石見陽いわみ・よう/1999年、信州大医学部卒、東京女子医大病院循環器内科学に入局。2004年12月にメディカル・オブリージュ社(現メドピア)を設立し、「MedPeer」を医師10万人が参加するプラットフォームに育てる(撮影/横関一浩)

写真拡大

 医師の3人に1人が参加する会員制サイト「MedPeer(メドピア)」。医師同士がその経験や知識を共有する医師専門のコミュニティサイトだ。運営する石見陽社長(42)に、医師と患者の今を聞いた。

──8月26日号の記事で、「最近の医療批判の週刊誌報道で診療現場に影響があるか」を医師に尋ねました。結果をどうみますか。

「医師の約3割が『影響がある』と答えたことは、重い。理由をみると、医師と患者さんの関係が変わってきたと感じます。私は医師歴16年ですが、医療の情報が入手しやすくなったことで、患者さんは医師にお任せでなく、自分の主張を言うようになりました。そのことが良い方向に進むときもあれば、逆にトラブルになるときもあります」

「従来のように医師は病気だけを診ていればよいのではなく、患者さんに満足を提供するという役割も担うようになってきました。そのようなときに医療批判・医療不信を助長する報道があったことは、双方にとって不幸だと思います」

──メドピアのサイトについて教えてください。

「代表的なサービスは、医師による医薬品のクチコミ情報や、医師同士の症例相談。アンケートも週2回程度実施し、直近ではストレスチェック制度への意見について尋ねました。現役医師がどんなことを考え、どんな悩みがあるのかなど、医師の素顔が垣間見え、医療関係者でなくても興味深い内容だと思います」

「メディアに登場する、情報発信力の強い一部の医師や医療ジャーナリストでなく、一般の現役医師の意見を集約したところが特徴です。そういう医師たちの本音を丹念に拾うのが、メドピアの大事な役目です」

──オンラインの医療相談「first call(ファーストコール)」の運営を今春から始めましたね。

「ネットによるテレビ電話で、画面上で医師の顔を見ながら、健康不安や不調を気軽に相談できるサービスです。遠隔医療は医療資源の乏しい地方で期待されていますが、都心でも、育児や介護と仕事の両立などでなかなか病院に行けない人がいる。そうした人にも役立つと思います」

「医療相談なので診療行為はしませんが、病院に行くべきかどうかの見極めや、応急処置の方法などを相談できます。医師の実名や病院名がわかるので、相談者は安心です。利用者からは、病院に行くかどうか迷うときの判断に役立つ、医師の説明がわかりやすかった、などの声があります。相談を受ける医師からも『対面で話すわけではないので、より丁寧な聞き取りや説明を心がけるようになった』との感想を聞きました」

──ご自身も、循環器内科医なのに、2004年に起業したのはなぜですか。

「福島県の病院で、帝王切開した妊婦が亡くなる事件などがあり、医療不信の風が吹き荒れていたときでした。夜勤の日は深夜まで患者さんを診察し、オンコール(緊急対応のため待機する状態)の日は、土日も関係なく呼び出される。患者さんのために頑張る医師を、医師の一人として何かサポートできないかと思ったのが、きっかけです」

──今後、どんなサービスを展開していきますか。

「登録している医師同士、さらには医師と患者さんを結ぶことができれば、新しい医療のしくみを作れる可能性があります。例えば、first callのメインは医療相談サービスですが、診療という形も予定しており、在宅医療への応用などに展開できるでしょう。健康保険の枠組みをどうするかなど、ルールづくりは必要ですが、一つずつ乗り越えたいですね」

週刊朝日 2016年9月2日号