NHKが『ニュース7』の中で報じた「貧困女子高生」報道が炎上し、話題になりました。

母子家庭の女子高生が、貧困に苦しんでいて進学できない、生活が苦しいとう現状を扱った物でした。

これに対し、ネット上でインタビューを受けた女子高生が特定され、報道内容と異なり高いランチを食べていたことやアニメのグッズを買っていたことが分かり炎上につながったのです。

女子高生の行動の是非は難しい問題であり、ここでは言及を避けますが、今回の炎上は行き過ぎているのではないでしょうか?

ネットでの炎上があった際、批判が苛烈になりすぎたり、バッシングの対象が個人だけでなく、同じような状態にある人全体が攻撃されたりすることは珍しくありません。

今回の件でも、彼女に対する殺害予告だけでなく、貧困で苦しんでいる全ての人に対する攻撃も見受けられます。

その中には「生活保護を受給している人間は甘えているだけ」などの過激な意見も少なくなく、目を疑ってしまいます。

いったいいつから、貧困で苦しんでいる人への攻撃が過激化し、冷静ではない意見が目立つようになったのでしょうか? また、そうなった原因はどこにあるのでしょうか?

■実に16%以上の人が貧困に苦しんでいる

まず、日本の貧困について簡単に説明しましょう。

貧困は衣食住もままならない「絶対的貧困」と、周囲に比べて貧しく、平均的な生活水準に達せない「相対的貧困」に分けられます。

日本でニュースとなり、社会問題となっている貧困の多くが相対的貧困です、実に16.1%の人が相対的貧困に陥っています。

日本はOECD加盟国の中でも貧困率が4番目に高く、平均を上回っており、社会保障制度も他の先進諸国に比べ整備されていないといわれています。

日本は生活保護受給者の4割以上が高齢者世帯だとされていますが、若者のワーキングプア等の問題もあり、子どもの貧困も多くのメディアが取り上げています。

また、母子世帯の5割以上は貧困世帯とされており、勤労世代の単身女性のうち、3分の1が年収114万円未満で生活をしています。性別や年齢に関わらず、多くの人が貧困に苦しんでいるのです。

貧困に苦しんでいる人の多くは、病気になってしまったり、運悪く経済的に失敗してしまったりした人で、決して努力せずに怠けている人ばかりではありません。

では、どうして彼ら・彼女らが過剰なバッシングを受けるようになったんでしょうか?

■いつから貧困バッシングが過激化したのか

貧困で苦しんでいる人への過剰なバッシングが目立つようになった明確な時期ははっきりと断定はできません。

しかし、2012年に話題となった、次長課長の河本さんの生活保護不正自給問題から、過激な意見が増えるようにあなったのではないでしょうか?

現代ビジネスによると、河本さんの騒動があった際、多くのメディアが生活保護のネガティブな情報を取り上げたため、あたかも生活保護を受給すること自体が「不正」であるという空気が作り出されたとのこと。

この事件から、生活保護を取り扱う福祉事務所に「怠け者にはには金を出すな」とか「あの人は不正受給をしているかもしれないから調べてほしい」といったような電話が増えたそうです。

また、ネットニュースサイトやSNSが発展したことが、所謂「貧困叩き」や「生活保護バッシング」が過激化した背景にあります。

ネットニュースやまとめサイトの記事がSNSで拡散され、多くの人が共有すると、中には過激な意見を発信する人も出てきます。

顔が見えないSNSだからこそ、普段は絶対に言わないような差別的な意見も出てきやすくなるものです。

ニュースの注目度が高いほど、発言する人も増えるのでそれに比例して過激な意見も増えていきます。誰かの意見に刺激されて、自分も過激な発言をする方もいるでしょう。

貧困JK騒動も、ネットの存在がなかったら個人特定もされずに、ここまで大事にならなかったのではないでしょうか?

■富裕層が炎上起こし貧困層が貧困層を叩く

では、貧困に対するバッシングはどのような層が中心となって行われているのでしょうか?

今回の騒動のようなネットの炎上は、社会的弱者が中心となっているといわれていました。

しかし、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一助教が20歳以上の男女1万9,992人を対象におこなったアンケートで、炎上に加担しやすい人は個人年収や世帯年収が多い人や子どもがいる人などであることがわかっています。

社会的な地位のある人が炎上を起こすのには驚かされますが、仕事等で溜まったストレスをそこにぶつけているのかもしれません。

また、努力が実って社会的に成功した人にとっては、運悪く貧困に陥ってしまった人が努力していないように見えることもあるでしょう。

一方、貧困に苦しんでいる人が、生活保護を受けている人を批判するという意見もあります。

岩波書店から出版されている『生活保護から考える(稲葉剛著)』本来生活保護を受けるべき人が、生活保護受給者を非難している不可解な構図の原因は、「嫉妬」にあるようです。

掲示板等で見かける「自分は働いているが生活保護以下の暮らしをしている。受給者は贅沢だ」という意見に象徴されるように、生活保護者受給者と自分を見比べて受給者の方が楽に見えてしまい、バッシングを行ってしまうのです。

こうした方は、生活保護制度について学ぶことで、生活苦と理不尽なバッシングをしてしまう生活から抜け出せるかもしれません。

ネット炎上は富裕層が、貧困層へのバッシングは貧困層が行っているということから、貧困に苦しむ女子高生が炎上した本件には、多くの層が関わっているといえるのではないでしょうか?

■普通の人でも貧困状態に陥る可能性は高い

貧困問題は自分には関係ないと思っている方もいるでしょう。しかし、この不安定な社会で生きていく以上、不運が重なって貧困に落ちるリスクはすべての人に存在します。

厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査の概況」の「生活意識別にみた世帯数の構成割合の年次推移」によると、生活が「大変苦しい」「苦しい」と答えた人は2001年の51.4%から2013年には59.9%と大幅に増加しています。

中間層の人でも、リストラや事故等で、貧困に陥ってしまうリスクを抱えているのです。

また、社会全体で見ても貧困は大きな問題です。生活が苦しいために子どもが産めないという方が多ければ、少子化問題は解決しません。

また、犯罪をしなければ生活できないほどの貧困に苦しむ人が増えれば、治安の悪化にもつながります。このように、「貧困」という社会問題に関係ない人は一人もいないのです。

日本人は「思いやり」「助け合い」の国といわれる一方で、助けるべき人を過剰に叩くような一面を見せることもあります。

不安定がために、誰しも不安を抱えて生きていくしかない社会に私たちは生きています。その不安をうっ憤晴らしのエネルギーに変換するのではなく、助け合いの原動力にしたいものです。

(文/堀江くらは)