リオ五輪を経ても、代表メンバーにほとんど変化は起きなかった。そのU−23チームから、UAE戦とタイ戦を戦う日本代表のメンバーに招集されたのは、浅野拓磨と大島僚太、そして、怪我で不参加者が出たため追加になった遠藤航の計3人。順当と言えば順当。だが、世界の平均に比べて高齢化が著しい代表の現状を踏まえると、人数的に物足りない。リオ五輪の騒ぎが空しく見える。
 
 有能な若手選手の不足。日本の問題点を見る気がする。今回の予選、突破の確率は、これまでの予選より低い。危険水域に迫っていると見るが、うまく突破できても、2年後の本大会は苦しい。次の2022年W杯予選は、いよいよ危なくなる。
 
 塩谷、藤春、興梠。オーバーエイジで出場した3人も選に漏れた。中でも藤春は、これまでコンスタントに選ばれていた選手だ。ハリルホジッチがそのリオ五輪でのプレイぶりに好感を抱かなかったものと考えられる。追加招集になったとはいえ遠藤も、そのクチかも知れない。五輪で3試合にフル出場を果たしたチームの主将。A代表にも藤春同様、これまでコンスタントに選ばれてきた。浅野、大島より高いプライオリティだったはずだが、少し評価を下げた恰好だ。

 リオ五輪の成果は少なかった。ハリルホジッチの目にはそう映ったと思われる。手倉森ジャパンへの最も正当な評価と言っていい。強化を担当する協会のスタッフにとって、これは少しも好ましい話ではない。協会の仕事に低評価が下されたことになるからだ。
 
 順調に昇格したのはわずかに2人。浅野と大島。数少ない期待の2人だが、この両者、サッカー選手としてのタイプは真反対だ。
 
 浅野の一番の武器はスピード。50mを5秒台で走るという快足だ。「相手の裏に走り込むプレイが自分の武器」とは、本人の言葉だが、スピードを最大の拠り所に、真のスター選手になり得た例は少ない。
 
 体型から連想するのは、アーセナルのウォルコットだ。2006年5月、17歳と35日でイングランド代表デビューを果たし、直後に開催されたドイツW杯にもメンバー入り。ルーニーの代表デビューより早かったことから、当時大きな話題を呼んだ。だが、23歳で迎えたユーロ2012には代表メンバーに招集されたが、25歳で迎えた2014年W杯では落選。ユーロ2016もしかりだ。所属のアーセナルでは出場しているが、すっかりインターナショナルな選手ではなくなっている。スピードは鈍っていないにもかかわらず。総合的な伸び率が鈍った。一言でいえばそうなる。スピード以外の要素を伸ばすことができなかった。何事もスピードで解決しようとしたばっかりにだと見る。
 
 背番号14をウォルコットに引き継ぐ形でアーセナルからバルサへ移籍したアンリもスピード満点の選手だった。だが、彼は選手のレベルという点で、ウォルコットを大きく上回っていた。スピードにも恵まれていたが、そればっかりではなかった。シュートの巧さ、キック力、相手の逆を突くドリブル、切り返しの深いフェイント……スピードスターと呼ぶにはあまりにも総合力に優れる、まさにバロンドール級のアタッカーだった。

 浅野は現在21歳ながら、彼の魅力からスピードを除けば残るものが少なそうなタイプだ。

 ロッベンのようなドリブルもない。ロッベンも走れば10秒台だそうだが、ドリブルさせてもほぼ同じぐらいのスピードで前進する。蹴って走るドリブルではない。一歩一歩、足に吸い付くようなドリブルをしながら、だ。切り返してシュートにも天下一品の芸当を誇る。100mを10秒台で走ることを、一番の魅力にしていないところに、スター選手たる所以を見る。

 浅野を見ていると、僕はその将来がいささか心配になる。浅野がスピード自慢ではなくなる日は訪れるのか。「なおかつ、足も速い」選手になれないと、日本代表の中心的なFWを長く張ることはできない。