最近、上海に行った際、折悪しく、ちょうど豪雨とぶつかってしまった。写真は上海。筆者撮影。

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最近、上海に行った際、折悪しく、ちょうど豪雨とぶつかってしまった。

ニュースでは、「50年に一度」とか、「60年に一度」というほどの「歴史的な大豪雨」ということで、上海市内の100カ所もの道路がひざの高さまで冠水し、通行がストップ。交通機関が完全にマヒして、会社までたどり着けない人が続出。仕方なく臨時休業にしたり、学校については、教育委員会が「遅刻しても、生徒はお咎めなし」という異例の緊急措置を講じた。

筆者も取材のアポイントをとっていたものの、約束の場所にたどり着けず、やむなく翌日に回してもらったり、仕方なくキャンセルしたりと、電話やメールでの連絡に追われた。結局、1日中、ホテルの部屋で電話をしていたほどだ。幸い翌日には天気も回復して、何とか予定していた取材はできたが、本当に肝を冷やした思いだった。

中国では今年3月から7月にかけて、上海から内陸部の長江(揚子江)流域各地で27回もの豪雨や大雨に見舞われ、大規模な洪水が発生、5000万人もの住民が被災し、220人以上の死亡・行方不明者が出るなど大きな被害が出ている。

長江は6300キロもの大河で、上海や南京などの大都市圏に面し、 その流域は19省・自治区4億5000万人もの人口を擁している。今年の大豪雨で長江のいくつかの堤防が決壊し、60年ぶりの大洪水を記録。工場や農地の水没など経済的な損失は500億元(約7500億円)と拡大したことで、中国政府は8億元(約120億円)の緊急支援策を決めている。

習近平国家主席は中国人民解放軍や武装警察に緊急の総動員令を出して、被災者の支援に当たるよう指示するなど、被害の拡大防止に懸命だ。

中国は国土が広く、人口が多いだけに、自然災害が発生すると、被害は少なくない。黄帝や堯・舜・禹といった伝説の皇帝も河川の治水に苦しんだとの話が残っているほどで、自然との闘いは数千年に及んでいる。

ところで、筆者が中国をウオッチしてから40年以上になるが、2、3年ごとに「50年ぶりの大洪水」あるいは「100年ぶりの大洪水」などと中国メディアは伝えているのだが、「ほとんど毎年、大洪水が起こるならば、しっかりとした被災対策を準備すればよいではないか」とつい思ってしまう。

これについて、上海の知人に尋ねると、「都市建設の青写真の段階で、下水や排水など都市災害防止のためのインフラ整備が欠如している。また、川上にダムが建設されており、大雨の際、放水しなければならないのも被害を拡大させる元凶だ。たんにビルを建てたり、ダムを作ればよいという時代はそろそろ終わりにしないといけない」と痛烈に政府の無策を批判していた。

◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。