国家戦略として高速鉄道の輸出に力を入れてきた中国は、これまで複数の国で受注に成功してきた。だが、輸出事業が順調と呼ぶには程遠い状況で、メキシコに続いて米国での計画も白紙になった。米国のプロジェクトに関しては、先進国への輸出ということで中国も力を入れていたが、白紙になったことの落胆と怒りは大きかったはずだ。(イメージ写真提供:123RF)

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 国家戦略として高速鉄道の輸出に力を入れてきた中国は、これまで複数の国で受注に成功してきた。だが、輸出事業が順調と呼ぶには程遠い状況で、メキシコに続いて米国での計画も白紙になった。米国のプロジェクトに関しては、先進国への輸出ということで中国も力を入れていたが、白紙になったことの落胆と怒りは大きかったはずだ。

 米国企業が中国側との提携解消を発表し、中国側にとっては米国進出が水の泡となったことについて、中国メディアの捜狐は25日、米企業側の一方的な発表を「無責任な契約違反」だと怒りをにじませつつ、なぜ米国が中国の高速鉄道を放棄したのか、中国はそれをどう受け止めるべきかを考察する記事を掲載した。

 記事は、米国企業が提携解消に動いた背景には、高速鉄道の建設後にメンテナンスなどすべて中国に頼らざるを得なくなる中国式のビジネスモデルを嫌ったこと、さらに政治的要因も関係しているはずだと考察したほか、中国高速鉄道の衝突事故も今なお暗い影を引きずっていることを指摘。中国では事故後に車体を埋めればそれで済むかも知れないが、米国で同じことをしたら国会や世論が黙っていないということだ。結局のところ「メード・イン・チャイナの評判が良くないこと」が問題だったと論じた。

 ほかにも米国には高速鉄道に対する切迫したニーズがないことや、超高速、安全、エコ、しかも安価だという次世代高速鉄道「ハイパーループ」構想があることも要因として列挙。しかし記事は、今回の白紙撤回は残念ではあるものの、今は忍耐の時であり、50年、500年かかるかも知れないが「真面目にコツコツ、世界レベルでの信頼を勝ち取ることが先決だ」と説いた。

 記事が指摘しているように、2011年に中国が高速鉄道事故後にみせた「車両を埋める」という荒業には日本をはじめ世界が唖然とした。実際、高速鉄道の事故はフランスやドイツでも起きており、死亡事故のない日本のほうが異例であって、ましてや運用し始めて間もない中国が事故を起こしても不思議ではなかった。しかし、あの事故後の中国の処理方法が世界にマイナスイメージを与えたことは否めず、今後もそのイメージを引きずることになるのかもしれない。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)