今日8月29日は、名画『カサブランカ』(1942年)、『誰が為に鐘は鳴る』(1943年)で主演を演じたイングリッド・バーグマンが亡くなった日。
実はイングリッド・バーグマンは、1915年8月29日に生まれ、1982年8月29日に満67歳で亡くなった「生没同日」者なのです。
この「生没同日」は、生まれた日と亡くなった日が同じ日であることを示す語ですが、今日がイングリッド・バーグマンの生没同日日にちなみ、日本の歴史上において最も有名な生没同日者に着目します。

高知県を代表する景勝地・桂浜の龍頭岬に立つ坂本龍馬像


「生没同日」ファイル01/イングリッド・バーグマン

●8月29日生没のイングリッド・バーグマン
1915年に生まれ、華々しい活躍後に満67歳で1982年に亡くなったイングリッド・バーグマンは、誕生日も亡くなった日も8月29日。
スウェーデンのストックホルムに生まれた彼女は、国内で活躍後に24歳でハリウッドに進出。
当初は、英語が話せない、背が高すぎる、名前がドイツ風、眉も太すぎる……と言われながらも、一躍人気女優に。
代表作でありハンフリー・ボガートと共演した『カサブランカ』(1942年)の作中でハンフリー・ボガートが発した「君の瞳に乾杯」の名セリフでは、映画史上において非常に有名ですね。
そして1943年、自身初のカラー映画作品となる『誰が為に鐘は鳴る』にマリア役で出演。本作で初めてアカデミー主演女優賞にノミネートされ、翌年の『ガス燈』でアカデミー主演女優賞を受賞。美貌のみならず凛としたそのオーラに世界が熱狂する中、バーグマンはこのような言葉を残しています。
【人々は私にジャンヌ・ダルクを重ね合わせ、聖女のような人物だと思っていました。そうではないのです。私はただの女、普通の人間なのです。(ウィキペディアより)】
晩年は乳がんと闘い、ロンドンで死去。現在は生まれ故郷のストックホルム北霊園に墓石が立っています。

イングリッド・バーグマン

イングリッド・バーグマン


「生没同日」ファイル02/突出した人気を誇る坂本龍馬

●11月15日生没の坂本龍馬
言わずと知れた坂本龍馬は、幕末を駆け抜けた土佐藩郷士として、今なお熱狂的なファンが多いことで知られます。
その生涯をここで述べるにはあまりに字数が足りませんが、龍馬が29歳の若さで結成した「亀山社中」(海援隊の前身)は、交易の仲介や物資の運搬等で利益を得ていた、今でいう商社に類似した近代的組織。このことから日本で初めて株式会社の基礎をつくった人としても知られます。
さらに、長く続いた江戸幕府を倒すきっかけをつくったのも龍馬。
龍馬の生まれ故郷である土佐藩が平和的な倒幕である「大政奉還」を、ときの15代将軍・徳川慶喜に進言。
慶応3年10月14日(1867年11月9日)に、政権返上を明治天皇に奏上した慶喜によって、形式上、264年続いた幕府は消滅します。
そして、「新しい国づくり」に疾走した龍馬が亡くなったのは、西暦でいえば11月15日。江戸の世が終焉し、新たな時代が到来した直後に、龍馬は凶刃に斃れてしまうことになります。

江戸幕府の始まりと終焉の場所となった二条城内

江戸幕府の始まりと終焉の場所となった二条城内


坂本龍馬は、実は「生没同日」者ではない?

「生没同日といえば坂本龍馬」といわれるほど、多くの人に認知されていますが、高知県立坂本龍馬記念館のHPには次のような一文が掲載されています。
【(前略)坂本龍馬の生没日は、本来、天保6年11月15日(1836年1月3日)- 慶応3年11月15日(1867年12月10日)と表記するほうが正しいと思います。当館でもそれは以前から認識しておりますし、天保6(1835)年11月15日と表記することに違和感も感じておりました。龍馬の生誕の月日だけを西暦に直し、年号もそれに合わせて1836年とすることは簡単ですが、龍馬の生誕日以外にも年月日はたくさん出てきます。
それらをすべて西暦に直すのは大変なので、龍馬の生誕日や命日だけを正確な西暦に直すことは行っておりません。(一部引用)】
つまり、坂本龍馬年齢についても「31歳11カ月の生涯」、あるいは「33歳」……と諸説あるように、旧暦上での日付と西暦上の日付の相違や、数え年によって、年齢も誕生日も、亡くなった日も、厳密に正しい日時がわかっていないのです。
これは、江戸時代に姓名や生年月日等の情報を役所に届け出る制度がなかったことが大きな理由ですが、くしくも龍馬が思い描いた「新国家」の誕生から5年後の明治5年に、壬申戸籍(じんしんこせき)が制定。
それまでは土佐・薩摩・長州・紀州藩などの国別の人口調査はなされていたのですが、壬申戸籍によって全国一律の基準で皇族から平民までを戸を単位で集計された背景もあり、諸説ある中からどれが正説かを定めるのは大変難しいとされています。

亀山社中の跡(長崎)

亀山社中の跡(長崎)


生没同日者は、意外に多いという事実

イングリッド・バーグマン、坂本龍馬の他にも、3名の有名な生没同日者をご紹介しましょう。
●4月23日生没のウィリアム・シェイクスピア
言わずと知れたイングランドの劇作家、詩人であるW・シェイクスピア(1564年4月23日〜)が死没したのは1616年4月23日(グレゴリオ暦5月3日)。
つまり今年は没後400年にあたる記念イヤーなのですが、52歳で亡くなった際の死因は諸説あり、今も不明のまま。
400年前の日本といえば徳川幕府が始まったばかりの頃。それだけでかなり古い時代とわかりますが、国は違えど、シェイクスピアの誕生日が4月23日(洗礼日は4月26日)である伝承が正しければ、シェイクスピアは命日と誕生日と同じ生没同日者になります。
●6月24日生没の加藤清正
安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した、肥後(熊本)の虎・加藤清正。
彼も、永禄5年6月24日-慶長16年6月24日の生没同日者なのですが、龍馬と同様、西暦にすると1562年7月25日-1611年8月2日となります。
●12月12日生没の小津安二郎氏
満60歳で亡くなった名匠・小津安二郎氏(1903年12月12日-1963年12月12日)は、独特の映像世界で優れた作品を次々に生み出し、世界的にも高い評価を得ている名監督。代表作『東京物語』は、近年リメイクされ話題になりましたが、独自の映像世界・映像美は世界中の映像関係者に多大な影響を及ぼしたといわれます。
── 生没同日は単なる偶然なのでしょうが、生没同日で検索すると、非常に多くの有名人の名前にヒットします。
科学的根拠のない偶然とはいえ、時代を彩った人々の誕生日や命日にちなみ、例えば冷房の効いた室内で、静かにイングリット・バーグマンの作品を観ながら、その世界観や彼女の人生に思いを馳せる……。
そんな夏の夜の過ごし方も、また一興かもしれません。

築城の名手・加藤清正像(熊本)

築城の名手・加藤清正像(熊本)