就労状況にある女性の57%が非正規雇用という現代。非正規雇用のなかで多くの割合を占める派遣社員という働き方。自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員をしている鎗田みづきさん(仮名・27歳)にお話を伺いました。

文豪の絵が入ったトートバッグを持ち、耳元にはレース編みでできた自作イヤリング。少し前に流行った森ガールのような雰囲気のみづきさん。みづきさんは東京出身ですが、地方の国公立大学を卒業しています。国公立大を出ていながら、現在は派遣で働いていると言います。今回はみづきさんに、どうして派遣で働いているのかを聞いてみました。

みづきさんは、高校まで地元・東京で過ごしています。

「高校はちょっといいぐらいの都立でした。元々、絵を描くのが好きだったので、そっちの方に進学したかったのですが、東京で国立だと芸大しかなくて。私大も考えたのですが、国公立の美術大学に受かったので、そっちの方に進学しました」

大学時代は、作品作りに没頭したと言います。

「大学の周りがかなり田舎で。専攻は油絵だったのですが、少人数の学科だったので、自然とみんな仲良くなれましたね」

みづきさんは大学で、運命の相手と出会います。

「相手は同じ学科なのですが、1年留年していて。さらに浪人もしていたので私より2つ年上で。さすがに”一緒に卒業しよう”って言って、同じ年に卒業しましたが」

しかし大学時代を共に過ごした彼氏と、東京と大阪(彼氏)で遠距離になってしまったのです。

「国公立大学の美術系って、大学数が少ないので地方から来ている人が多いんです。私も親と“4年間だけ”という約束で進学していたので、泣く泣く東京に戻りました」

美大卒なのに、なぜか老舗楽器店に正社員として入社し、接客業を担当していたとか。

「本当、仕事は何でもよかったと言うか。実家だったし、とりあえず親の手前“就職した”っていう事実が欲しくて。周りは美術大学でよくある“就職しないで独自の道を歩む”タイプも多くて、“どうしてわざわざ就職するの?”って言われました」

みづきさんが就職したのには、彼氏のためという理由もあったのです。

「就職したのはいいのですが、自分の時間が全然なくなって絵は描けなくなるし、手取りで15万ほどだったのですが、彼氏と会う交通費でどんどん消えていって」

そんな彼女にある日、転機が訪れます。

「彼氏のお父さんが、病気になってしまって。もう東京とかに遊びに来れないって言われたんですよ」

元々マイペースだと言うみづきさん。慣れない接客業と、残業代が出ない就労環境に疲れていました。

「楽器って高価なものが多いから、お客さんも気難しい人が来たりするんですね。私が楽器の知識が乏しかったのもあって、クレームが入ったり」

みづきさんは、新卒で入社した会社を辞め、大阪へ向かう決心をします。

「最初から結婚の約束をしていたと言うわけではなかったのですが、このまま会えなくなってしまうのは寂しかったので大阪に引っ越しました」

彼女は、仕事よりも恋愛に突っ走るタイプの女性だったのです。

彼氏以外、知り合いのいない大阪へと引っ越します。

子供の頃から、ペンと紙があれば いつまでも遊んでいられたと言うみづきさん。

人情の街「大阪」で、東京人みづきさんを待っていた試練とは!? その2に続きます