元園長でも時給850円!「パート保育士」の涙が出そうな実態

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「保育園でウチの子が楽しく安全に過ごせますように」というのは、子どもを預けて働くすべてのママの願い。

そのシンプルな願いを叶えるためには、担任の保育士が自分の仕事に誇りとやりがいを持って子どもたちに寄り添っていることが必須条件。

さらに、保育士が置かれた職場の環境にも目を向ける必要があります。

ところが、実際の現場では正規職員と非正規職員との間で待遇に大きな差があり、現場の疲弊の大きな要因となっているようです。

今回は、パート保育士の実態にスポットライトを当てていきましょう。

■えっ……元園長でも時給850円!?  非正規保育士の実態

『ルポ 保育崩壊』で、ジャーナリストの小林美希さんは、正社員の保育士とパートの保育士の賃金格差についての綿密な取材を重ねています。

保育士の仕事が激務のため、育児と両立をするために一旦退職して“潜在保育士”になったり、パートで短時間勤務を選択したりするケースが多いといいます。

園長経験者であるにもかかわらず、定められた時給850円からスタートするケースも……。

すると、どんなことが起こるのでしょうか?

保育の世界を描いた話題のコミック『じんぐるじゃむっ』には、ベテランのパート保育士の有意義な経験や知見が、保育現場でなかなか生かされない実態が描かれています。

園児に何かあれば「全部こっち(正規職員)で対処します」と言われ、大切な会議にも出してもらえず、園の方針に口出しができない。

『ルポ 保育崩壊』の中では、保育現場ではパートのベテラン保育士が“格下”のため、子どもたちを脅かしながら言うことを聞かせている若手の正規職員にモノが言えず、やりがいを得られずに燃え尽きていく実態が描かれています。

■非正規でも仕事量が多い……自分の子育てが大事と悩むパート保育士

「子どもとの生活を守るために、いずれ保育士をやめようかと思う」と話すのは、地方で子どもを育てながらパートで保育士をしているAさん。

出産前は正規職員として働いていたものの、2人の子どもを出産した後はパート保育士として復帰。

パートといえど、制作物を持ち帰ったりと仕事量も多く、さらに保育方針の決定に関わることができないため、ベテラン保育士や園のルールに従うばかりで、お金以外に働く目的が見いだせないと言います。さらに、帰宅後は家事と育児に追われ、疲労が蓄積していると語ります。

日曜版の新聞にはさまれた求人広告には、パートの保育士の求人は数多くありますが、筆者が3週間にわたってチェックしたところ、首都圏の時給の相場は900円〜1,250円。

パートと言っても、仕事量は多く、子どもの命と将来に直結する大切な仕事なのに、なぜ待遇がなかなか良くならないのでしょうか?

■保育士の仕事が安いのは「もともとタダの仕事だったから」!?

『じんぐるじゃむっ』によれば、保育や介護はもともと家庭内で営まれてきた無償の仕事。

もともとタダだったから、スタートが低賃金となってしまったということです。

<低賃金の仕事はほかにも多々ありますが、保育がそれらのほとんどと決定的に異なるのは、「目の前で乳幼児が亡くなるリスクを負っている」点。それこそが、保育士の給料がもっと上がってしかるべきゆえんだと思っています>

と監修者の汐見稔幸教授が述べていますが、子どもの命と将来につながる大切な仕事であるにも関わらず、「家庭でできることを外に任せているだけ」とみなされている部分があることは否めません。

■パート保育士のやる気をキープするにはどれすればいいの?

『じんぐるじゃむっ』では、今後、保育者全体の専門性を上げて、たとえパート職員であっても、処遇アップの制度を設け、やる気のある人には正規職員と同じ時間給を保証する制度を提案しています。

家庭の都合で一度離職して、非正規の道を選んだとしても、保育士が培ってきた専門性やモチベーションを、キチンと生かす道を見出すことは今後の課題と言えるでしょう。

以上、パート保育士の実態についてお届けしましたがいかがでしょうか?

企業と異なり、保育の現場では効率と、利益と“完全なる安全”を追求したら、ゆっくりと外遊びさせることも、食べこぼしながら楽しくごはんを食べることも、笑顔で寝かしつけてもらうことも難しくなる世界。

保育園は、子どもにとって第2の生活の場。保育士がイキイキと働くことで、子どもたちが伸び伸びと子どもらしい時間を過ごすことにつながります。

コミック『じんぐるじゃむっ』からは、現場の疲弊には、わが子を守るのに必死で園に多くのことを求めてしまう保護者や、職員同士の方針の違い、正規職員と非正規職員の壁、決まりごとでがんじがらめになった現場など、様々な要因があることがわかります。

保護者は、「わが子が無事に卒園できれば」と願うと同時に、保育士の職場環境についても目を向けてみるべきなのかもしれません。