NHK 大河ドラマ「真田丸」(作:三谷幸喜/毎週日曜 総合テレビ午後8時 BSプレミアム 午後6時)
8月21日放送 第33回「動乱」 演出:土井祥平

慶長4年1月21日、伏見のもっとも長い一日、石田三成(山本耕史)がものすごーーく可哀想だった33回。

三成が徳川屋敷を襲うと決めるが、久々登場の江雪斎(山西惇)が「数奇な定めでござる」とか言いながら、本多正信(近藤正臣)にご注進。すぐさま、三成勢を迎え撃つ準備がはじまり、本多平八郎(藤岡弘、)が強そうな兜をかぶって大張り切り。

作戦がバレても、三成ももう止まらない。
ここで、三成(豊臣)につく者、家康につく者との運命が大きく分かれていく。
カリスマ武将たちに付き従っていた者たちの生き方の選択が描かれることで、彼らがこれまで何を積み重ねてきたかがよくわかるようになっている。


それにしても あまりに人望がない石田三成


ほとんどの大名が家康についてしまう。
あの柔和で包容力のある寧(鈴木京香)まで「戦のない世の中をつくろうとした秀吉に反して戦を起こす」とは! と大激怒。
死にかけとる病人(秀吉)に遺書を無理矢理加筆させたのもよくなかったのだろうなあ。

三成が悪いやつじゃないことをわかっている加藤清正(新井浩文)は朴訥に説得する。
「力づくで相手を倒そうなどとお前らしくない」
「振り上げた拳どうしていいのか困っておるのだ」

「だったらわしと腕相撲しようじゃないか」
 
清正、いいやつ! なぜ、ここで、「そうだな」と笑えないのか、三成。バカバカバカ!!!

「どうにもいらっとさせる男だ」と宇喜多秀家(高橋和也)にも言われてしまう。

挙げ句に、細川忠興(矢柴俊博)を説得しに行く際、干し柿をもっていき、こんなもので! と怒らせてしまう三成。ばか真面目で吉良上野介を怒らせた大石内蔵助みたいだ。干し柿自体もあれだが、細川忠興が何か語り始めた話しの腰を折ってしまったのもいけないのではないか。ことごとく間が悪い。

あらゆる面で真面目過ぎ、不器用過ぎる三成。秀吉が死ぬ間際に言った「家康を殺せ」に突き動かされ(ある意味呪いをかけられてしまったんだな)、まわりが全く見えない残念なひと。

大谷刑部(片岡愛之助)は体調がとても悪い中で、必死に「死を前にした老人の世迷い言にふりまわされるな!」と叱咤し「(三成に)ついてくる者はいない」と厳しい言葉を浴びせるが、それでも変われない三成。

きつく言われれば、言われるほど頑なになってしまうってこともある。そこで清正は柔で攻めたわけだが(計算したわけではないが)、残念ながら三成はユーモアが通じない朴念仁だったのだ。

山本耕史が、皆に何か言われるたび、ものすごく哀しい眼をしていて、明らかに困っているのはわかる。でも、どうにもできないところがもどかしくてたまらないまま、話が進行していく。

そこへ、救世主が!

33回のヒーロー上杉景勝


まず、信繁(堺雅人)が上杉景勝(遠藤憲一)に助けを乞い行くが、直江兼続(村上新悟)は、信繁が頼めば景勝は引き受けるからダメと言う。それをこっそり聞いて黄昏れる景勝。外でははらはらと雪が舞う。儚げな雪とすっかり元気がない景勝が絵になる。

だが、33回の後半、長らく覇気をなくしていた景勝がついに立つ!
振り上げた拳を下ろすことができず、誰か止めて〜と心の中で泣き叫んでいるかのような三成に、
「わしが倒す」と本気になる上杉。それを横で「御屋形様は本気になられた」と解説する直江が健気。

「太閤殿下の御前で我は誓った。その誓いを破る者、義を知らぬ者、義をないがしろにする者をわしは断じて許すわけにはいかぬ」

かっこいー!

「義はこちらにある」

しびれるー!

「今は命をつなぎ時を待つのじゃ」

上杉は三成を抱きしめる。ようやく言うことを聞く三成。まるで、暴走して止まらないロボットを、人間が愛情をもって接した結果、良心が芽生える、みたいな感動シーン。

その前に、信繁が「いけませぬ!」「まだまだ生きていただかねばなりませぬ」「どきませぬ」「あなたにしか成し得ないこと、己の欲で動く徳川内府には思いもつかぬことでございます」「死んではなりませぬ」ともの凄い声と形相で説得するが、力に力よりも、景勝のハグのほうが効果大だったようだ。北風と太陽とはこういうことか。清正みたいなハイブロウな笑い(太陽)でなく、真っすぐにアプローチした景勝、流石である。


 でも一番の策士は本多正信 


本多正信(近藤正臣)の悪だくみがじわじわと進行している。
天下とりに向かってなかなか重い腰を上げられないでいた家康(内野聖陽)に「これはいけるかもしれんなあ」と思わせることに成功する正信。

家康「おぬしのまことの狙いはこれであったか」
正信「殿は腰が重いゆえ」
ナレーション「徳川家康の天下取りの道がはじまる」

三谷幸喜、ゾクゾクさせるのがほんとうに巧い。


(木俣冬)