『空想科学を最新科学で解いてみた!!』(科学雑学研究倶楽部/学研プラス)

写真拡大

 富士ゼロックス株式会社は、数年前より複数の中小企業と連携して、『ドラえもん』の「ひみつ道具」を現実に作ることにチャレンジする「四次元ポケットプロジェクト」というものに取り組んでおり、実物大のガンダムを動かすことを目標に設立された『一般社団法人ガンダムGLOBAL CHALLENGE』は、今年の秋に基本プランを発表すると広報している。

 子供の頃に漫画やアニメなどの洗礼を受けた人が、最先端科学の分野で活躍しているのも珍しくなくなったからか、あるいは投資する側にも同様の人がいるおかげなのか、この手のプロジェクトが次々と立ち上がってきていて、ワクワクせずにはいられない。『空想科学を最新科学で解いてみた!!』(科学雑学研究倶楽部/学研プラス)は、そんな空想科学が実現する可能性を、最新科学に基づいて検証している。

 現実が空想に追いついてきた物としては、レーザー兵器がある。アメリカ海軍が2014年12月に、「艦船に搭載したレーザー兵器の発射実験に成功した」と発表しており、2020年代には実戦配備する計画だそうだ。ただし、私たちがイメージするような、まばゆい光線が飛んでいくというようなものではなく、目に見えない波長の光線による攻撃となるらしい。そのため、攻撃される側は「なんの前触れもなく」やられてしまうことになる。現在はまだ、射程が短いうえ天候などに左右されてしまうが、コストがミサイル兵器に比べると安く、なによりも目視できないことから、心理的なパニックを引き起こすことでの有効性が考えられるという。

 レーザー兵器が実用化目前だとすれば、その対極にあるのは物質転送装置かもしれない。SF作品の『スタートレック』で、母艦であるエンタープライズ号と惑星などの間を瞬間移動する装置として出てくるが、その原理は人間や物質を「分解し、それをビームに乗せて目的地まで移動させる」というものである。これを科学的に検証すると、量子力学の分野では「情報は転送できる」とされているものの、物質を分子レベルや量子レベルに分解する方法も、それを再構成する方法も「まだ理論さえ登場していない」ため、一応の理論が複数考えられている「タイムトラベルよりも難しい」そうだ。本書では、『ドラえもん』の「どこでもドア」のような装置のほうが理想だとしている。

 できそうで案外と難しいのではと予想されているのが、宇宙空間での人型ロボットの運用だ。『機動戦士ガンダム』ではファンが考え、のちに公式設定に採用された「AMBACシステム」というものがある。手足を動かすことにより推進剤の消費を抑える姿勢制御の方法で、作中のロボットに手足がある理由付けとした。しかし、地上では地面の方向に重力があることを想定して姿勢制御をすればよいのに対して、無重力状態では腕を動かすだけで体が反作用によって向きを変えてしまうため、結局は小型の噴射口をつけるなどで対応せざるをえず、複数の駆動部を同時に動かすとなれば複雑な計算が必要になるという。

 この問題は、本書の別の項目で取り上げられている人工知能研究者レイ・カーツワイルの予測「2045年にコンピューターの知能が、全人類を上回る」というのが現実になれば、解決するのかもしれない。しかし、そんなコンピューターを開発すると、人間が不要な未来になってしまう可能性もある。いやいや、知能が上回っても人間より優秀とは限るまい。ドラえもんのような、ロボットと友達になれる未来もあるだろう。本書の「はじめに」で述べられている、「研究を続ける科学者たちの努力」に期待したい。

文=清水銀嶺