40歳の時、おひとり様で都内に「7坪ハウス」を建てた雑貨店オーナーの塚本佳子(つかもと・よしこ)さん。バリキャリ編集者だった30代には、家具、インテリア、服、旅行、習い事……とあらゆる“消費”に手を出したそう。そんな塚本さんと編集部が「オンナの30代」と「消費」の幸せなバランスについて語り合います。

「自分も大人になったな」と感じる瞬間

――突然ですが、「大人になる」ってどういうことだと思います?

塚本:(笑)ホント、突然ですね。あっ、そういえば前回、「初めてひとり旅をした時に、大人だなーって感じた」みたいな話、しましたね。

――そうなんですよ。女がなぜ「消費」を続けるかといえば、結局のところ「大人になりたい」とか「大人になったと実感できる」とか、そんな理由だと思うんです。

塚本:確かに大人になったと感じたのって、初めてのひとり旅だったり、ひとり暮らしだったり、お年玉をもらう立場からあげる立場に変わった時だったり……、“消費”と結びつくことが多い気がする。

――私もそれはありますね。「大人になる」と「経済的自立」ってかなりイコールかも。

塚本:経済的な自立は、結構簡単に大人になれたと実感できる理由の一つだと思います。私の場合、ひとり旅もひとり暮らしも、社会人になってから自分のお金で始めたことだったので。ただ、精神的なことになるとまた別ですよね。

親を「小さく」感じた、あの時

――では、精神的に「大人になった」と感じたのはどんな時ですか?

塚本:大人になったというか、「あー、もう子どもじゃないんだな」と感じた一番の要因は親との関係かな。両親ともに結構印象に残る出来事がありました。

うちの父は昔ながらの頑固おやじで、いつまで経っても怖い存在でした。そんな父と一度だけ言い争いになったことがあって。原因は忘れちゃったんですけど、その時初めて父を怖いと思わなかったんです。

――ほー。怖かった存在が怖くなくなったと。

塚本:怒られると黙ってしまうのが常だった私が、怒鳴っても怒鳴っても言い返してくる。父はショックだったんでしょうね。もともと大酒飲みではあったけど、その時のピッチは尋常じゃなかった。私の方はといえば、対等にやり合えたことに若干の誇らしさを感じながらも、父を怖いと感じなかったことに寂しさもあったりして。父が亡くなる直前の出来事だったので、印象深く記憶に残っていますね。

――絶対的な存在のはずが、「親もひとりの人間だったんだ」って気づいた時、子ども時代は終わったんだなあ、と感じますよね。お母さんとの出来事は?

塚本:父が亡くなった時、私はフィンランドにいたんですね。連絡を受けて急いで帰国して家に帰ったら、母が「おかえり。大変だったね」って出迎えてくれたんですけど、その途端自分でもびっくりするくらい号泣してしまって。そしたら母が抱きしめてくれたんですよ。

――大きくなってから親に抱きしめられたこと、ないな。

塚本:私もですよ。だから、泣きつくどころか母のあまりの小ささに二重のショックを受けてしまった。母は身長が140cmそこそこしかないので小さいのはわかっていたものの、その時初めて実感した母の小ささに驚いてしまって。あれを機に母は「守るべき存在」になった気がしますね。

――親との関係って、ある時期から逆転しますよね。結局のところ、大人になるって「責任感」の問題なんですかね。お金を消費するにしても、親を守らなくちゃと思うにしても。

子どもを産んだから「大人」になれる?

塚本:あー、そういう意味では私はいつまで経っても大人になれないんだろうな。

――どうしてですか?

塚本:子どもを産んで育てるという経験をしていないから。一般に「普通」と思われている人生を考えると、自分のことだけを考えていればよかった段階の次に、自分の命よりも大切なものを産み育てるという、大きな責任を担う段階があるわけでしょう。そういう段階を経ることで人間は成長し、大人になっていく。それが方程式、みたいな考えって、多くの人が持ってる気がする。

――う〜ん、そんなに大人になる上で大事なファクターなのかな、子どもって。

塚本:産んでいないとそう考えちゃいますね。実際に経験してみれば、「あー、親になっても大人になれないんだ」と思うかもしれないけど、それはわからない。

――私は子どもを産んでも大人になった実感はないですね〜。ただ夫は子どもを持ったことで自分が成長したと言いますけど。

塚本:たぶん、ご主人の感覚が多数派だと思いますよ。子どもを持てば大人になるもんだ、って。もちろん、子どもを持つことがすべてじゃないけど、大人になるための経験として結構な部分を占めているんじゃないかな。それを経験していない私は何かが欠けているんだろうなって思ってしまう。

――そこを乗り越えられる人って、まだまだ少ないのかな。実際に子どもができたから責任感が強くなったという人は大勢いますし。

塚本:未経験ゆえに、子どもを育てている人はすごいって本当に思います。大人だなと思う。日々、自分のことしか考えていないですからね、私(笑)。

――塚本さんの生き方を含めて、今の時代、いろんな人生の選択肢があると思うけど。

塚本:確かに、子どもを持たなかったからこそできる経験もあるでしょうし、別の経験が大人へと成長させてくれることもあるかもしれない。結局のところはどんな経験をし、そこからどんな影響を受けたかになるのかな。

――うん、少なくとも親になることが大人になるための絶対条件ではないと、経験者の私は思います。産んだら産んだで「産まない人生って、どんなだったんだろう?」って考えちゃうし。難しいなあ。

感情のコントロールができる女性は大人?

