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「暴力団の組事務所として建物を使ったら、1日あたり100万円支払え」。神奈川県厚木市で、暴力団の組事務所として使われていた建物の周辺住民が、山口組系の暴力団組員に対して、このように求めていた裁判で、東京高裁(中西茂裁判長)は8月10日、住民の訴えを認める決定を出した。

報道によると、問題となったのは、厚木市妻田東2丁目にある建物で、かつて山口組系の組事務所として使われていた。2002年には発砲で組員1人が死亡する事件が起き、2003年には、横浜地裁小田原支部が、組事務所として使わせない仮処分決定を出していた。

ところが、2016年2月に、2トントラックがこの建物に突入。この事件が、山口組と神戸山口組の分裂に関連している疑いが浮上した。そのため、住民たちが仮処分決定が守られていないとして、裁判を起こしたのだという。

一審判決では、住民の訴えの一部のみ認めたが、東京高裁は全面的に認め、組員が建物に立ち入ったり、銃器の保存場所として使ったりすることを禁じ、違反した場合には1日あたり100万円を支払うよう命じた。

こうした判決は「間接強制」という手法のようだが、どういった意義があるのだろうか。福村武雄弁護士に聞いた。

●心理的な圧迫を加えて、履行の強制を促す

「『間接強制』とは、金銭の支払を命じるなど、一定の不利益を課すことにより心理的に圧迫し、間接的に義務の履行を強制する方法です。これに対して、債務者の財産を直接取り立てることを『直接強制』といいます」

福村弁護士はこのように述べる。間接強制にはどのような意義があるのか。

「子どもとの面会交流の約束を守らない元配偶者に対して、間接強制が認められた例があります。このケースでは、裁判所が直接子どもを家から連れ出して会わせるという直接強制ができないため、金銭の支払いという間接強制を認めました。

このように間接強制には、直接強制に適さないような事案に対して金銭請求により間接的に目的達成を図ろうとする制度なのです。

ただし、間接強制の制度は万能ではありません。

本件でも被告となった組員らが資力を持たない場合には、金銭の回収が困難ですし、明け渡しを間接的に促す効果は低いでしょう」

建物の使用を禁止するような手立てはないのだろうか。

「建物を暴力団が所有している場合、賃貸物件のように賃貸借契約を解除して明け渡し請求をすることはできません。

しかし、本件のように地域住民の安全に生活するという人格権を侵害していると認められるような場合には、組事務所使用禁止の仮処分の申請が認められる場合があります。

暴力団がその仮処分に従わない場合には、最終的に組事務所使用禁止の判決に基づいて、執行官による事務所閉鎖の強制執行が認められる可能性もあります。

ただし、現行法ではどのような方法をとっても市民個人が原告となることになり、暴力団からの心理的圧力若しくは直接的な暴力の犠牲になる可能性は否定できません。

国や地方自治体の長が原告となって暴力団を排除する訴えを起こせるように法改正することも検討すべきだと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
福村 武雄(ふくむら・たけお)弁護士
平成13年(2001年)弁護士登録、あすか法律事務所所長
関東弁護士連合会・消費者問題対策委員会元副委員長、埼玉弁護士会消費者問題対策委員会元委員長、安愚楽牧場被害対策埼玉弁護団団長
事務所名:あすか法律事務所
事務所URL:http://www.asukalo.com