『アンゴルモア 元寇合戦記』(たかぎ七彦/KADOKAWA)

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 コミックWEBサービス「Comic Walker」(KADOKAWA)に連載中の、たかぎ七彦による漫画『アンゴルモア 元寇合戦記』の第6巻が、紙版電子版ともに8月26日(金)に発売された。
 13世紀後半に起きた、元による二度の日本侵攻=「元寇」という、珍しい題材を扱った本作は、各方面で高い評価を得ており、「このマンガがすごい! 2016 オトコ編」では14位にランクインしている。

 時は西暦1274年。二月騒動(北条家の骨肉の争い)で、反北条時宗側についた御家人・朽井迅三郎は、九州北方の対馬に流される。迅三郎を含む流人たちが対馬に着くのとほぼ同時に、蒙古軍(中国大陸を支配していた元と、その属国であった朝鮮半島の高麗王国や南宋からなる軍)が来襲。実は迅三郎たちは、蒙古軍と戦うために、対馬に送られたのだった。島主の娘・輝日姫は流人たちに「この対馬のために死んでくれ」と言い、さらに迅三郎は、鎮西奉行の息子・少弐景資から「九州から援軍が到着するまでの7日間、対馬を守れ」と命じられる。
「義経流」と呼ばれる兵法をおさめ、実戦に長けた迅三郎は、対馬の人々をまとめ、次々に訪れるピンチを必死で切り抜ける――。

 以上が、これまでの大まかなあらすじである。なお第5巻で、迅三郎は、壇ノ浦の合戦を生き延び、対馬に逃れていた安徳帝の命を受け、防人の末裔である刀伊祓の一族と合流。彼らの本拠地・金田城で、ともに蒙古軍と戦う覚悟を決める。

 本作品の魅力は、まず、キャラクター造形の巧みさにある。
 戦上手だが、流行り病で亡くした妻子のことや、二月騒動の折の理不尽な思いを引きずっている迅三郎。安徳天皇の曾孫であり、美しさと気性の激しさを併せ持つ輝日姫。物腰は柔和で部下からの信頼も厚いが、やり手であり冷酷さも持ち合わせている、蒙古軍の将ウリヤンエデイ。決断力がなく気弱な風を装いながら、御家人たちを思いのままにコントロールしている、ときの執権・北条時宗――。敵も味方も、一筋縄ではいかない人物ばかりであり、それぞれの思惑が複雑に絡み合ってストーリーが進んでいく。
 キャラクター一人ひとりのバックグラウンドや気持ちの動きなども、非常に丁寧に描かれている。だからこそ、「元寇」というややなじみの薄い題材、「戦記もの」というジャンルでありながら、読者はその世界に一気に引き込まれ、感情移入することができるのだろう。

 ストーリーの内容が濃く、かつ容赦がないのも、本作品の特徴。「対馬という閉ざされた空間で、次から次へと危機が訪れる」という設定だけでも読者はかなりの緊張を強いられるが、重要と思われた人物があっけなく死んでしまったりするから、とにかく気が抜けないのである。史実に基づいているとはいえ、主なキャラクターのほとんどが架空の人物である。今後、誰が死に、誰が生き残るのか、まったく見当がつかない。

 第5巻は、蒙古襲来から4日目(蒙古軍が対馬を撤退するまであと5日)、迅三郎たちの味方から裏切り者が現れ、敵の将ウリヤンエデイが金田城を襲撃しようとしている――というところで終わっている。裏切り者たちがどう動くのか、迅三郎たちは城を無事守れるのか。そして迅三郎と輝日姫の関係はどうなるのか、幕府はどのように介入してくるのか、物語は最終的にどこに着地するのか。第6巻以降の展開が気になって仕方ない、今日この頃である。

文=村本篤信