SOURCE1●日銀
経済重視は首相続投の布石。政権安定で海外マネー再流入も

7月に行なわれた参院選挙で自民・公明両党が大勝すると、安倍晋三首相は事業規模 28 兆円の大型経済対策を打ち出し、内閣改造も手早く終えた。この間わずか1カ月足らず。

経済重視を鮮明にする背景には、首相の任期延長が見え隠れする。外国人投資家は政治的な安定性を重視することが知られており、今後は海外マネーの再流入が予想される。

「選挙後も経済だよ」。7月の参院選で自民・公明両党の大勝が判明した直後、旧知の議員がこう語った。

「釣った魚に餌はやらない」といわれるように、経済対策は支持率アップを狙って選挙前に発表するものと決まっていた。首相が6月に経済対策に言及した際、予算額を明言しなかったこともあり、選挙後の安倍首相はライフワークとする憲法改正を内閣の最重要課題に据えるというのが大方の予想だった。しかし、選挙後の首相が強調したのは「脱デフレ」だった。

一方、8月に閣議決定された経済対策は、2016〜2017年度にまたがる大規模なものだ。柱は公共投資や女性の雇用促進などである。

公共投資が波及効果を発揮するのは事業開始から半年ほど後といわれ、そのころには女性の雇用促進策も世帯収入の増加となってジワジワと効き目が出てくる。個人消費の拡大は収入アップのさらに後になる。給付金のばらまきによる即効性を求めず、後半加速型の経済対策を目指したと言えるだろう。

財政拡大による景気刺激策には伏線がある。政府の予算編成に向けた「骨太の方針2016年」から「財政赤字」「金利動向と財政収支にも十分注意する」とのフレーズが消えていたのだ。今回の経済対策で、財政健全化を意識しながらの景気刺激から積極財政路線への方針転換がはっきりしたことになる。

参院選が与党圧勝に終わり、消費税増税の先送りを含めたアベノミクスが信任を得た形となると同時に、衆議院を解散する大義名分が消失した。安倍政権の目線の先にあるのは2018年である。

この年は 12 月に衆議院議員が4年の任期満了を迎える。ただ、任期満了による衆議院選挙は戦後、時の首相が解散権を事実上封じられた1976年の1回だけ。最強の権力基盤を持つ安倍首相だけに、解散権を行使すると考えるのが永田町の常識だろう。そして、解散のタイミングは2018年夏に絞られる。

自民党の内規では、党総裁の任期は最長2期6年。 安倍首相が党総裁任期延長の是非を問うとして2018年8月までに解散し、総選挙で勝利を収めれば、同年9月の任期切れ後も党総裁の地位を保ち、首相としても続投できる。今回の経済対策には、長期政権に向けた布石の意味合いが大きいようだ。

金融緩和と財政拡大の両輪で脱デフレへ!

一方、日銀は9月 20 〜 21日に金融政策決定会合を開く。黒田東彦(はるひこ)総裁は7月の記者会見で、9月会合までに金融政策の「総括的な検証」をすると述べた。政府との政策協定に基づいた脱デフレ路線の維持が予想されるのは当然として、これまで金融緩和に依存してきた脱デフレの具体的手法が財政政策に切り替わることになりそうだ。

日銀は従来「2年程度」としていた物価上昇率2%達成の目標時期を撤回し、金利上昇への懸念から否定的だった財政拡大に対して肯定的な見解を示してくる可能性がある。

マーケットでは現在、日銀による金融緩和政策の継続性を疑問視する声が上がっている。それだけに、日銀による大規模緩和の継続と政府の積極財政からなるポリシー・ミックス(財政 と金融の併用政策)が明示されれば、東京市場の主力プレーヤーである外国人投 資家の間に安心感が広がり、日本株への資金流入が再開される公算が大きい。

株式投資を行なううえで、ここからの銘柄選択の候補としては、公共投資関連株にやや遅れて個人消費関連株が狙い目となりそうだ。