『短時間で「完全集中」するメソッド』(佐々木正悟著、大和書房)の著者は、20代後半から30代にかけてアメリカに留学し、実験心理学を専攻してきたという心理学ジャーナリスト。

その際、「ブラック・ルーム」という無音で真っ黒な部屋に被験者を閉じ込め、自分にお好きなことを徹底的に考えてもらうという実験をしてみたことがあるのだそうです。

その結果としてわかったのは、どんな人でも、その気になればわずか1分で極端な集中状態に入ることができるということだったのだとか。

そこで本書においても、「ブラック・ルームほど大がかりではないけれど、しかし『たった1分』で自分を変えられる集中法」を紹介しています。

■まずは1分だけ集中してみるべし

この話題について語るにあたり、著者は、ある瞑想の指導者が「1分間瞑想法」というものを提唱したときのエピソードを引き合いに出しています。

いうまでもなく「1分間だけ瞑想してみましょう」ということで、それだけでも効果があるというのです。

しかし当然のことながら、彼のセミナー参加者からは「たった1分の瞑想で効果があるわけがない」という疑問が出たのだといいます。

すると、その瞑想の指導者は、次のような説明をしたのだそうです。

「瞑想の習慣を持っていない人に対して、『毎日30分、1時間瞑想しましょう』といったところで、そんな習慣はつきっこない。だったら、全然やらないよりは、1分間でも毎日やったほうがいい」

このエピソードを通して著者が訴えようとしているのは、「瞑想をしない人は、『瞑想なんて、たいして意味がない』と思っていること。そして、同じことが「集中」にもいえるというのです。

つまり「集中力」も、くだらないと思われがちなのです。だからこそ、「1分間だけ」集中してみることをおすすめしたいというわけです。

1分間だけであれば、その内容がどうであれ、集中することはさほど難しくはないはず。しかも、特別な技能やツールも必要ないわけです。

たとえ1分だけでも、毎日「集中しよう」と思って実践するなら、そこには大きな意味があるということです。

■次は1分プラスして2分集中する

さて、「1分だけ集中する方法」に続き、本書では集中を続ける時間を2分にしてみることも心がけてみようと提案しています。

そして、ここで興味深い指標として紹介されているのが、ブログやオンラインマガジンを「文章を読ませたい」と思っている人たちが調べている「直帰率と滞在時間」。

読者はそれらの文章を読むか読まないかを一瞬で判断し、わずかな時間を割いて情報を汲み取っていくということです。

しかしじっくり読んでいる時間はないので、約8割の人は一瞬記事を眺めただけで読まずに他へ移動してしまうもの。

これが直帰率ですが、直帰率はよくても70%、悪ければ90%を超えるというのです。つまり大半の人は、インターネット使用時に集中などしていないわけです。

■直帰率と平均滞在時間が示すもの

では、直帰しなかった人は、どのくらいの間、文章を読んでくれるのでしょうか?

これは、「平均滞在時間」で計ることができるといいます。具体的には、1記事につき2分読まれれば「非常によい」といわれているというのです。

インターネットは比較的新しい技術環境ですが、人間の自然な欲求をかなり満たしてくれるものでもあると著者はいいます。

私たちは、よほど自分にマッチしたものでない限り、自然に集中して取り組んだりはしない。

そのことを、「直帰率と平均滞在時間」という統計が教えてくれるということ。

そして、それはおそらく新聞や雑誌についても同じだろうと著者は推測しています。

■2分間だけ集中することに価値が

しかし、そこで重要な意味を持つのが「2分間」です。

つまり逆にいえば、2分間だけ同じものに集中していられるのであれば、それは「集中力が持続している」と考えることができるわけです。

著者が「1分間」と同時に「2分間」にもこだわるのは、そんな理由があるからです。

なんに対しても一瞬でどんどん目移りしてしまう習慣になんとか歯止めをかけ、「2分間だけ」集中して読んだり書いたりすることができるのであれば、それが意味を持つということ。

集中力に関してはそこから一段階、新しいゾーンに踏み込むことができるというわけです。

本書で著者がその重要性を強調しているのは、「時間を忘れるほど没頭してしまうこと」の意味。

そこにはたしかに、短時間で完全集中するためのヒントがありそうです。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※佐々木正悟(2016)『短時間で「完全集中」するメソッド』大和書房