この夏の甲子園、印象に残る場面を振り返る

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 作新学院(栃木)の54年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた夏の甲子園。ちょうど開催期間がリオ五輪と重なったこともあって「昼は高校野球、夜中は五輪」となかなか眠れない生活を送った高校野球ファンもいるのではないだろうか。

 そんなこの夏の甲子園で、印象に残った名場面をあらためて振り返り、来春のセンバツに向けて思いを馳せたい。

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■中越・今村、9回1死までノーヒットノーランもサヨナラ負け

 1回戦最後のカード、中越(新潟)対富山第一(富山)は隣県同士の戦いとなった。

 中越の左腕エース・今村豪は身長165センチと小柄ながらもスライダーを中心とした組み立てでゴロアウトを重ねていく。一方、今村を援護したい中越打線は得点のチャンスを作るもあと一本が出ず、試合は0対0のまま終盤へ突入する。

 7回裏、今村は2死から連続四球を許しピンチを迎える。しかし、富山第一の5番・河原大成の打球はレフトの正面に飛びチェンジ。

 続く8回裏には失策と2つの四球で2死満塁に。2番・佐々木拓海の打球はピッチャーを強襲するライナー。そのままセンター前に抜けて富山第一が勝ち越すと思われたが、今村が精一杯グラブを伸ばしてこれをキャッチ。土壇場のファインプレーで最大のピンチを脱した。

 8回を終えた時点で今村の被安打は0。1998年夏の決勝、横浜・松坂大輔以来のノーヒットノーランにむけて観客の期待が高まっていく。9回表も先頭打者を打ち取り1死に。ところが、続く4番・狭間悠希に右中間を破る二塁打を打たれ、この試合初めて安打を許してしまう。さらに続く河原にも安打を打たれ狭間がホームイン。富山第一がサヨナラ勝ちを収めた。

 中越にとっては2年連続のサヨナラ負けとなってしまった。打たれた今村は整列で並んだ際、空を見上げて「フーッ」と大きく息を吐いた。

■東邦、7点差からの大逆転劇

 今大会、最大の盛り上がりを見せたのが2回戦の東邦(愛知)対八戸学院光星(青森)だった。

 東邦は先発・藤嶋健人が3回途中で4失点、後を受けた松山仁彦も5失点と強打の八戸学院光星打線に飲み込まれる。打線も2回、3回と1点ずつ挙げるが、7回表を終わり2対9と7点のビハインド。

 しかし、7回裏に2点、8回裏に1点を挙げ点差を詰める。9回裏、3番・松山の適時打で1点を返すが、4番・藤嶋は中飛に倒れ2死に。あと1人で試合終了という場面から5番・小西慶治が安打を放つと、途中出場の6番・中西巧樹の適時打で7対9。甲子園全体の雰囲気が一気に東邦を応援する空気へと一変する。

 さらに7番・高木舜の二塁打で2者が生還しついに同点。そして8番・鈴木理央の一打で高木が生還し10対9と東邦がサヨナラ勝ちした。

 「甲子園には魔物が棲んでいる」。その言葉を思い出させる試合となった。

■雨天中断が影響!? 横浜対履正社の強豪対決

 大逆転劇で終わった東邦対八戸学院光星の次に行われたのが、横浜対履正社という2回戦屈指の好カードだった。

 お盆休み、日曜日、大阪勢の登場とあってこの日は早々に満員となり、第4試合となったこの試合も大勢の観客が注目。横浜は藤平尚真、履正社は寺島成輝と東西を代表する両エースの投げ合いも見どころのひとつだった。

 履正社・寺島、横浜・石川達也の先発で始まった試合は1回表に横浜が先制。2回裏1死二塁となった場面で6番・寺島が打席に立つが、ここで雷雨のため試合が43分間中断。試合再開後、石川は8番・山本侑度に3ランを浴び逆転される。

 その直後、再び雨が強まり40分間の中断を余儀なくされる。再びマウンドへ上がった石川は四球、死球と崩れてしまい、ここで藤平と交代。しかし、藤平は2番・北野秀に二塁打を打たれ、1対5と点差を広げてしまう。それでも3回以降は、わずか2安打に抑え7三振を奪う力投を見せた。一方の寺島は2回以降、横浜打線に得点を許さず5対1で履正社が勝利した。

 結果として2回裏の2度の中断がが試合を大きく左右してしまった。

文=武山智史(たけやま・さとし)

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