――ところで、「感情のコントロールができる」というのも、大人の女の条件としてよく聞きますよね。

塚本:これは難しい。特にマイナスの感情をコントロールするのは。でもね、年齢を重ねるごとに傷つきにくくはなっていきますよ。

――免疫がつくのかな? 

塚本:きっと、すべてを真に受けず、受け流す術が身についてくるんでしょうね。傷つきにくくなれば、他人を憎む感情も減りますから。

――しなやかな「大人の女」はイヤな感情をスルーできる?

塚本:防御がうまくなるのは確かかも。ただ、度を超して「鈍感」になってしまうと防御過剰でまた変な方向に行ってしまうんですよね、これが。

――というと?

塚本:受け流していれば、心は穏やかでいられるんですよ。だから、スルーすることを選ぶ機会が増えていく。特に会社員からフリーランスになって、いろいろなことを自分の判断で決められるようになると、マイナスの感情はできる限り排除したくなる。その弊害として、例えば「怒り」というマイナスの感情を忘れてしまうんです。

――あー、わかります。感情の起伏があると疲れますからね。組織に属していれば怒らなきゃいけない場面でも、フリーなら「まあ、いいや」で受け流す選択肢もある。

塚本:そうそう。そんなことを繰り返しているうちに怒るべき時に怒れなくなって、結果自分の立場を悪くしてしまうケースもあると最近気づきました。

――結局、受け流すということは、マイナスの感情にフタをしているだけなのかな。

塚本:受け流すことで自分の感情をコントロールできていると思うのは危険かも。受け流してもいいけど、必要な時は反撃に転じないダメみたい。でも、また怒りの感情を復活させると、怒ってばかりの日々に逆戻りしてしまうし……。つまるところ、バランスの問題なんだけど、その加減がなかなか身につかないんですよね。大人の階段をのぼれたと思ったら踏み外して、いくつになっても日々そんなことの繰り返しですよね。

――結局、「大人になる」って何なんでしょうね〜。

塚本
:何なんでしょう? 私は最後の最後まで「大人になった」という実感を持てないまま、「大人になりたい」と思いながら死んでいくような気がする。ということは、死ぬまで“消費”を続けるのかな(笑)。

【お茶会のメニュー】
〈器〉
・グラス(一ノ宮千佳さん/3672円)
・きなこ棒の皿(HÖGANÄS KERAMIK)
・きなこと黒蜜ナッツの小皿(中西申幸さん)
・きなこボールの蓋物(今井梨絵さん/4104円)

*金額掲載の器は「Fika」にて取扱中。

〈お菓子とお茶〉
・きなこボール
・きなこ棒
・黒蜜きなこナッツ
・冷たい緑茶

☆きなこボールの作り方

[材料]一口サイズ、約10個分
きなこ……20g/小麦粉……40g/砂糖……10g/バター……5g/オリーブオイル……15cc/牛乳か豆乳……適量/粉砂糖……適当

[1] 牛乳(豆乳)と粉砂糖以外の材料をすべて混ぜる。
[2] [1]を一口サイズに丸めて、クッキングシートに並べる。生地がまとまらない場合は牛乳(豆乳)を加える。
[3] 600Wのレンジで1分30秒前後加熱する。加熱し過ぎると焦げるので注意。
[4] [3]に粉砂糖をまぶす。

*ボロボロした生地なので、手のひらで握り固めるようにして丸める。
*ボロボロ過ぎて握り固められない場合は、牛乳か豆乳を少し足す。

☆きなこ棒の作り方

[材料]長さ5cmの棒、約10本分
きなこ……50g(まぶす分は含まず)/黒蜜……50g

[1]ボウルに材料を入れて混ぜる。粉っぽさが残るようなら黒蜜を、ベタベタしている場合はきなこを足す。
[2]きれいに混ざったら、生地をサランラップの間にはさんで平らに伸ばす。
[3]サランラップに包んだまま、1時間程度冷蔵庫で寝かせる。
[4]生地を10等分にして、長さ5cm程度の棒状に成形したらつまようじをさし、きなこをまぶす。

*使用する黒蜜の濃度で、きなことの配分に差が出る。

☆黒蜜きなこナッツ

[材料]
きなこ……8g/黒蜜……10g/くるみ……30g/アーモンド……10g

[1]生のナッツ類はローストしておく。
[2]ナッツをボウルに入れて、黒蜜であえる。
[3]黒蜜でナッツがコーティングされたら、きなこをまぶす。

「北欧雑貨と日本の器 Fika」
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