『走れば脳は強くなる』(重森健太著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、脳科学とリハビリテーションの分野で研究を重ね、現在はおもに運動の視点から「脳を鍛える、若返らせる」ことをテーマに活動しているという人物。

つまり本書では、そんな実績を軸として、脳科学の知見からランニングの効能と賢い走り方を明かしているわけです。

■人は1日何km走れば痩せられるのか

ところで、太ってしまったとき、「走って痩せよう」と思うことがありますよね。あるいは、「太らないために走ろう」と考えることもあるでしょう。

しかし実際のところ、どの程度の距離を走れば同じ体重を維持できるのでしょうか?

その点を解き明かすために、本書ではアメリカでの研究結果が紹介されています。

BMI(体重と身長の関係から肥満度を示す体格指数)が25以上の中高年(40〜65歳)260名を、運動量と運動強度の違いから、次の4グループに分けて分析したというのです。

(1)とくに運動をしないグループ

(2)運動の量は少なく、強度が中程度のグループ(週に12マイル(19.2辧砲離Εーキング/ジョギング、最大酸素摂取量の40〜55%の強度)

(3)運動の量は少なく、強度が高いグループ(週に12マイル(19.2辧砲離Εーキング/ジョギング、最大酸素摂取量の65〜80%の強度)

(4)運動の量が多く、強度の高いグループ(週に20マイル(32辧砲離Εーキング/ジョギング、最大酸素摂取量の65〜80%の強度)

■1日2km以上走れば体重は増えない

8ヶ月間におよぶ実験の結果、(1)のグループは体重が増加し、運動をした(2)と(3)と(4)のグループでは、運動量と運動強度の多い順に体重が減少したそうです。

そして、同じ体重を保持できるのは1週間に8マイル(12.8辧砲離Εーキングかジョギングを余分にする必要があると結論づけられているのだといいます。

8マイルを1日に換算すると2卍度。つまり、2卍度余分に運動していれば、体重が増えることはない。さらにいえば、それ以上に実施すればそれだけ減量できるわけです。

とはいえ、同じ運動をしたとしてもその効果には個人差があるもの。そこで普段から体重を管理し、効果を測定することが必要。

■1万歩あるけば肥満の防止につながる

次に、「歩く」ことについての話題にも触れてみましょう。ここで紹介されているのは、歩数計を使って、肥満との関係を調査した研究です。

この実験は、80名の平均年齢50.3歳の女性に、7日間歩数計を装着してもらい、1日の平均歩数を算出するというもの。まず参加者を、歩数によって次の3グループに分けたそうです。

(1)6,000歩未満

(2)6,000〜9,999歩

(3)1万歩以上

さて、結果はどうだったのでしょうか?

まず体脂肪率で見てみると、

(1)のグループ 44.2%

(2)のグループ 35.1%

(3)のグループ 26.4%

と、明らかに1日あたりの歩数の少ないグループのほうが高いことがわかったそうです。BMIでも、歩数の少ないグループのほうが高く、(1)のグループでは、30に近い平均値だったとか。

つまり、1万歩という大台を目指して歩くことは肥満の防止につながるわけです。

また、ウォーキング雑誌購読者3,578名への郵送調査で、歩数と肥満の関係について調べた研究結果も紹介されています。

1週間に歩く距離別にBMIを見てみると、年齢にかかわらずBMIは1日の歩数とともに曲線的に減少することがわかったといいます。

要するに、そこからも1万歩という大台を目指して歩くことは肥満の防止につながるということがわかるわけです。

■生活のなかで歩く機会をつくるべし!

そして、これらの結果を踏まえたうえで著者は、「前向きに考えれば、わざわざ運動する機会をつくらなくてもいい」と主張しています。

つまり、歩いて行けるところへは電車を使わずに歩いたり走ったりしてみたり、あるいはエレベーターを使わずに階段を使う。

そんなふうに生活のなかで歩く機会をつくるだけで、健康につながるということ。たしかにそう考えたほうが、長続きしそうではあります。

他にも体を鍛えることについて、さまざまな角度からの検証がなされています。しかもアプローチが柔軟で読みやすいだけに、無理なく知識をつけ、脳を強化していくことができそうです。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※重森健太(2016)『走れば脳は強くなる』クロスメディア・パブリッシング