浅野拓磨が明かすシュトゥットガルト移籍の背景 そしてアーセナル復帰の青写真とは

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 目指すべき場所、越えるべきハードルがはっきりと見えたからだろう。表情に精かんさを漂わせながら、FW浅野拓磨(シュトゥットガルト)は練習終了後の取材エリアに姿を現した。

 埼玉スタジアムにUAE(アラブ首長国連邦)代表を迎える9月1日の2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選の初戦へ向けて、28日から埼玉県内で始まった直前合宿。ランニングのみの軽めのメニューで“海外組”としての初練習を終えた浅野は、時差ボケを心配するメディアへ「大丈夫です」と笑顔を見せた。

 このUAE戦と敵地バンコクで行われる6日のタイ代表戦に臨む24人のメンバーが発表された25日の段階で、浅野の所属は「アーセナル(イングランド)」と記されていた。

 7月にサンフレッチェ広島からアーセナルへ完全移籍したものの、イングランド・プレミアリーグでプレーするために必要な労働ビザの発給可否が不明のまま時間が過ぎていた。ビザ発給には日本代表として直近2年間で75パーセントの国際Aマッチに出場していることが条件。浅野はそれを満たしておらず、アーセナルは特例での労働ビザ発給を申請した。だが、リオデジャネイロ・オリンピックを戦い終えても状況は変わらず、アーセナル側からは日本へ一時的に帰国するように指示された。

 そしてアーセナルは特例での労働ビザ申請が却下されたことを、20日になって明らかにした。浅野が強いられた実質的な無所属状態を不憫に思った日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、アーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督へ直接抗議の電話を入れたことを代表メンバー発表会見の席で明かしている。

「オリンピック期間中にすべてが解決されている予定だったが、日本に残らざるを得ない状況だったので、私たちが環境を整えてみっちりトレーニングはさせた。今のところ(再び)ロンドンへ行ったという話は聞いたが、コミュニケーションを取るのが難しい。浅野の状態が気になっている」

 浅野は当初、今回のメンバーリストに入っていなかったという。しかし、FW金崎夢生(鹿島アントラーズ)が所属チームでの試合中、途中交代に抗議する形で石井正忠監督に反抗的な態度を取ったことを問題視したハリルホジッチ監督は、金崎と浅野を入れ替える決断を下した。それでも「本来であれば呼ぶべきではないかもしれない」と、浅野の置かれた状況とメンタル面を慮る言葉を残してもいる。

 実はこの時、浅野はすでにドイツ・シュトゥットガルト入りしていた。自らを取り巻く環境が激変した数日間を、浅野は「はっきりと覚えていないんですけど、確か23日か24日に日本を発って一度ロンドンへ入って、そこからシュトゥットガルトに2、3日滞在して、という感じです」と振り返る。

 ロンドンではヴェンゲル監督を始めとするアーセナルのスタッフと会い、その席でレンタル移籍先がブンデスリーガ2部のシュトゥットガルトに決まったと告げられた。

「ここ(アーセナル)が僕のファミリーだと、一年で戻って来られるように頑張ってこいと言ってくれました」

 シュトゥットガルト側は大きな期待を寄せているのだろう。浅野は現地で背番号「11」のユニフォームを手渡された。今シーズンから指揮を執るオランダ人のヨス・ルフカイ監督とも対面し、ブルサスポル(トルコ)から一足早く加入していたMF細貝萌と食事もともにした。

「2部ではありますけど、僕をすごく必要としてくれましたし、歴史のある、本当に魅力がたくさんあるチームに入れたことをうれしく思っています。ルフカイ監督は僕のコンディションを非常に気にしてくれたし、初めてお会いした細貝さんは、チームの良さなどを教えてくれました。細貝さんのような頼れる先輩がいることは、(シュトゥットガルトに)行くきっかけの一つになったのかなと思います」