ラグビーのトップリーグ(TL)は26日(金)、開幕する。「世代交代」が進む今季。サントリーの新主将、スクラムハーフ(SH)の流大(ながれ・ゆたか)は入社2年目の23歳。「もう、ワクワクしています。自分たちのプライドを示せるようなプレーをして、1戦1戦チャレンジしていきたい。"やってみなはれ"の精神で全勝優勝を目指します」と言葉に覇気を漂わせた。

 サントリーの今季のチームスローガンが『サントリー・プライド〜インターナショナル・スタンダード』である。チームは昨季、過去ワーストの9位に終わった。屈辱だった。雪辱を期し、監督に沢木敬介が就き、主将には流が抜擢された。負けず嫌いの生来のリーダーはまず、チームの意識を変えた。

「9位なので」と流主将は繰り返す。

「サントリーは長く、日本ラグビーを引っ張ってきた存在だと思うのですが、今はチャンピオンじゃないんです。上に8チームがいますし、下の10位以下も楽に勝てるチームはひとつもありません。ただチャンピオンになるためのメンタリティーと練習は積み上げてきました」

 新チームの練習がスタートして、実は流主将の発案で始めたことがある。試合と練習の最初と最後に円陣を組み、みんなで「ワン・ツー・スリー・プライド」とコールするのだった。

「いつも自分たちのプライドを忘れずに試合や練習に打ち込んで、終われば、それができたのかを自分に問いかけ、プライドを持って次に向かおうと再確認するためです。そのプライドの中にはチャレンジ精神も入っていますし、ネバーギブアップの精神も入っています」

 サントリー・プライドをより具体的にいえば、相手より走ることもそうだし、接点でファイトすることもそうだし、1本のパス、1本のキック、1本のタックルに魂を込めることもそうだという。つまりは、流主将のモットーである『小事大事』。「どんな練習でも準備でも、小さなことの積み重ねが勝利につながるということです」と説明する。

 ラグビー界は、昨年のワールドカップ(W杯)の日本×南アフリカ戦の金星に次ぎ、先のリオデジャネイロ五輪の日本×ニュージーランド戦のアップセットで盛り上がっている。リオ五輪のその試合、流主将は深夜、ライブでテレビ観戦した。「興奮して、寝られなくなりました」と笑いながら思い出す。

「日本は勝つべくして勝ったなあと思います。ディフェンスのプレッシャーも、トライの取り方も、しっかり準備しての日本の勝ちだったので、すごいなと感心しました。何といっても、プレーにチャレンジ精神があふれていました。僕らもそうありたいですね」

 どだい、サントリーの戦力は悪くない。プロップの畠山健介、垣永真之介やロック真壁伸弥、フランカーのツイ・ヘンドリック、SH日和佐篤、スタンドオフ小野晃征、センター松島幸太朗らの日本代表勢が並び、元豪州代表の職人フランカー、ジョージ・スミスも復帰した。有力外国人選手も加わり、若手と中堅、ベテランのバランスもいい。

 今季もラグビースタイルは、『アグレッシブ・アタッキング・ラグビー』である。これに「スマートさ」をプラスする。スクラム、ラインアウトのセットピースを安定させ、判断よく、はやいテンポのラグビーをコントロールしていきたい。

 流主将は「今シーズンは、パス、ラン、キックをフルに使った、見ていて面白いラグビーができると思います」と胸を張る。

「そこをぜひ、見てほしい。初めてラグビーを見る人も、昔から見ている人も、やっぱりサントリーのラグビーはいいなと思ってもらえるのがベストです。そうなれば、勝つこともできる。その準備はできています」

 自信の裏付けは、ハードワークである。特にフォワード(FW)は連日、スクラムを組んで、ウエイトトレーニングして、全体練習して、ラインアウトをして、またスクラムを組んだ。これも、昨季、セットピース(セットプレー)でやられた試合があったからだろう。今季はスクラム、ラインアウトを強みとする。

「すべての起点はセットピース。昨季の悔しさもあって、セットピースにプライドをかけています」

 もっとも、流主将本人はまず、チーム内で日本代表の日和佐とのポジション争いを勝ち抜かなければならない。流主将の持ち味は広い視野とボールをスペースに運ぶ能力か。同主将が苦笑する。

「(日和佐とは)常に競いあって、いつもバチバチやっています。プレッシャーをかけられていますけど、もちろん僕は勝つつもりです。絶対、(レギュラーの)9番を付けて試合に出たいので......」

 熾烈なポジション争いがチームのレベルを押し上げることになる。

 流主将には忘れられない記憶がある。昨季の開幕戦のパナソニック戦に先発出場し、何もできなかった。「大きな壁にぶつかった」と表現する。以後、パナソニック戦のディフェンスをイメージして練習するようになった。フィジカルを高め、スキルを磨き、ラグビーナレッジ(知識)を上げてきた。

 トップリーグの開幕戦は昨季、苦杯を喫した近鉄(26日・大阪・ヤンマー)が相手となる。4戦目(9月17日・秩父宮)が王者・パナソニック戦。総当たり戦の今リーグ、どこにも負けられない。

 流主将は高揚感を抑えきれない様子だった。どんぐりマナコがキラキラとかがやく。

「マークする相手はすべてのチームです。まずは近鉄。いろんなカラーのチームがありますので、対戦が楽しみです。1戦1戦、全力を出して、勝ち切っていきたい」

 サントリー・プライドを胸に4季ぶりの覇権奪回のサクセス・ストーリーがもう、でき上がりつつある。最後。またも流主将はつぶやいた。

「チャレンジです」

 昨季9位のサントリーの進撃が、リーグを熱くする。きっと。

松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu