■連載/コウチワタルのMONO ZAKKA探訪

デザインというと、どれも自己主張が強い印象があるが、必ずしもそういうものばかりではない。今回紹介するものたちがその良い例だ。判りやすさが求められるデザインの世界にあって、あえて判りにくく隠されたデザインたち。しかし、本当に気づいてもらえないのでは意味がないので、それとなく気づかせるようにする。その加減にデザイナーらの苦労の跡が見える気がする。

■リングが2つ揃って初めて完成するデザイン『Couple heart ring set』

Couple heart ring set Couple heart ring set

Elaid氏、Maya氏によるスタジオ「Jewelry studio」が製作している指輪はどれも個性的だが、この『Couple heart ring set』もまた面白いコンセプトを持つ指輪だ。ペアになった指輪に刻まれた窪みは、単独では何を表しているかは不明だが、互いの窪みを繋げるとハート型が現れる仕掛けになっている。ペアの指輪ではあるものの、刻まれた窪みが何か思わせぶりなのがよく、個々の指輪もデザインとして優れていると思う。価格は税込3万8298円で「Etsy」にて販売されている。

■街並みはそれだけでデザインになる『Barcelona Street Map Lamp and Shade』

Barcelona Street Map Lamp and Shade Barcelona Street Map Lamp and Shade

家具のデザインを手がけるNick James氏によるランプはまず全体の佇まいが美しい。コットンを中心素材にしたシェード、そして樫(かし)製のベースによる本体は、それ自体がタワーのような建造物を彷彿とさせる。特にベース部分は台座とポールが一体化しているので、それだけで洗練された印象を与えている。

そして、このランプの特徴は何といってもシェードの部分に隠されたデザインだ。製品名にもあるように、デザインされているのはスペイン・バルセロナの地図だ。日本と異なり、ヨーロッパの都市の多くは広場を持っている。これには教会が多く存在することも影響しているに違いない。

そうした広場からはいくつもの道が放射線状に延びていることが多く、地図に表すとそれらが綺麗な図形を成してデザインに貢献していることがわかる。価格は90ポンド(約1万2000円)で「NIck James Design」のHPで販売されているが、残念ながらコンセントのタイプがUKタイプとなっているため、日本ではそのままは使えないようだ。

■器の中に現れる器の姿『Li-Wai(LW05)』

Li-Wai(LW05) Li-Wai(LW05)

中国・北京のデザインスタジオ「KDSZ」による器は、中国の伝統的な器のデザインと、現代のデザインが見事に融合されている。全体的なデザインは普通のグラスだが、中身を注いだ時に現れるのは豊かな曲線を持った花瓶のようなデザインである。伝統的なデザインを私たちの生活に取り組むことに成功していると言える。

容量は175mlで食洗機での洗浄も可能とのことだが、電子レンジでの使用は推奨されないとのこと。価格は税込3404円で「Etsy」にて販売されている。今回紹介した『Li-Wai(LW05)』以外にも、『Li-Wai』シリーズとしてLW01からLW06までのバリエーションがあり、デザイン、容量が異なっている。気になった人は上記サイトで合わせてのぞいてみて欲しい。

■いびつなのは私たちの顔の方『Custom 3D-printed vase in white PLA』

Custom 3D-printed vase in white PLA

「ルビンの壺」という名称は知らなくても、その絵画の方は見たことがある人がほとんどだろう。「ルビンの壺」とはデンマークの心理学者・エドガー=ルビンが考案した多義図形のことで、瓶の部分を背景として見ると、そこに向かい合った人の顔が見えてくる、というものである。この『Custom 3D-printed vase in white PLA』はその「ルビンの壺」を3Dプリンターを用いて立体化したもの、と考えてもらえれば良い。瓶の形がいびつなのはすべては人間の顔の方のせいである。製品名に「Custom」と入っているように、デザインになる顔は注文者がデータを入稿することで指定することができる(もっとも、見知らぬ人の顔が浮き上がる瓶だったらあまり持つ気にならないだろう)。カラーラインアップはホワイトとブラックの2種類。価格は5インチ(12.7cm)のものが75ドル(約7600円)、3インチ(7.62cm)のものが40ドル(約4068円)で「Fahz」の専用サイトからオーダーすることが可能だ。

■文字が持つデザインを巧みに利用した『Decor Type』

Decor Type Decor Type

Decor Type

イタリアのアーティスト・Claudio Scottoによるプロジェクト『Decor Type』が面白い。このプロジェクトはアルファベットが持つデザインに着目し、それらアルファベットと家具を融合させる試みだ。例えば『s Din chair』はロッキングチェアだが、アルファベットの「s」が持つ曲線が前後にロッキングチェアの脚の形にフィットしていることがわかる。『i Times stool』なんかは指摘されなければ気づけないのでないか、と思うくらい巧みにアルファベットの「i」が隠されている。細いポールで繋いでいるので、確かに「i」の上に乗っている丸は浮いているように見えなくもない。『f Bodoni lamp』は棚としても使えつつ、大きく伸びたネック部分にはランプが仕込まれており、アルファベットの「f」をモチーフにしている。『f Bodoni lamp』が書体「Bodoni」を採用していることから判るように、同じアルファベットひとつとっても、書体によりそのデザインは様々だ。是非、26種類と言わず、それ以上の家具を生み出していってもらいたい。

text/Wataru KOUCHI

趣味は合唱、読書、語学、旅行、美術館巡り、雑貨屋探索etc...日本、海外の雑貨やガジェット、デザインコンセプトの中から思わず「それ、いただき!」と言ってしまうモノ達を紹介するライター。

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