唯一の戦争被爆国として核廃絶を訴える日本。しかし、安全保障の面では米国の「核の傘」に依存している。オバマ米大統領の「核先制不使用宣言」にも反対したとされ、核の扱いをめぐり日本は揺れ続けている。写真は広島。

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2016年8月26日、核兵器禁止をめぐり、日本政府が「本音」と「建前」のはざまで揺れている。唯一の戦争被爆国として核廃絶を目標に掲げるが、安全保障で米国の「核の傘」に依存している現実もある。オバマ米大統領が検討している「核先制不使用宣言」にも反対したとされ、日本の矛盾が改めて浮き彫りになっている。

スイスのジュネーブで開かれた国連核軍縮作業部会。19日に核兵器禁止条約の締結交渉を始めるよう国連総会に勧告する報告書を賛成多数で採択したが、日本は棄権した。

核兵器削減は、世界の核の大半を持つ米国とロシアの関係悪化で停滞。包括的核実験禁止条約は発効しないままだ。昨年春には核拡散防止条約(NPT)再検討会議も決裂した。その後、メキシコやオーストリアが作業部会の設置を主導。核兵器禁止条約の制定を視野に入れ、多数派を形成した。報告書はアフリカや中南米を中心に東南アジアなど国連加盟国の半数を超える100カ国以上が支持した。

これに対し、日本は同様に米国の「核の傘」に入るオーストラリアや韓国、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などと24カ国のグループを形成。核兵器禁止条約の交渉開始は「時期尚早」と主張し、同じグループのドイツやカナダなどは反対に回った。核兵器保有国と非保有国の橋渡し役を自認する日本だが、佐野利男軍縮大使は「核軍縮は核保有国の関与と協力を得ながら、実践的、具体的措置を着実に進めるのが基本だ」と原則的立場を繰り返すにとどまった。

一方、複数の日本メディアによると、オバマ大統領の「核先制不使用宣言」について、日本政府は反対する立場を米政府に伝えた。宣言により米国の「核の傘」が無力化する恐れがあるとみているためで、「抑止力にならない。核の傘に穴が開き、日米同盟の否定になる」と強い懸念を示したという。

米メディアなどによると、宣言に関しては米政府内部でもケリー国務長官やカーター国防長官ら有力閣僚が「同盟国の不安を招きかねない」などとして反対。日本のほか、英国、フランス、ドイツ、韓国なども危惧しているとされる。核廃絶に一歩でも踏み出したいとするオバマ大統領の願いは「お蔵入り」となる公算が大きそうだ。

安倍晋三首相は今月6日の広島平和記念式典で「唯一の戦争被爆国として今後も非核三原則を堅持し、NPT体制の維持、強化の重要性を訴えていく」などと強調した。しかし、日本を取り巻く安全保障環境は朝鮮半島や東シナ海の緊迫化など厳しさを増すばかり。特に日本に照準を合わせているはずの北朝鮮や中国の核兵器の脅威には、米国の抑核止力で対抗せざるを得ない。日本のジレンマは今後も続く。(編集/日向)