いよいよ2018年ロシアW杯出場をかけたアジア最終予選が始まる。日本はまず、9月1日にUAE(埼玉・埼玉スタジアム)、9月6日にタイ(バンコク・ラジャマンガラスタジアム)と対戦する。そのメンバー発表会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、日本代表の戦力についてこう言及した。

「海外組が先発で出ていない、という事実がある。(その中には)ケガを抱えたままシーズンに入った選手もいる。移籍したばかりで先発を勝ち取らなければならない選手もいる。新しいトレーニングをこれから始める選手もいる」

 欧州各国リーグのシーズンは始まったばかり。それぞれ置かれている状況が異なる海外組は、まさしくコンディションにバラツキがある。加えて、長距離移動というハードルもある。ゆえに、ハリルホジッチ監督がそうした懸念を口にするのもうなずける。

 なかでも心配されるのは、選出された7名のうち、6名が海外組のFWである。どの程度やれるのか、実際に合流してみなければわからない、というのが現状だ。

 それだけに、国内組から唯一FWに選出された川崎フロンターレの小林悠にかかる期待は、いやがうえにも高まる。当の本人も「以前よりは自信がある」と、今回の最終予選にかける思いは強い。

 振り返れば、小林が代表初キャップを記録したのは今から2年前、2014年10月に行なわれたキリンチャレンジカップのジャマイカ戦だった。その後も招集される機会はあったものの、度重なるケガもあって、辞退せざるを得ない不運が続いた。その結果、これまでも実力は評価されながら、代表メンバーに定着するまでには至らなかった背景がある。

 そうした状況の中で、小林はケガをしない身体作りに力を注いだ。筋トレのメニューを増やし、ヨガにも通い始めた。水分補給や食事にも気を使い、身体にいいとされるものは何でも試してきた。

 努力は如実に成果として現れている。今年に入ってから、ケガで戦列を離れることがなくなり、日本代表にもコンスタントに招集されるようになった。出場機会を増やし、3月に行なわれたW杯アジア2次予選のアフガニスタン戦で途中出場、6月のキリンカップでは第1戦のブルガリア戦で先発出場を果たし、アシストも記録した。

 代表の舞台でもようやくめぐってきた好機だったが、当時の小林はまだ、満足感よりも、焦燥感のほうが強かったという。

「(自分は)パスの出し手との感覚や呼吸が合わなければ、自らの力を最大限に発揮することはできない、と改めて思いましたね。代表は練習時間が短い。その中で、自分の特徴を理解してもらわなければいけない難しさを感じました。代表に呼ばれて周りを見たとき、一番感じたのは"自信"。プレーを見ても明らかなように、(代表選手は)みんな自信に満ち溢れていますよね」

 しかし今は、以前の小林とは違う。今季は所属する川崎でフル稼働。セカンドステージでは7試合連続ゴールを記録し、すでにキャリアハイとなる13得点をマークするなどして、J1年間首位を走るチームの原動力となっている。小林自身、少なからず手応えを感じ始めている。

「フロンターレで結果を残してきたことで、自分自身にもそうした"自信"が芽生えてきた。DFの裏に抜ける動きだけでなく、ポストプレーもよくなってきたという思いもある。それを代表でも出せれば、もっとやれると思う。それに、そうなりたいと思って、ここまで取り組んできたんです」

 これまでは、思うようにパスがもらえないこと、動き出しを見てもらえないことを言い訳にしていた。

「今は、ゴールも積み重ねて(自分に)自信も持てているので、代表でも以前よりは強く要求できると思っています。だからこそ、代表に行きたいな、という思いも強くなっています。それこそ、最初に選ばれた頃は、自分が代表に選ばれていいのかなって思っていた。そんな自分がパスを要求したり、プレーに関して意見したりしてもいいのかな、という遠慮もあった。でも、今は違う。何度か呼ばれて、もう人見知りもしないですし、強く要求しなければいけないな、と思っています」

 2トップの一角も担えるが、川崎では主に右サイドでプレーし、ポジションの幅は広がっている。とはいえ、小林の根本に流れているのは、やはり点取り屋としての本能である。

「W杯はずっとテレビで見てきた大会なので、いつか自分も出たい、と思っていました。今なら、やれる自信もある。(自分もW杯に)近いところまで来ているな、と思えるようになった。フロンターレで成長させてもらって、じゃあ、次はどこで活躍するのかって聞かれたら、代表だって思います。W杯のピッチに立ちたい、という欲求は高まっています」

 W杯出場――小林が思い描いていた夢は、今や現実的な目標へと近づいている。それを実現するには、小林自身の活躍が欠かせない。目前に迫ったUAE戦とタイ戦では、コンディションに不安がある海外組よりも、小林のほうが明らかにいい状態にある。

 自ら結果を出して、自らの「夢」を「現実」へと変えることができるのか。小林の新たなステージでの挑戦が始まる。

原田大輔●文 text by Harada Daisuke