英国のEU離脱をめぐる混乱の中で1300ドルを大きく超えた金価格。それは年始以降の上昇トレンドの中で初めてイベントに反応した上昇だった。では、そこに至るまでの上半期の上昇は何を映したものなのか。そして今後の金市場はどうなるのか。

英国のEU離脱で金上昇。イベント型の急騰がマクロ型金上昇に加わった

年始から上昇トレンドが続いていた金市場だが、英国の爛屮譽哀献奪〞(EU〈欧州連合〉離脱)騒動以降の市場の混乱の中で記録した1377・5ドルが8月初旬までの高値となっている。実は年始から続く上昇トレンドの中で、6月 24 日以降の急騰が、今年に入って初めての「イベントに反応した上昇」という位置づけとなる。

過去3年間を振り返ると、チャート上の節目となる高値には必ず何らかのイベントが絡んでいた。日にちをさかのぼる形で、2015年1月はスイス中央銀行による為替の無制限介入の終了宣言、2014年7月は南欧諸国の銀行の不良債権問題、2014年3月はロシアによるクリミア併合騒動、2013年8月はオバマ大統領シリア大規模空爆宣言(後に撤回)である。そして今回の爛屮譽哀献奪〞というわけだ。こうしたイベント反応型の上昇は、持続期間も比較的短期に終わることが多いのが特徴だ。それは、イベントに反応してファンドが先物市場にてロング(買い建て)を一気に増やすことで過熱感が高まり、内市場の需給要因の悪化からその後の調整局面入りにつながることによる。

今回もニューヨークCOMEX(商品取引所)の先物の取り組みは急増し、米国CFTC(商品先物取引委員会)のデータでは、7月5日時点のファンドの買越残は重量換算にして過去最高を更新する982トン(オプション取引を除く)まで膨らんだ。折しも爛屮譽哀献奪〞決定以降に発表された米国の6月の雇用統計では、非農業部門雇用者数の増加が前月比で 28 万人台と大きく上振ブレしたことから、一時は消えた年内利上げ観測が復活したことも、金市場では調整局面入りを促す形となった。7月22 日に発表されたデータでは、ファンドの買越残は889トンと、直近ピークからは100トンほど減ることになった。それでも7月 25 日時点で金価格は1300ドル台を維持している。

調整局面入りしている相場としては、犇い〞という印象である。それは今回の上昇相場が、もともとイベント型ではないことにある。日銀のマイナス金利導入以降、新規資金の流入拡大で上値追いを鮮明にした金市場だが、主要中央銀行による金融政策の落としどころが見えないことへの懸念を映したものといえるだろう。また、頻発するテロや流動化するEU、米国のトランプ旋風など、政治的な不安定要因も反映されている。いずれも一過性とはいえず、過去3年間のトレンドの中では質的に異なるゆえ、息の長い相場となりそうだ。

マーケット・ストラテジィ・ インスティチュート代表
亀井幸一郎
KOICHIRO KAMEI
中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社であるMMI、金の国際広報・調査機関であるWGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆・講演など幅広く活躍中。