活センターが、2016年6月23日に過去5年間で男性から寄せられた相談2131件中、半数以上の1092件を占める美容医療トラブルについて注意喚起をおこなった。そのトラブルとは、「包茎手術」だ。

そもそも包茎手術は不要?

国民生活センターによると、包茎手術に関するトラブルの内容は、契約や解約に関する相談が 758 件と最も多く、次いで価格、料金に関する相談が 711 件、品質や安全、衛生に関する相談が 218 件となっている。

中には危害事例もあり、「施術部分が裂けた」「出血が続く、大量に出血した」「組織が壊死した」という症状勃起障害、射精障害などの性機能障害となってしまったという例も見られる。

そもそも「包茎手術」は必要なのか。文化や宗教的な理由で、新生児や幼児に「割礼」として包茎手術をおこなう国も少なくないが、ここでは医学的な意味を考えてみたい。

男ならほとんどの人が知っているだろうが、「包茎」とは、陰茎の亀頭が包皮で覆われたままの状態を指す。程度の違いこそあるものの、思春期を過ぎたころから包皮は手で簡単に向ける状態となる。

このとき、勃起しても包皮を手でむくことができない「真性包茎」や、包皮をむくことはできるものの、口の部分が狭く亀頭が強く締め付けられてしまう「カントン包茎」は、包皮炎などの感染を引き起こすリスクが高く、排尿が困難になる可能性もあり、保険診療による包茎手術の対象となる。医学的に治療が必要な包茎であるとみなされるためだ。

これに対し、勃起時に包皮が手で簡単にむけたり 自然と亀頭が露出する「仮性包茎」は、本来手術は必要ない。

もちろん、入浴時に包皮と亀頭との間を丁寧に洗うといった最低限のケアは必要だが、「排尿や性行為に問題がなければ治療しなくても問題ない」と、男性医療の専門家であり、泌尿器科医である順天堂大学医学部附属浦安病院の辻村晃医師は言う。

コンプレックスや不安を煽り高額請求

仮性包茎であっても包皮をむくと皮膚の裂傷を伴うようなものは保険診療で対応できる場合もあるが、基本的に見栄えよくするために余っている包皮を切除するという手術は美容医療であり、保険診療外になる。辻村医師によると「自費診療でも、一般的な泌尿器科なら5〜10万円程度」だという。

しかし、国民生活センターの事例によると、実際の契約購入金額は50〜100万円以下が最も多く、次いで100〜150 万円以下となっており、高額請求が大半だ。

「仮性包茎は女性に印象が悪い、衛生状態に問題があり病気になるなどと不安を煽り、高額な医療費をとろうとする悪質なクリニックがあるのは事実です」(辻村医師)

実際、国民生活センターの調査でも、仮性包茎の人が手術を受けた理由は「包茎のままだと自信が持てないと思った」「異性に包茎だと思われるのが恥ずかしいから」「性交時にお互いが十分な刺激を得られないと思ったから」「早漏の原因だと思った」など性機能やコンプレックスと思われる理由が多くなっている。
「仮性包茎に性機能上の問題はなく、治療の必要はありません。まして、コンプレックスをもつべきものでもありません」(辻村医師)

手術を受けたことで不具合を感じる人も少なくない

しかも、きちんとした包茎手術を受けても、「感覚が今まで違う」「形が想像していたものと違う」など、術後に満足な結果を得られないケースは少なくない。
「包茎に限らず男性器についてはナーバスになりがちなので、ちょっとしたことでも満足感が得られないのです」(辻村医師)

国民生活センターが実際に包茎手術を受けた150人に実施したアンケートでも、半数弱の42%にあたる63人が「施術後に何らかの不安・不満、不具合を感じている」と回答しており、「施術部の痛み」「施術部の皮膚の裂け」といった手術の稚拙さに起因するものや、「排尿障害」「感触の違和感」など機能に関する問題もある。

20代の男性は「2週間経つが術後の傷口がぱっくり割れてしまい、また、引きつれ感があり、陰茎部分が何も感じなくなってしまった」と、恐ろしい回答をしている。

同センターはトラブル回避のために、即日契約、即日施術をすすめるクリニックは利用しない、効果や必要性について十分に説明を受けていない施術はしない、といった注意をおこなっている。

コンプレックスがある、どうしても気になって仕方がない、という人も、まずは泌尿器科専門医の診察を受けるべきだろう。

[監修:辻村晃 順天堂大学医学部附属浦安病院先任准教授]

(Aging Style)