先日、伊藤忠に空売りを仕掛けた後にレポートでこき下ろし、値下がりを誘って利益を得る米国ファンド「グラウカス」について取り上げましたが、早くも“その次”が現れました。今度は「シトロンリサーチ」なる空売りファンドが、サイバーダイン(7779)を”UNKO(うんこ)”と売り煽ったのです。このレポートが出て同社の株価は大幅に下落、彼らの思うつぼになっています。

サイバーダインの適正株価は300円!?
間違いだらけのお粗末なレポート

 ロサンゼルスに本拠を置く「シトロン・リサーチ」(以下、シトロン)なる空売りファンドが8月15日、ロボット技術の新興企業・サイバーダインの売り推奨レポートを出しました。それによりサイバーダインの株価は2077円→1558円と25%も下落、時価総額は713億円も減少(8月23日)しました。

 レポートには「サイバーダインは世界で最も途方もなく低価な株券です」「サイバーダインの時価総額は4億ドル(闇株新聞注・これは40億ドルの間違い)を超えました」さらには「UNKO うんこ」のイラストなど、攻撃的な文言が踊っています。ちなみに目標株価は300円だそうです。

 このレポートは外国人が書いたものを金融知識の乏しい人物が翻訳したようで、珍妙な表現や間違いも多く、ろくにチェックもできていないお粗末なものです。しかし、これ以上にお粗末なのがサイバーダインの経営状況でした。

大赤字でも株価は理解不能なほど高い
サイバーダインは「錬金術の勝ち組」

 サイバーダインの2016年3月期通年決算は売上高12億6400万円、営業損益12億9200万円の赤字(売上より赤字が大きい)、最終損益7億1800万円の赤字と惨憺たるものです。

 それでも公募増資や第三者割当増資や新株予約権付社債の連発で、2016年3月末現在で純資産270億円、現預金145億円を抱えています。まさに「株式市場を使った錬金術の大いなる勝ち組企業」です(もちろん皮肉です)。

 さらに驚くべきことに、社長の山海嘉之氏がほとんどを保有する優先株(非上場で議決権が普通株の10倍もある)が約7770万株もあり、これを普通株と等価で計算しても時価総額は8月15日時点で4465億円(44億ドル)もあったことになります。

 要するにサイバーダインは「夢物語の事業モデルで株価が説明できないほど高い新興市場によくある企業」なわけですが、時価総額と流動性がそれなりにあり、かつ海外株主が多い(発行済普通株の10%以上、1500万株ほど)ため、貸株調達の容易さから空売りファンドに狙われたと考えられます。

(解説)海外投資家が空売りを仕掛けるときは必ず海外で貸株を調達するため、日証金や東証発表の信用残には現れません。新興企業の多くは海外株主がほとんどおらず、貸株の調達が空売りファンドとって1つのハードルであるはずです。

シトロンの成功を見て空売りファンドが
大挙して日本市場に押し寄せる!

 先日も「グラウカス」が、伊藤忠(8001)の不正会計疑惑を自社レポートで“暴露”するという同様の手口で物議をかもしたばかりです。

参考記事:空売り投資家「グラウカス」が日本上陸。伊藤忠(8001)は第2の東芝事件になるか!? (2016年8月5日公開)

 ただ、あちらは会計上の考え方の違いをとらえて売り煽っただけで、市場参加者も伊藤忠も冷静に対応すべきものでした。事実、株価も一時10%程度下落しただけで、現在はかなり落ち着きを取り戻しています。

 ところが、シトロンがサイバーダインを狙った今回の事例は、空売りファンドを大儲けさせ、さらに戦線を拡大させてしまう恐れがあります。シトロンの成功を見て、まだ日本に上陸していない著名な空売りファンドが大挙して押し寄せて来そうです。

 新興市場には他にも「説明できないほど株価が高い企業」がごまんとありますし、狙いは流動性も貸株も豊富な大型有名企業にも向くでしょう。最近は低迷する日本経済や企業業績に比べ割高に見える銘柄も少なくないため、軒並み荒稼ぎされてしまう予感がしています。

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