【意外と知らない】なぜリヤよりもフロントタイヤが太い市販車はないのか?

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市販車ではリヤが出るようなスピン方向のセッティングはNG

FRやMR、RRなど、後輪駆動のハイパワー車は、リヤタイヤが太いのが定番なのに、FF車は前後同サイズが基本。FFのフロントタイヤは、操舵と駆動力を一手に引き受けていて、リヤタイヤに比べ、圧倒的に負担が大きい。だったら、後輪駆動車と同じように、駆動輪=フロントタイヤをワイドにして、タイヤのキャパシティを上げてあげれば、と思うのはもっともなこと。

じつは、モータースポーツでは珍しいことではなく、レースやジムカーナ等のFF車で、フロントタイヤに対し、リヤタイヤをワンサイズ細くするといったセッティングは、割とよくある方法だった。

要は、相対的にリヤタイヤよりフロントタイヤのキャパシティを上げることで、回頭性を上げ、アンダーステアを弱めるのが狙い。

競技車両の場合、タイヤの最大幅などのサイズが決まっているので、フロントタイヤをレギュレーション上最大のサイズにして、リヤの幅を狭めて、前後のグリップバランスを調整していたというわけだ。

しかし、市販車ではいざというとき、リヤタイヤから滑り出すようなセッティングは御法度。ただでさえ、フロントタイヤより負荷の小さいリヤタイヤは温まりが悪いので、雨天や冬期、下り坂のことを考えれば、回頭性優先で、リヤタイヤの性能を落とすことは考えづらい。

一方で、近年のタイヤの性能向上は凄まじいので、シビックタイプR(FK2)や、VWゴルフGTIクラブスポーツSのように、300馬力級のFF車でも、235/35-19といったタイヤを履けば、タイヤのグリップ不足で、アンダーステアが出るということもなくなり、前後で別サイズのタイヤを履く必要がなくなったというのも理由のひとつだろう。

余談だが、筆者もフロントタイヤだけワイド(前後同銘柄)にしたホンダ・インテグラ(DC5)に、ミニサーキットで試乗したことがあるが、キックバックが大きくなり、路面の凹凸などの影響も受けやすくなり、タイム的にも期待したようなメリットはなかった。それゆえFF車でフロントタイヤだけワイドにするというチューニングには、さほどいい印象は持っていない。

ローテーションやルックスなどのことを考えても、現在のタイヤの性能、シャーシレベル、サスペンションのセッティングからすれば、FFでも4輪同サイズというのが、トータルで一番メリットがある組み合わせなのではなかろうか。

(文:藤田竜太)