拝啓、メディア様。Vol.005 「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」日本テレビ

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【毎週木曜 6:00 更新】
テレビ、ラジオ、Webに雑誌…旅ゴコロをいざなう番組の作り手に編集部が会いにいき、制作中のエピソードや思いをシェアするこの連載。今回は、知られざる日本の魅力を届ける番組「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」のコーナー“日本列島 ダーツの旅”で全国を飛び回るディレクター、飯塚桂子さんに話を伺います。





今回編集部が会いに行ったディレクターの飯塚桂子さんと、ADの仁科健人さん

◆番組の主役は町や村の人!
撮影し続けて“いちばんいい顔”を逃さない

「1996年7月にスタートして、今年でちょうど20周年を迎えます。輝いている一般の方を取材し、一般の方を主役にしたバラエティー番組です。その中で番組の基盤ともいえる “日本列島 ダーツの旅”は、“○○村、○○町のココがすばらしい”をコンセプトに、初回から放送している看板のコーナーです。

私は制作会社の日企に所属していて、2000年の入社以来、この番組一筋なんです。これまでの17年間で“日本列島 ダーツの旅”でロケ取材に行ったのは、北海道、青森、秋田、山形、宮城、富山、福島、長崎、群馬、千葉、愛知、和歌山、京都、兵庫、岡山、鳥取、香川、宮崎、熊本。過去には、世界版としてアルゼンチン、メキシコにも行きました。

司会の所ジョージさんが日本地図にダーツを投げて刺さったところが、私たちの次のロケ先。狙って矢を放っているわけではないので、投げてもらうまでは自分が来週どこにいるかがわからない状態なんです。だからスタジオでの撮影では、いつもドキドキ。一応、所さんが行きたい場所を聞いてくれるんですけど、“夏だから沖縄!”なんて言っても、絶対にその地域には刺さりません(笑)。

取材期間は、だいたい1週間。ADがカメラで撮影、ディレクターの私がインタビュアーとして2人一組で、村や町を巡って村人や町人の方にインタビューしています。少人数、小さなカメラで取材することで、カメラを向けられる時の緊張や壁を取り払い、いつもの生活の雰囲気を伝えられると思うんです。もちろん台本もロケハンもないですし、いつ何時おもしろいことが起きるかわからない。なによりも村人・町人の方のいちばんいい顔を逃したくないので、朝から晩までずっとカメラは回し続けているんです」



“日本列島 ダーツの旅”では、カメラとマイクを持って日本を縦横無尽に駆け回る



9月14日OA予定の“日本列島 ダーツの旅”の撮影風景

◆山で遭難しかけた命がけのロケも…
それも旅の貴重な体験に!

「オンエアでは1分程度のインタビュー映像は、“ちょっとお話いいですか?”と話を聞き始めてから、実際は1〜2時間取材していることもザラです。“家にあがってお茶でも飲んでいきなさい”って言っていただくと、お茶だけでなく晩ごはんまでごちそうになることも多くて。田舎の人はみなさん本当に優しいんです。

AD時代、取材でいちばん大変だったのは、冬の日本海、松葉カニの漁船での撮影。町中で声をかけて漁師さんに、その夜に漁に連れて行ってもらえることになって。漁師さんには“何やってもいいけど、絶対に落ちないでくれ”って言われたんですが、船に乗って5分もたたないうちにその言葉の意味がわかりました。荒波すぎて立っていられないばかりか、波が下から船を突き上げて甲板まで体が飛ばされてしまったんです。

そのとき、8万円もする自慢のダウンジャケットを着ていたのですが、船の油で真っ黒になって使い物にならなくなって…。それから“ダーツの旅”のロケではオシャレは不要だとわかりましたね(笑)。

あと京都では、猟犬を連れたイノシシ猟に偶然同行したことも。猟師さんには“想像を絶する猟”と言われてましたが、ディレクターになってロケ慣れしていた私は百戦錬磨という過信から、余裕だと思ってて…。でもライフジャケットを着ている最中に、猟師さんがいきなり山を駆けおりていって、一瞬で見失ってしまったんです。

私がOK出すまでカメラを止めないでと言っていたこともあって、ADも猟師さんに必死でついて行ったから完全に孤立無援状態。私ひとり、猟犬の鳴き声だけを頼りに、ようやく出会ったのはそれから40分後くらい。イノシシも群れをなしているわけだし、猟犬だって私を危険と察知したら噛むだろう。猟師さんの銃だって獲物だと思って私に向いているかもしれない…。

とてつもない恐怖はありましたが、今思えば忘れられない“おいしい”貴重な体験。猟師さんに偶然出会わなければ、こんなこと起きないですからね」



盆踊りの町、秋田県羽後町へ。伝統の盆踊りを町の人から教わったそう



町で出会ったそば屋の店主に、踊り方を手取り足取り習う飯塚さん



村人・町人からもらった手作りのポーチは、メイク道具や文房具入れとして愛用する

◆現地の人と触れ合う旅は
新しい発見と“その先”の展開がいっぱい

「取材を通じてわかったのは、ガイドブックに載っているところにいくのもおもしろいけど、勇気を持って村や町の人に話しかけてみたら、思いもよらない出会いがあって、未知なる世界に遭遇できることがたくさんあるということ。旅のいちばんの醍醐味は、現地の人と触れ合うことだと思うんです。実際にその土地で暮らす人としゃべってみたら、ただの旅だけでは終わらない“その先”の展開が待ち受けているんです。

取材で出会って、今でも交流のある村人・町人さんがたくさんいます。その土地の農作物や海産物を送ってくださったり、年賀状のやりとりをしたり、オンエア後でもつながっているんです。ずっとよくしていただいているので、これからもおもしろくていい番組を作って恩返しをしていきたいですね。

あ、でも私の苦労話はいったん忘れていただいて(笑)、番組を気楽に見ていただけたら。家族や友達と一緒に笑ってもらえれば幸せです」



ディレクターやADが日本全国を駆け回り、日本の魅力を再発見するバラエティー番組。1996年の初回放送から続く名物コーナー“日本列島 ダーツの旅”のほか、呑み処を巡る“○月×日(金)△△駅で朝までハシゴの旅”や、ボートの公園で幸せそうな人にインタビューする“いま幸せですかの旅”も人気。

日本テレビほか
毎週水曜 夜7:56〜8:54放送
MC:所ジョージ、佐藤栞里

TEXT/MAKI FUNABASHI